本日のFX市場の総括 11.28.18
BKアセットマネジメントFX戦略マネージングディレクター キャシー・リアン
水曜日の為替市場ではドルが急落した。米連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長が、現在の金利は中立とされる水準を「わずかに下回る」と述べたことを受けて、ドルは急落した。今回の発言は、10月に彼が「中立金利を超えるかもしれない。しかし現時点では、中立まで長い道のりだろう」と述べたことと乖離している。9月以降利上げを行っていないことを考慮すると、今回の発言はFRBが中立的な金利を把握しており、金融引き締め政策の中断が必要だと考えている可能性がある。米国経済指標は思わしくなく、株価や原油・天然ガス価格は下落しており、これらの要因はインフレーションを抑制している。つまり、継続的な利上げはもう必要ないと考えられる。今回の影響を受けたのはFXトレーダーだけではない。株式投資家もこぞってショートポジションを解消しようとしており、ダウ平均は8ヶ月間で最も大きい上げ幅を記録した。ダウ平均は600ドル以上急伸し、それに伴いユーロや豪ドル、NZドル、ポンドなどのハイベータ通貨も急騰した。
今回のパウエルFRB議長の発言は本当にドルや株式にとって転換点となりえるのだろうか?間違いなくFRBのパウエル議長は、ハト派に傾いた。彼は今後も低い失業率とインフレ率2%の水準で米国経済は堅調に成長を続けていくと考えているが、最近の株価や経済指標を加味すると、性急な利上げは米国経済にとってリスクになり得ると考えているだろう。パウエル氏は市場ですでに利上げ予想に対する影響が出ていると述べている。今月初旬、30日物フェデラルファンド金利先物は12月の利上げ予想が反映されていた。投資家は未だ12月に 利上げを行い、春か夏までに終了することを予想しており、現在も30日物FF金利先物にはそれほど変化はない。パウエル氏の発言は市場の予測に相反するものではなかったが、投資家の予想を裏付けることで、FXトレーダーにドルを売り、株式を買い戻させる強いインセンティブを与えた。
パウエル氏の発言はドルにとって転換点となりえるが、他の通貨を押し下げている外的要因は依然として変わっていないことを忘れてはならない。ユーロ圏は低成長であり、ドラギECB総裁の最近の発言はハト派的である。中国は今も米国との貿易戦争に巻き込まれている。また、ハードブレグジットの懸念が英ポンドを下落させている。今後の米ドルへの需要は他の通貨のトレンドに影響を与えると考えられる。性急な金融引き締めを懸念したFRB議長はパウエル氏だけではない。彼の懸念がFRBの総意のメッセージとなり、次のFOMC声明がハト派寄りになるのならば、ドル売り相場に転じるだろう。木曜日公開の個人所得や個人支出、FOMC議事録はドルにとって重要な指標である。これらの統計が期待を下回り、景気後退の懸念に溢れた議事録であれば、投資家はドルを売る口実になるだろう。