[ワシントン 8日 ロイター] - 世界銀行は8日公表したリポートで、新興国における貿易や貧困削減の鍵となってきたグローバル・バリュー・チェーン(GVC)の伸びが過去10年間に失速し、貿易摩擦や新たな技術の台頭によって脅威にさらされていると指摘した。
リポートによると、国際分業ネットワークであるGVCは、貿易障壁の削減や情報技術(IT)向上、輸送ルートの改善を背景に1990年から2007年にかけて急速に拡大した。
しかし、中国など成長エンジンだった地域の景気減速や製造業の成熟を一因に、近年はこの流れが逆行。主要国間の貿易摩擦が足かせとなっており、GVCの縮小や分断につながる可能性があるという。
世銀は「貿易摩擦が激化し、投資家の信頼が落ち込んだ場合、世界経済と貧困問題に深刻な影響が及ぶ可能性がある」とし、3000万人以上が貧困に陥る恐れがあるほか、世界の所得は最大1兆4000億ドル減少する可能性があるとの見方を示した。
世銀の定義では1日当たり5.5ドル未満の所得の人が貧困層。
中国、ベトナム、バングラデシュなどではGVCへの参加で貧困層が大幅に減少してきたため、GVCの伸び悩みはとりわけ新興国にとって悪いニュースだという。
世銀はまた、3Dプリンターなど新たな技術も、生産と消費者を近付ける可能性があり、GVCへの脅威だとしている。