[シカゴ 27日 ロイター] - シカゴのコロンビア・カレッジ(ニューヨークのコロンビア大学とは無関係)では、市内に点在するスタジオや教室で提供するダンス、映画、音楽の専門教育を履修する学生は年間1万4000ドル(約148万円)の授業料を支払っている。
その同校が新型コロナウイルスのパンデミック(世界的な大流行)を理由に、一部の講義を夏場からオンライン化した一方、授業料は据え置いたため多くの学生から不満の声が上がった。
テレビと文化の研究を専攻するニュージャージー州出身のイサイア・ムーアさん(21)もその1人。現在は授業料引き下げと大学の財務の透明性向上を求め、構内での抗議や請願、大学当局との面会を行う学生グループのリーダーを務めている。
ムーアさんは「私たちが受けてきた教育内容にふさわしい授業料になってほしい。未曽有の問題に対して今までにない解決方法が必要な時だ」と語る。
<大学側はコスト変わらず抵抗>
対面授業が減少し、構内施設を利用する機会も少なくなったという理由で大学に授業料やその他費用の減免を要求している学生は、ムーアさん以外にも増え続けている。
米国では元来、高等教育費用の高騰が長年の問題だったが、この春にパンデミックのために授業中止や構内閉鎖に動いた大学が相次いだため、問題は一気に先鋭化した。学生側が起こした授業料返還訴訟も十数件に上る。
さらに秋学期を迎えて米国の3分の2の大学が少なくとも一部の講義をオンライン形式に切り替えつつある中で、授業料に見合う教育を受けられないという学生の声は高まる一方だ。
ただ、コロンビア・カレッジを含めた多くの大学は、授業料引き下げに応じようとしていない。講義が対面かオンラインか、あるいは2つの併用かにかかわらず、職員の給与や大学の維持費用は変わらないからだという。
コロンビア・カレッジは声明で「これら3方式のどれであっても、大学は各コースで期待される成果を挙げて卒業に向けた単位を取得してもらうようにする」と述べ、包括的でしっかりした秋学期を提供していると強調した。
一方、ジョージタウン、プリンストン、ノースウエスタンといった一部大学は授業料と諸費用を引き下げた。
そのノースウエスタン大でも、10月1日からの授業料支払いをボイコットすると警告する学長宛て書簡に署名した175人の学生は、授業料10%の引き下げという当局の決定に満足していない。この書簡で学生側は10%カット前の6月に実施された3.5%の引き上げの撤回に加え、少なくとも3割の削減を要求している。
今回の抗議活動のとりまとめ役の1人、2年生のアレックス・ハリソンさん(19)は「学生が一斉に授業料支払いを控えるのはかなり大がかりな行動だが、危機のレベルを考えれば正当性を持つと信じている」と言い切った。
ジャーナリズムと政治学を学ぶハリソンさんらの抗議活動に参加している学生は、住宅契約や金銭面での援助、働きながら勉強している学生や職員への支援といった問題に大学当局が取り組み、そうした支援のために大学が運用する108億ドルの基金を活用することも要求している。
別の大学では学生らがインターネットを通じた署名運動を展開している。オンライン署名サイトのチェンジ・ドット・オルグによると、パンデミック中に同サイト内で立ち上げられた大学授業料減免の署名運動は1500件に達し、3月以降に合計で100万近くの署名が集まった。
<「値上げは倫理的に許されない」>
この署名運動の1つを始めたニューメキシコ大学4年生のアバ・イェルトンさん(20)は、講義内容や実践的に学ぶ場面、課外授業の機会が大幅に減ったことにつり合う授業料と諸費用の設定を求めており、既に5400人の署名を確保している。イェルトンさんによると、州内の学生の授業料は年間8000ドル強で、今年の値上げ率は2.6%。「これほど先行きが不透明な時期に授業料を据え置かないどころか、値上げするなんて倫理的に許されない」と憤る。同大学は対面式とオンライン式の講義を併用している。
サンフランシスコ大学の学生デービッド・ビューさん(20)は、授業料を4%下げて年間5万ドルにするとともに、秋学期からオンライン講義に切り替えたことに伴って利用できなくなった施設の費用負担免除を求める活動を行っている。
経営管理学を専攻するビューさんによると、自分や仲間の学生は、授業料支払いボイコットを提唱するソーシャルメディアのアカウントを開設した。他の学生では秋学期から大学をあきらめたり、より学費の安い学校に移ったりした者もいるという。
ビューさんは「今は学生と大学がお互いに強気の姿勢に出て相手を揺さぶろうとしているようだ」と話した。
(Brendan O'Brien記者)
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