[ベルリン 25日 ロイター] - ドイツの前財務相で、新規借り入れを行わない「ブラック・ゼロ」と呼ばれる政策を主導したショイブレ下院議長が、気候変動や社会のデジタル化に伴う課題に対応するため財政政策を再評価する必要があるとの見方を示した。
同氏の発言は、メルケル首相率いる保守派の間で重みを持つことから、新規借り入れを通じた景気支援の是非を巡る議論に影響する可能性がある。
ショイブレ氏は財界のイベントで、グローバル化やデジタル化が進む中、政財界は経済のあり方を見直す必要があると指摘。政府は経済、社会、生態系という、持続可能性の3つの側面をより適切に調和させなければならないと述べた。
メルケル政権は2014年以降、新規借り入れを行わずに公的支出を拡大してきた。長期にわたる景気拡大局面や堅調な雇用、良好な税収、欧州中央銀行(ECB)による債券買い入れなどが寄与した。
しかし、外需の低迷を背景に足元のドイツ経済は冷え込んでおり、借り入れコストも記録的な水準に低下する中、小幅な赤字を容認して財政出動に乗り出すべきとの声が高まっている。
ドイツ憲法で定められた「債務ブレーキ」と呼ばれる規定では、連邦政府は国内総生産(GDP)比0.35%まで新規借り入れが可能とされている。成長率などの要因を考慮に入れると、この額は来年は約50億ユーロとなる。
ショイブレ氏は、この規定で認められた財政余地を活用するよう政府に促し、新たな借り入れを行わない政策にもはや固執すべきでないとの見方を示唆。「債務ブレーキの限られた範囲内で投資を認める新しいアプローチ」が必要との考えを示した。