トランプ大統領による貿易摩擦は米国経済にとって悪いと言われているが、これまでのところ、米国株式の下落は限られており、国債利回りは高く、経済指標は良好であり、ドルは強い状況だ。
言い換えれば、現時点で保護主義が米国経済に悪影響を及ぼしていないといえる。先週、中国政府が必要な措置を講じることを約束せず、報復措置をとったため、米政府が中国製品に追加で2000億ドルもの関税を課すと公表した。いまだ政策ではなく、提案の段階で、公聴会が8月30日まで開かれるので、発動を待つことができる状況だが、 USD / JPYは112円を上回っている。米ドルは他の主要通貨に対しても上昇を再開した。中国の影響を受けやすいオーストラリアドルとニュージーランドドルは大きく下落したが、最も厳しかったのは日本円とスイスフランだ。 ポンドと カナダドルは、中央銀行の楽観的な経済見通しのおかげで他の主要通貨よりは高値を維持した。ジャーナリストたちは今週、経済指標やヘッドラインに出るであろう進行中のリスクで忙しい一週間になるだろう。大きな出来事がない限り、米ドルが高値を維持すると予想している。
米ドル
先週の指標
PPI 0.3%(予想0.2%)
PPI Ex。食品とエネルギー 0.3%(予想0.2%)
消費者物価指数 0.1%(予想0.2%)
消費者物価指数(CPI)食品とエネルギー 0.2%(予想0.2%)
ミシガン大学消費者信頼感指数 97.1(予想98.0)
ミシガン大学信頼感予備 113.9
ミシガン大学消費者信頼感見込み最終 86.4
今週の指標
小売売上高 0.5%(予想0.5%)
住宅着工および建築許可金利の上昇は住宅データの減少につながるはずだ
ベージュブック - 中央銀行の全体的な傾向を考えるとポジティブになる可能性が高い
フィラデルフィア連銀製造業指数 - 平均賃金に注目だ
Key Levels
サポートライン 111.00 レジスタンスライン113.00
過去2ヶ月間に111円を何度か試した後、 USD / JPYは113円に近づこうとしている。米国のインフレ率が緩やかに上昇し、消費者信頼感指数はやや減少したが、データに大きな驚きはなかった。米ドル/円にとって重要なのは、カナダの金利引き上げを覆すような世界的な貿易摩擦と、欧州中央銀行のコメントだ。これらのそれぞれについては、後で詳しく説明するが、まずはドルの値幅を考えたい。
株式と国債に実質的な勢いがないにもかかわらず、ドルはあがっている。中国政府は提案が政策化される前に、関税の効果を相殺し、中国で事業を行う米国の企業を圧迫しようと、人民元安にしようとしているように見える。買収を遅らせるために米国企業にライセンス付与を簡単に出さないなど、中国には米国に対抗できる手段もある。これらの貿易摩擦が米国経済に悪影響を及ぼさず、世界経済の成長に大きな影響を与えるならば、円はドルに対して円安となるだろう。そして保護主義が米国経済に与える影響が大きくなり、FRBの政策に影響を与えるまで、投資家はドル買いに傾くだろう。
パウエルFRB議長は、先週末にラジオに出演し、米国経済について所感を述べ、米国経済への自信と貿易摩擦に対する懸念を表明した。今週は住宅着工、建築許可、連銀のベージュブックのレポートが公開予定。特にフィラデルフィア連銀製造業指数には注目で、米ドル/円に最も大きな影響を与えるだろう。直近の賃金の伸びが低水準になると、USD / JPYは111に下落する可能性があるし、逆に高い場合はUSD / JPYは113円を超える可能性がある。ベージュブックに関しては、米国経済の強さを確認するぐらいで特段のことはないだろう。
ポンド
先週の指標
BRC小売売上 1.1%(前回2.8%)
非欧州連合貿易収支 -3.49b(予想-3.95b)
貿易収支 -2.79b(予想-3.38b)鉱工業生産 -0.4%(予想0.5%)
製造業生産 0.4%(予想0.7%)
今週の指標
労働報告 - PMIが製造業、サービス&建設業で非常に堅調な成長を示していることから、驚きの可能性がある
消費者物価指数 - BRCの小売価格が若干下がると、BOEがタカ派となり、予想を超えるインパクトになる可能性もある
小売売上高 - BRCによる小売り販売の減少と店舗価格の引き下げを受け、下振れの可能性がある
Key Levels
サポートライン 1.3000 レジスタンスライン1.3300
今週は重要な経済指標の発表が多いが、結論を先に言うとポンドはもっと高くなるべきと考えている。2人の閣僚が辞めるといった英国政府内の抗争はソフト・ブレグジットに落ち着いたが、EUとの交渉の妨げは依然として通貨にマイナスの影響を与えている。
ブレグジット関連ニュースで先週のポンドは気まぐれであったが、今週発表される指標により中央銀行がタカ派に傾けば大いに影響を受けるだろう。インフレ、雇用、小売売上高が今週発表され、これらの指標のほとんどは改善が見込まれる。特に、雇用の伸びはPMIによると非常に強かった。カーニーイングランド銀行総裁が、第1四半期の減速が一時的であり、インフレが上昇していると感じていることはすでに知られている。最近の下落を考えれば、市場は77%の確率でポンドの上昇を予期しており、ポンドの下落が止まるのは時間の問題だ。(1.3150はサポート、1.3363はレジスタンスライン)。
ユーロ
先週の指標
ドイツ貿易収支20.3b(予想20.0b)
ドイツZEW現況 72.4(予想78.2)
ドイツ ZEW景気期待指数 -24.7(予想-18.5)
ユーロ圏 ZEW景況感指数 -18.7(前回-12.6)
ドイツ消費者物価指数 2.1%(予想2.1%)
ユーロ圏鉱工業生産 1.3%(予想1.2%)
今週の指標
ユーロ圏貿易収支 16.5b(予想20.9b)
ユーロ圏消費者物価指数 - 前回と変更なしと予想されているが、変更があれば相場が動くだろう
ドイツ生産者物価指数 - ドイツCPIと卸売価格の下落を考えると、下振れの可能性がある
ユーロ圏経常収支 - ドイツおよびフランスの経常収支データの弱さを考慮すると、下振れの可能性がある
Key Levels
サポートライン 1.1500 レジスタンスライン 1.1800
米ドルが上昇してユーロは下落圧力をうけている。ユーロ圏の景況感指数が低下し、ドイツの貿易収支と経常収支は5月に縮小し、経済指標は軟調となった。ECBは、2019年の利上げの時期について見解が分かれている(7月早くに動くべきという意見や、秋にすべきという意見もある)が貿易摩擦の懸念が早まる可能性は否定している。また、来年中頃まで金利を引き上げることはないが、それまでの間にFRBによる75bpから100bpの追加利上げの可能性があると述べている。
今週発表予定の主要なユーロ圏経済指標は存在しないので、EUR / USDは、市場の米ドルに対する需要によって左右されるだろう。テクニカル的に注目するレベルは1.1650。 EUR / USDが1.1650を下回ると、1.15を試しにいく可能性がある。このレベルを上回って上昇するなら、1.18を試すだろう。