[アジスアベバ 19日 ロイター] - エチオピア政府は19日、2週間続いている北部ティグレ州を支配するティグレ人民解放戦線(TPLF)との戦闘で、政府軍が州都メケレを制圧しつつあると発表した。また、政府軍は同国出身のテドロス世界保健機関(WHO)事務局長がTPLFを支援するよう外国に働き掛けていると非難した。
テドロス氏はツイッターでこれを否定。エチオピアの全当事者に、平和と市民の安全、人道支援へのアクセス確立を目指すよう呼び掛けた。
この戦闘では、すでに数百人が死亡し、約3万3000人が難民となって隣国スーダンに流入しており、昨年ノーベル平和賞を受賞したアビー首相が民族対立を収束させ、多民族国家をまとめられるのか疑問が投げ掛けられている。
少数民族のティグレ人を主体とするTPLFは、2年前にアビー氏が首相に就任するまで数十年にわたり、エチオピアの複数民族政党による連立政権の主軸を担ってきた。
だが、TPLFは最大民族出身のアビー首相の就任以来、ティグレ人は迫害されていると主張。一方、政府はTPLFが裏切り、ティグレ州で違法に権力を握り続けているとして対立している。
TPLFはフェイスブックへの投稿で、政府軍による19日の空爆でメケレの大学が攻撃され、多くの学生など民間人が負傷したと発表した。ロイターはこの情報を確認できていない。
ティグレ州ではインターネットも電話も遮断され、政府がアクセスを制限しているため、どの情報も検証できない状況にある。
政府からのコメントは得られていない。
エチオピアは米国の主要同盟国で、南スーダンとソマリアでの平和維持活動にも参加、アフリカでも有数の軍事力を持つ。
米大統領選で勝利を確実にした民主党のバイデン前副大統領陣営は19日、ティグレ州で戦闘が続くエチオピア情勢を懸念していると表明した。[nL4N2I52S8]
ティグレ州周辺地域では戦闘前から数十万人が食糧支援に依存する中、戦闘により海外の支援員ら数百人がすでに同州から退去しており、人道危機の拡大が懸念されている。
エチオピア国内の専門家は、政府軍が山岳地帯のティグレ州でゲリラ戦に長けたTPLFを降伏させるのは難しいとの見方を示している。