[東京 2日 ロイター] - 平和外交研究所代表の美根慶樹氏は2日、ロイターの取材に対し、トランプ米大統領が9月開催を呼びかけた拡大版主要国(G7)首脳会議(サミット)について、結果的にトランプ氏が意図した形の会合は開催されない可能性があると指摘した。対中包囲網形成に多くの国が慎重なほか、大統領選でトランプ氏が再選されない可能性も各国首脳が意識しているという。
トランプ大統領は5月30日、6月末の開催を目指していたG7サミットを9月以降に延期し、参加国も拡大、オーストラリア、ロシア、韓国、インドを招待する考えも示した。 美根氏は「トランプ大統領としては反中連合を形成できればそれで良いくらいの気持ちかもしれないが、一帯一路にイタリアが参加しているなど、いずれも中国との経済関係を重視せざるを得ず、トランプにはついていけない状態だろう」と指摘。「数カ月後には米国の大統領がトランプ氏ではなくなる可能性もあるため、突っ込んだ話はできないと思う」との見解を示した。
また現時点で前向きに参加を表明しているのは韓国だけと指摘し、「中国包囲網の可能性がある場合、韓国やオーストラリアは参加するかもしれないが、インドとロシアは乗ってこない可能性がある」との見方を示し、「G11というトランプ氏が望む形での会合は開催されない可能性がある」と述べた。
その上で「仮にG11が開催され、トランプ氏が対中包囲網で強硬策を打ち出しても各国が賛同するとは考えづらく、(対中強硬策で)大きなことは決まらない可能性が高い」と予想。「過激なことが決まることはないだろう」と語った。
トランプ大統領の対中姿勢に関しては「就任直後は対北朝鮮との交渉や貿易交渉上、中国との関係改善を一定程度重視していたが、徐々に中国とは大きな本質的な違いがあり、価値観も共有しておらず、非常に特殊な国との認識に傾きつつある」と分析。特に「新型コロナウイルスで米国は死者が10万人と多数に上り、背景には米国の貧富の差や医療体制の課題があるのだが、中国憎しの気持ちが非常に強まりつつある」と解説する。
米国の対中強硬姿勢を受け、日本では「習近平国家主席の訪日の実現が難しくなると心配する人が多いが、事前に米国に報告するなどいくつかの条件を満たせば、実現するのではないか」と楽観的な見通しを示した。
美根氏は、1968年に東大法学部を卒業後、同年に外務省入省。2007年4月から日朝国交正常化交渉日本政府代表を務め、09年に外務省を退官した。
(竹本能文 編集:石田仁志)