[ワシントン 12日 ロイター] - トランプ米政権は12日、中国軍が所有または支配していると見なされる中国企業への投資を禁止する大統領令を発表した。中国の国有通信大手、中国電信(チャイナテレコム) (HK:0728)や中国移動(チャイナモバイル) (HK:0941)、監視カメラ大手の杭州海康威視数字技術(ハイクビジョン) (SZ:002415)などに影響が及ぶ可能性がある。
中国軍の支援を受けていると米国防総省が今年指定した中国企業31社の株式を米国の投資会社や年金基金が売買しないようにすることが狙いで、来年1月11日からこれらの中国企業の証券取引が禁止される。
また、中国軍の企業と認定された企業については、60日後から米国人による証券の売買を禁じる。
トランプ大統領は、中国は「軍事や諜報活動など安全保障上の機器の開発と近代化を進めるために米資本を利用しており、これにより米本土と在外米軍を直接脅かしている」とした。
在ワシントンの中国大使館はコメントは取れていない。
ナバロ大統領補佐官(通商担当)は、中国企業やその子会社の株式時価総額が、少なくとも5000億ドルに達していると推定。
同補佐官はロイターに「中国の軍事化に利用される米国の資本を抑え込むことが、今回の包括的な大統領令の目的だ」と述べた。
今回の大統領令を受けて、米中関係は一段と悪化する可能性が高い。
対中強硬派のマルコ・ルビオ米上院議員も先月、米政府がブラックリストに掲載した中国企業に対し、米資本市場へのアクセスを禁止する法案を提出していた。今回の大統領令には、この法案の内容の一部が盛り込まれている。
ルビオ議員は大統領令を歓迎すると表明。
米証券取引委員会(SEC)と財務省も8月、米国に上場する中国企業が2022年1月までに米会計監査基準を満たさない場合、上場を廃止するようトランプ氏に提言した。
12日の米株式市場の反応は限定的だった。
インディペンデント・アドバイザー・アライアンスのクリス・ザカレリ最高投資責任者は「市場はトランプ氏が残り2カ月の任期で、中国やイランとの緊張を高めるのではないかと懸念している」と述べた。
投資家が今回の大統領令にどう反応するかは不透明。禁止されるのは売買だけで、すでに保有している証券の継続保有は可能とみられる。
具体的な罰則規定は明示されていないが、財務省は国際緊急経済権限法(IEEPA)で認められている「すべての権限」を行使できる。IEEPAの下では厳しい制裁の発動が可能だ。
今回の大統領令が発効する9日後に新大統領に就任する予定のバイデン氏が、この大統領令を引き続き施行するのか破棄するのかも不明。バイデン陣営のコメントは取れていない。
*内容を追加しました。