[ワシントン 4日 ロイター] - 米連邦最高裁判所は、10月第1月曜日に当たる5日に新年度の開廷期間が始まる。少し前にリベラル派のルース・ギンズバーグ判事が死去して上院で後任候補承認を巡る駆け引きが勃発。新型コロナウイルスのパンデミックは続き、来る大統領選は結果の判断が最高裁に委ねられる可能性もあるなど、前途多難を予感させる。
トランプ大統領はギンズバーグ氏の後任に保守派のエイミー・コーニー・バレット連邦高裁判事を指名し、12日から上院が指名承認公聴会を開始することになっている。当初は、ギンズバーグ氏の空席が埋まらないまま8人の判事で幾つかの懸案を審理していかなければならない。特に注目されるのは、大統領選投票日の1週間後の11月10日に予定される医療保険制度改革法(オバマケア)の是非に関する審理だ。
保守派に属する最高裁のロバーツ長官にとっては、リーダーシップを試されることになる。ロバーツ氏は2月、トランプ氏に対する上院の弾劾裁判の裁判長を務め、権力乱用とウクライナ疑惑を調査していた議会への妨害のいずれでも、無罪評決を言い渡している。
そのロバーツ氏は、最高裁の独立性に重きを置く「制度主義者」として有名。弁護士のニコル・サハースキー氏は「ロバーツ氏は統率力を発揮するだろうし、最高裁に堅実な道筋を歩ませたいと考えている」と指摘する。
7日にはアルファベット (O:GOOGL)子会社グーグルとオラクルの間のソフトウエア著作権を巡る係争の審理が行われる見通し。オラクルは、グーグルがスマートフォン用基本ソフト(OS)「アンドロイド」の開発に際してソフトウエア著作権を侵害したと申し立てている。
オバマケアの審理では、バレット氏が鍵を握る可能性がある。カリフォルニアやニューヨークなど野党・民主党が優勢な州はオバマケアの維持を要求している一方、共和党優勢の州とトランプ政権は廃止を目指し、対立が続く。
最高裁の過去の判断を見ると、2012年には5対4でオバマケアを支持し、ロバーツ氏がキャスティングボートとなる賛成票を投じた。15年にもオバマケアへの異議申し立てが6対3で却下され、ギンズバーグ氏はいずれも多数側だった。
バレット氏は以前、この2つの判断を批判。バレット氏の指名に反対する民主党は、同氏が最高裁判事になればオバマケア廃止を支持するかもしれないと懸念しているものの、複数の法律専門家は、最高裁としてオバマケア廃止が賛成多数になる公算は乏しいと予想している。
11月4日には、フィラデルフィア市が市の公的養子縁組事業に地元カトリック系組織の参加を禁じたことを巡る訴訟の審理が行われる。市の禁止措置は、同性カップルが両親となる養子縁組を同組織が排除するためで、宗教上の理由が特定の連邦法の免責に値するかを巡り、重要な判断が示される見込みだ。
最高裁にとっては大統領選も重大なイベントになりそうだ。トランプ氏は、バレット氏が投票日前に承認されて、この最高裁が選挙絡みで自身に都合良い判断を下すキャスティングボートを握ってほしいと考えている。さらにトランプ氏は、最高裁が選挙結果自体を決めるだろうとの予想も披露した。もっとも過去の長い大統領選で最高裁が最終的な勝者を決定したのは、2000年の共和党のジョージ・W・ブッシュ(子)候補だけだ。
民主党側は指名承認公聴会でバレット氏に対し、選挙に関連する幾つかの訴訟は自分は忌避すべきだと考えるかを問いただす方針を表明している。最高裁判事には特定の訴訟の審理忌避を宣言する権利がある。
非営利団体ナショナル・コンスティテューション・センターのジェフリー・ローゼン事務局長は2日のイベントで、最高裁は重大な選挙関連訴訟では判断を控えるか、それが不可能ならばあえて全員一致の結論に至ることを目指すかのいずれかだろうと予想した。
(Lawrence Hurley記者)