[香港 17日 ロイター] - 香港政府トップの林鄭月娥行政長官は17日、市民との対話に直接関与すると表明、来週から対話を開始する方針を示した。対話はできる限り開かれたものとし、市民が申し込みを通じて参加できる形にすると約束した。しかし、抗議活動の沈静化につながるかどうかは不透明だ。
林鄭長官は今月4日、抗議デモの発端となった「逃亡犯条例」改正案を完全撤回すると発表したが、抗議活動はその後も継続。先週末も政府に抗議するデモ隊と親中国派のデモ隊が衝突するなどし、89人が逮捕された。抗議者側は普通選挙の実現など「五大要求」の実現を訴えている。
林鄭氏は、住宅・土地の不足など「問題は改正案だけにとどまらない」と表明。暴力行為の停止も改めて求めた。
定例会見では「香港社会には根深い経済問題、社会問題、また政治問題でさえも山積している。今回の様々な形の対話で協議の枠組みができることを期待する」と発言。同時に「ここで強調しておきたいが、対話の枠組みは、断固たる執行措置を取らなくてもよいことを意味するものではない。目の前にある暴力行為を抑圧することは依然として優先課題だ」と述べた。
また格付け会社ムーディーズが「香港の制度の強さが損なわれる」リスクを理由に香港の格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に変更したことについては失望感を表明。「同意できない。特に一国二制度が守られているかどうかを見通し変更の根拠としている場合は同意できない」と述べた。中国は一国二制度を順守しているとの立場を示している。
2014年の雨傘運動の発起人の一人で香港立法会(議会)議員を務める陳淑荘(タニヤ・チャン)氏はスイスのジュネーブで会見を開き、市民対話の開始は「政治的ジェスチャー」にすぎないと指摘。「個人的には林鄭長官と対話する理由が何ら見当たらない。われわれの主張は初めから明白であり、林鄭氏も十分理解している」とした上で、林鄭氏が普通選挙や警察の暴力行為に対する外部調査を拒み続けるのであれば対話しても無駄だと語った。
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