[ソウル 27日 ロイター] - 韓国政府当局者は、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長の健康不安説が浮上していることについて、北朝鮮で異常な動きは見られないとして、慎重な対応を呼び掛けた。
韓国の金錬鉄(キム・ヨンチョル)統一相は26日の非公開フォーラムで、政府には情報収集能力があり、北朝鮮で異常な動きは見られないと断言できると発言。
北朝鮮国営メディアは27日、金委員長が東部・元山(ウォンサン)で観光施設を建設している労働者に感謝の気持ちを伝えたと報じたが、新たな写真は公表せず、金委員長の居場所も伝えなかった。
韓国の文正仁(ムン・ジョンイン)統一外交安保特別補佐官は米メディアに対し「韓国政府の立場は一貫している」とし、「金正恩氏は生存しており、健康だ。4月13日から元山に滞在している。これまでのところ不審な動きはない」と述べた。
米国の北朝鮮分析サイト「38ノース」は、金委員長のものとみられる特別列車が元山で確認されたとする衛星写真の分析結果を公表した。金委員長は公の場に姿を見せておらず、健康状態や所在について憶測が飛び交っている。
一方、韓国国会の外交統一委員会の尹相現(ユン・サンヒョン)委員長は27日、専門家会議で、金委員長が公の場に姿を見せていないということは「通常の仕事をしていない」ことを示唆しているとの見解を示し、「4月11日以降、平常通りに政策決定をしていることを示す報道が一切ない。そのため病気か、あるいは新型コロナへの懸念から隔離された場所にいるのかと想定している」と述べた。
北朝鮮は、同国で新型コロナウイルスの感染は確認されていないと表明しているが、これについて懐疑的な見方を示す専門家もいる。
中国は、金委員長について助言を行うため、医療専門家や高官を23日に北朝鮮に送った。事情に詳しい3人の関係者がロイターに明らかにした。ただ、今回の派遣がどのように関係しているについて、確認は取れていない。
韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領は27日、北朝鮮での新型コロナの感染拡大を防ぐため、協力を強化すると表明したが、金委員長の健康状態や所在については言及しなかった。
大統領は側近との会合で「最も現実的で実際的な南北協力の道を目指す」とし「新型コロナ感染症危機は南北協力の新たな機会になるかもしれない。これが最も緊急性の高い課題だ」と述べた。
*内容を追加しました。