ポイント
- 新興国市場と米中貿易の危機が、株式の週足の上昇を終わらせた。
- ドルはいまだにセーフヘブン通貨であり、新興国通貨は下落が続く
- 米国の雇用、賃金は強い伸びを続ける
米国株は金曜日、4日連続で下落した。これはトランプ米大統領によるアップルを含めた中国製品への追加関税に関する発言が原因で、テクノロジー株や多国籍企業株への売りを誘発させた。 雇用統計では、平均賃金が2009年以来最もよい上昇率であったのにも関わらず、4つの米国主要インデックスは金曜日、軒並み下落した。
現在の下落は進行中の新興国市場による悪影響や、貿易戦争の懸念によるものだろう。しかしながら、これらは一時的なものだと考えられる。投資家はこれらのニュースに肩をすくめながら、ファンダメンタルとテクニカルに基づいて取引するだろう。 ドル は3週間連続で下落に終わり、利回りは2週間の上昇である。
新興国市場のリスクの中、多国籍企業株は上昇
S&P 500は金曜日、0.22%の微減で終えた。コミュケーション・サービス (+0.21%)とヘルスケア (+0.15%)以外のセクターでは下落した。金曜の下落は、不動産 (-1.27%)、電力・ガス (-1.22%)セクターによって牽引された。.
週次では、S&P500は1.03%下落である。これは11セクター中8セクターが値下りした6月以来の最大の下落幅だ。セクターの中でもコミュニケーションサービス (-3.0%) とテクノロジー (-2.67%) は大きく下落した。
ダウ平均は金曜日、主にボーイング(NYSE:BA)等に引きずられて0.3%下落した。ダウ平均は、貿易問題の懸念の中、唯一安定した上昇を続けているインデックスだ。
ドルや米国主要株価指数の値動きは、トランプ米大統領が再び米中間の貿易戦争に火をつけるまで、新興国市場の動向によって動いていたことを示している。この理由により先週、多国籍企業は最も安定しダウ平均が上昇していた。ドルは金曜日の反発で、2日間で失った下落幅を取り戻している。
先週も貿易戦争の中、ドルはさらにセーフヘブン資産として流入があった。同時に、新興市場のメルトダウンの中で、日本円も今までセーフヘイブン通貨として扱われていた輝きを取り戻している。
ダウ平均を除き、テクニカル的には最高値をつけた後で中長期的に上昇トレンドである。ダウ平均は1月の高値より下で推移しており、2月の安値以来の上昇トレンドを伸ばすことができていない。
ナスダック総合指数は金曜日、0.25%下落した。S&P500と同様、テクノロジー企業が多いこのインデックスは4日連続の下落になった。週次では、ナスダックはインデックス中で最も不調であり、2.55%の下落した。
Russell 2000は、0.07%で微減し、4日連続の下落である。週次では1.29%後退し、5週間にわたる上昇が止まった。
マクロファンダメンタル、テクニカルが市場をささえる。
アメリカの8月の雇用統計では予想の19万1000人の予想を上回り、20万1000人の雇用であった。一方、 失業率は3.9%で変わらず、これは1969年から現在で最も低い水準である。 平均賃金も予想を上回り前年比で2.9%上昇した。これは2009年に景気後退が終わって以来最も大きい増加だ。
消費者信頼感指数は8月、労働市場の好調に牽引され2000年の10月以来最も高水準である。この上昇は、貿易の懸念は消費者にとって悪材料ではないことを意味し、消費は堅調だ。消費者支出は、4.1%の予想を上回り4.2%となり先週の第2四半期GDPの上方修正を後押しした。
貿易戦争等による下落は一時的だと考えられる一方、マクロファンダメンタルやテクニカルは未だに中長期的に米国株価を支えている。
一週間の見通し
日本標準時(JST)で表記されています。
月曜日
17:30: UK – 貿易収支 (7月), GDP (7月): 貿易赤字は113.8億ポンドから117.5億ポンドに膨れ上がると予想されている。 GDPは前月比0.1%の上昇予想。
火曜日
10:30: オーストラリア– NAB企業信頼感 (8月): 7から10に上昇予想
17:30: UK – 雇用: 雇用統計では7月6200増えたが、8月は6200減少すると予想されている。 失業率は7月の4.0%で変わらず。 平均賃金は6月の2.4%の上昇であり、7月は2.5%の上昇予想。
18:00: ドイツ– ZEW 景気期待指数 (9月): -13.7%から-14.1に減少予想
21:30: アメリカ– PPI (8月): 生産者価格は前月比0.2%の上昇と予測されており、 コア PPIは前回の0.1%であったが、0.2%と予想されている。
ドルは上昇トレンドラインより上に戻ることに苦労している。火曜日の95.74の高値が、8月15日につけた97.00の高値に再び挑戦することを示唆している。また、94.50まで下落する場合はトレンドの転換が考えられる。
23:30: アメリカ – EIA 原油在庫量 (9月7日の週): 貯蓄量は、前回129万4000の減少予想から430万2000バレルの減少となった。今回の予想も129万4000の減少予想である。
原油価格はリスクオフのセンチメントによって動いている。しかし、将来的に需給のバランスが崩れることにより、価格上昇が考えられる。テクニカル的には7月の75ドルの高値を超えることに苦労しているが、11月以来の上昇トレンドラインより上で推移している。
水曜日
10:30: オーストラリア– 雇用者数増減 (8月):1万5000の雇用増加が予想される。 失業率は5.3%でとどまると見られている。
20:00: UK – イングランド銀行金融政策発表:金利は0.75%でとどまると見られているが、投票パターンに注目すべき。
20:45: ユーロ圏– ECB 公定歩合発表 (欧州中央銀行記者会見 1.30pm):金利は0.00%で変わらずと見られているが、今後の政策の方針のヒントはEURや欧州のインデックスに影響を与えるだろう。
8:30: アメリカ – 小売売上高 (8月):前月は0.5%であり予想では前月比0.4%の上昇、 自動車の売上を除く小売売上高は前月は0.6%であったが、0.5%となると見られている。.
10:00: アメリカ – ミシガン大学消費者信頼感指数 (9月): 前月の96.2から96.6となると見られている。