[ウィルミントン(デラウェア) 24日 ロイター] - 米大統領選で当選を確実にした民主党のバイデン前副大統領は、米国が世界で再び主導的な役割を果たすという外交ビジョンを打ち出したが、過去数年における米国の存在感低下と中国などの台頭を踏まえると、実現には大きな困難が伴うとみられる。
バイデン次期政権は、トランプ大統領が離脱した温暖化対策の国際的枠組み「パリ協定」への復帰などの分野で、これまでの状況を速やかに一変させるとみられるが、トランプ政権以前から始まっていた世界での影響力低下を逆転させるのはそれほど容易ではないと識者は指摘する。
米セントローレンス大学の歴史学教授ハワード・アイセンスタット氏は「バイデン氏は米国の地位向上をもたらすだろう」とした上で「だが米国がもはやそれほど特別ではないという厳しい現実は変えられない。他の国・地域はあらゆる分野で効果的に張り合えるし、そうするだろう」とした。
<オバマ政権時代から環境激変>
バイデン氏がオバマ政権で副大統領を務めた時代から世界は様変わりし、中国は国際機関からアフリカ・中南米での開発支援に至るまで、世界における役割を拡大してきた。
トランプ政権で国防次官補を務めたランダル・シュライバー氏は「アジア回帰を大きな目標に据えることになれば、バイデン政権ではなく『オバマ2.0』も同然となるだろう。しかし資源は減りつつある」と述べた。
バイデン氏は選挙戦で、中国の世界での影響力拡大に対し強硬路線を取り、パリ協定に復帰し、イランの厳格な順守を条件にイラン核合意にも復帰すると公約した。
同氏は24日、「米国だけで世界の全ての問題を解決することはできない」とし、「他国と協力する必要がある。他国の協力とパートナーシップが必要だ」と訴えた。
ポンペオ現国務長官は同日、FOXニュースに対し、うわべだけの多国間主義は米国の国益にならないと指摘。シリアでの過激派組織「イスラム国」(IS)との戦いや中国とイランを封じ込める一連の措置を挙げ、「われわれは共通の利益に合致すれば他国と協力し、実際に成果を上げることができて現場での現実を反映する連合を構築する」と述べ、これは過去にはなかったことだと指摘した。