[ベルン 11日 ロイター] - スイスと米国の政府高官は、米制裁に抵触することなくスイスからイランに食料品や医薬品をはじめとする人道支援物資を運び込む仕組みを数カ月内に整えられるとの見通しを示した。
人道支援物資はトランプ米政権が昨年再開した対イラン制裁の適用除外となっているが、同制裁に抵触するのを恐れ、複数の海外銀行はイランとの人道支援も含む取引を停止している。
スイスのパスカル・ベリスヴィール外務事務次官は10日遅くにスイスの首都ベルンでインタビューに応じ、「イランの人々に食料品と医療物資を届けることがスイスの役割で、人道支援を実施する経路を確立するために必死に取り組んでいる」と説明。
米国が10月にイランへの人道支援について、イランの中央銀行を迂回し、イランへの送金が行われないものと明確に定義づけしたことが、スイスからの安全な物資輸出に向けた前進につながった。
イランと米国はまた、スイスが仲介して捕虜交換に合意したばかり。
ベリスヴィール氏は「最終的には企業や銀行の参加意欲に左右される」としたうえで、2020年上半期に支援の仕組みが稼働できるかとの質問には「そう希望するが、スイスのみに決定権があるわけではないので予想するのは難しい」と語った。
これとは別に、駐スイス米大使のエドワード・マクマレン氏はインタビューで、「スイス政府とは細部を詰めている。近い将来に協議の決着点が見えていることを望む」と述べた。
ネスレ (S:NESN)や医薬品大手ロシュ (S:ROG)およびノバルティス (S:NOVN)といったスイスの大手企業は既にイランで生産を行っている。新たな支援の仕組みが確立されれば、より小規模なスイス企業がイランに食料品と医薬品を輸出するきっかけとなる可能性がある。
フランスは1年以上前からイランへの人道支援について、欧州独自の仕組みづくりを進めてきたが、足元は停滞している。
ベリスヴィール氏は「スイスのやり方が機能し、他国が追随することになれば素晴らしい。競合しているわけではなく、若干異なるアプローチをとっているだけだ」と述べた。