〇強弱材料交錯、原油相場の膠着感〇
1年前の2月11日、WTI原油相場は26.21ドル/バレルの歴史的安値を付けた。
そこから6月に一旦50ドル台に戻し、8月に39.51ドルの二番底を付けて、秋以降OPEC減産を柱に50ドル台に乗せてきた。
現在は、50−55ドルゾーンで膠着感の強い相場となっている。
昨日は52.75ドル/バレル。
トランプ大統領は、OPEC産原油への依存を絶つと表明、規制緩和によって「未利用の膨大な国内エネルギー資源の開拓」を行う方針を表明している。
同時にIS=イスラム過激派を地球から根絶するとも就任演説で述べた。
中東情勢が激変する可能性がある。
原油相場は日々の在庫統計など需給統計に揺れながら、将来図を描き切れずに膠着感の強い状況が続いている。
後から膠着感が出てきた株式や債券の先行的存在として、行方を注視したい。
中東情勢で大きな課題になりそうなのが、イスラエルの米大使館をテルアビブからエルサレムに移設する問題だ。
エルサレムはイスラエル、パレスチナ双方が首都とし、宗教的聖地でもあるため、イスラエル支配が強まればパレスチナ側の激しい抵抗が起こり、周辺国とも険悪化すると見られている。
22日、スパイサー大統領報道官は「まだ協議を始めたばかり」と表明したが、トランプ−ネタニヤフ首相電話会談で、2月に訪米を招請した。
前後関係は不明だが、ネタニヤフ首相は東エルサレムでの住宅建設制限を撤廃すると声明を出した。
エルサレムの市長は、「(オバマ政権の8年間は)圧力があっため凍結していたが、今や新しい時代に入った」と述べた。
カザフスタンで始まったシリア和平協議は難航しているようだ。
5年に及ぶシリア内戦が終結、シリアは分割統治に向かうとの観測が出ているが、果たしてどうか。
シリアから追放されたISは、個々のテロリストに分散、とりわけイラクに混乱が戻るとの見方もある(将来、再び米軍が派遣され、自衛隊にも協力要請が来るとの観測もある。
イラクもシーア派、スンニ派、クルドで三分割との見方もある)。
トランプ大統領はオバマ前大統領の対イラン核合意にも反対姿勢だが、今のところ具体的に言及していない。
中東情勢が一気に混迷化するリスクは強まっているとの見方が優勢で、固唾を飲んで見守る状況にある。
OPECは減産合意の8割を達成(予定180万バレルのうち150万バレル)し、サウジの生産量は日量1000万バレルを下回り、2月に供給を大幅に減らす予定と買い手に通告したと伝えられる。
協調減産監視委員会は3月にクウェートで開催予定にある。
一方、米国内の石油掘削リグ稼働基数は20日時点で551基。
13年以来の増加ピッチを示しており、水準としては15年11月以来。
トランプ政策を先取りする動きで増勢が続くと見られている。
原油相場100ドル時代を演出した投機筋は痛手を受けて不在の状況と言われる。
膠着感の大きな要因と見られるが、為替市場や債券市場から資金が戻って来てもおかしくない。
23日ドイツ連銀はエネルギー高で1月の国内インフレ率が2%に達する可能性(ECBの目標値)があると月報で指摘した。
インフレムード、米利上げ観測にも大きく影響すると考えられる。
以上
出所:一尾仁司のデイリーストラテジーマガジン「虎視眈々」(17/1/24号)