[ワシントン 9日 ロイター] - 米下院司法委員会は9日、トランプ米大統領弾劾訴追を巡る公聴会を開催した。多数派を占める民主党はトランプ大統領が政敵の調査を実施するようウクライナに圧力を掛けたことは、自由で公正な選挙と国家安全保障に対する「明白かつ現在の危機」と指摘した。
この日の公聴会は弾劾条項の決定に向け重要なステップと位置付けられる。下院司法委は、弾劾訴追状を下院本会議の採決に掛けるかどうかを決定する投票を週内にも実施する可能性がある。
下院司法委のナドラー委員長(民主党)は公聴会の冒頭で、トランプ大統領の不正行為を示す幅広い証拠が存在すると言明。「証拠はトランプ大統領が国よりも自己の利益を優先させたことを裏付けている。国民に対する最も基本的な責務に違反し、大統領就任の宣誓を破った」と述べた。
一方、共和党は、民主党はトランプ氏による権力乱用や議会妨害などの直接的な証拠がないまま政治的動機に基づきトランプ氏の退陣を実現しようとしていると非難。同委の共和党トップ、コリンズ議員は「民主党は弾劾訴追状の採決を何が何でも行うつもりだ」と述べた。
民主党のバイデン前副大統領を調査するようウクライナに不適切な圧力をかけたと示す証拠はなく、調査を迫るためにウクライナへの軍事支援を停止したりホワイトハウスでの首脳会談をちらつかせたと示す直接的な証拠は存在しないと共和党側は主張した。
共和党議員は公聴会で繰り返し異議を唱えるなどして議事進行を妨害し、弾劾調査を主導した下院情報特別委員会のシフ委員長の証言を求めた。ナドラー氏はこれを拒否した。
一方、下院司法委で民主党が選任した主任弁護士、ダニエル・ゴールドマン氏は公聴会で「トランプ氏が選挙で勝つために、外国に力を貸すよう執拗に求め続けているのは、米国の自由で公正な選挙および国家安全保障に対する明白かつ現在の危機だ」と訴えた。
共和党側の弁護士、スティーブン・カスター氏は公聴会で、民主党が不正を証明しているとして提示してきた事実には異なる説明が可能だと反論。トランプ氏はウクライナのゼレンスキー大統領との7月25日の電話会談で、自身の政治的な利益のためではなく、「ロシア疑惑捜査を巡る対立から米国が前進するのを後押しするために」バイデン氏の調査を依頼したとの見解を示した。
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