[ワシントン/メキシコ市 9日 ロイター] - 北米自由貿易協定(NAFTA)に代わる新たな貿易協定「米・メキシコ・カナダ協定(USMCA)」の年内批准の可能性が狭まる中、トランプ政権、メキシコ、米民主党は同協定の労働分野の修正で合意に近づきつつある。
修正案の詳細は明らかではないが、合意が成立すれば、民主党が過半数を占める米下院はUSMCA批准に向けた採決に進む可能性がある。
米政権の当局者は9日、メキシコ市で10日行われるUSMCAの最終協議にライトハイザー米通商代表部(USTR)代表とトランプ大統領の娘婿クシュナー大統領上級顧問が参加するとロイターに明らかにした。
また、メキシコ政府は同日、USMCAの最終協議にあたり、カナダのフリーランド副首相にも参加を要請したと発表した。フリーランド氏の事務所はコメントを出しておらず、同氏がメキシコの要請を受け入れたかどうかは不明だ。
<米民主党で最終案の検討続く>
米議会筋と業界関係者によると、協定修正案は同案の採決の是非と採決時期の最終決定権を持つペロシ下院議長に送付済み。下院民主党は同修正案の検討を続けているが、最終合意の発表あるいは採決を近く行うかどうかは未定という。
米民主党は先に、労働や環境に関する規定の執行方法を巡り懸念を表明。共和党出身のトランプ氏に政治的勝利をもたらすことになるUSMCAの採決に消極的だ。だが、年内批准に向けた残り時間は少なくなっている。米議会は今週末に休会に入る予定だったが、歳出・国防法案の審議で会期は数日延長される見通し。
メキシコのロペスオブラドール大統領は9日、米大統領選を控える来年に批准がずれ込むことを避けるための時間はなくなりつつあるとして、ペロシ下院議長に対し、USMCA批准を決断するよう促した。
同大統領によると、メキシコ議会は米民主党の要求を満たすため、労働者や環境保護に関する規定の実効性を高める修正に応じた。
ライトハイザー代表は先週、自動車用鉄鋼の扱いについて新たな要求を提示。メキシコ側は条件付きで要求を受け入れる方針を示している。
<トランプ氏「国内協議は順調」>
トランプ大統領は9日、USMCAを巡る国内協議がうまく進んでいるとし、労働組合からも好感触を得ていると述べた。大統領はこれに先立ち、米労働総同盟産別会議(AFL─CIO)のトラムカ議長と電話で協議。トラムカ議長はUSMCA交渉でメキシコの労働者の権利強化を訴えている。
このほか、米上院財政委員会のグラスリー委員長は9日にライトハイザー代表とUSMCAについて協議。合意内容の発表を待ち望んでいると同委員長の報道官は語った。
トランプ大統領はNAFTAの破棄あるいは見直しを公約に掲げてきた。NAFTAに代わるUSMCAは約1年前に調印されたが、発効には3カ国すべての議会による批准が必要。メキシコ議会はUSMCAを既に批准したが、カナダは米国と歩調を合わせたいとして批准手続きを先送りしてきた。
一方、米国は新たな対中関税の発動期日が迫り、欧州との貿易摩擦も強まる中、米国はUSMCA批准を完了すべきとの声も上がっている。