[ブリュッセル 12日 ロイター] - 英製薬大手アストラゼネカが欧州連合(EU)向けの新型コロナウイルスワクチンについて、第1・四半期の供給見通しを約3000万回分に引き下げたことが、ロイターが確認した文書で分かった。EUとの契約の3分の1にとどまる数量で、同社が2月に示した見通しも25%下回る。
度重なるワクチン供給の遅れなどがネックとなっているEUの接種計画に一段と打撃を及ぼしそうだ。
EU当局者にも伝えられた10日付の文書によると、アストラゼネカは3月末までに3010万回分、4月に2000万回分の供給を見込んでいる。
同社のソリオ最高経営責任者(CEO)は2月25日に欧州議会の公聴会で、3月末までに4000万回分をEU向けに供給するよう努めると述べていた。
文書では、2月24日時点で同社が既に、1─3月のEU向け供給量を3400万回分と試算していたことが示されている。この数字は契約に基づく供給量9000万回分を大幅に下回る。
アストラゼネカの広報担当者は12日、コメントを控えた。
事情に詳しい関係筋によると、世界のサプライチェーンでワクチンを移動させることが難しく、同社が第1・四半期に見込んでいた供給拡大が実現しなかったという。
欧州委員会のブルトン委員(域内市場・産業担当)は11日遅くにツイッターに「努力は見られるが『最善の努力』ではない。第1・四半期の義務を履行するために十分ではない」と投稿。「アストラゼネカの取締役会が受託者責任を果たし、契約履行に必要な措置を講じるときだ」と続けた。
文書では4月の供給量を約2000万回分と見込んでいるが、5月と6月については見通しを示していない。
EUとの契約では4─6月に1億8000万回分の供給を約束している。