[ロンドン 9日 ロイター] - ジョンソン英首相は9日の演説で、政府が「国民に寄り添って」、高成長と減税の実現や住宅取得支援などを通じて生活費軽減に全力を注ぐ考えを改めて示した。
ただ経済協力開発機構(OECD)などが来年の英経済はゼロ成長になると予想する中で、エコノミストからはジョンソン氏の約束には現実味が乏しいとの声も出ている。
ジョンソン氏は「われわれは今の状況を何とかせねばならず、家計に重圧がかかって一部の人が負担に耐えられない状況にあることは認識している。だから政府はこれらの重圧に国民の側に立って対処する」と語った。
同氏は、成長と高い賃金が得られる経済になればインフレの苦痛を和らげることができると主張。一方でロシアのウクライナ侵攻に起因する経済の不安定化を手っ取り早く解決する手段はないと認め、当面は「財政の力」で家計が危機を乗り切る手助けをすると述べた。
同氏が新たな課題として力を注ぐのは、特に若者の間で持ち家率が低下している事態だ。この対策として1980年代に導入された「ライト・トゥ・バイ(公営住宅に住む人が居住物件を割安に購入できる仕組み)」や住宅ローン制度の改革などを行う方針。
これに先立ち、地域格差是正を任されているゴーブ内閣府担当相は、政府がうまくいかなかった昔の政策を単に再利用しようとしているのではないかと質問されると、「ライト・トゥ・バイに関しては、既にある制度の拡充というのが正しい言い方だ。今回、政府は売却した公営住宅を新築住宅と交換することになる」と語ったが、それ以上詳しい内容は明らかにしなかった。
ジョンソン氏は、できるだけ早く減税にも踏み切る意向を表明。「全体的な税負担は今のところ非常に大きい。これは早急に緩和しなければならない」と言い切るとともに、政府は向こう数週間で食料からエネルギー、子育て、交通、住宅を含め全ての家計支出を減らすための改革案をまとめると付け加えた。