- 90日間の米中貿易摩擦の休止、ハト派に傾いたFRBによる株価の上昇
- テクニカル的には未だ弱気市場である
- トレーダーが利上げ減速を織り込み、米国10年債の利回りは一時3%を下回った。
- ドルは1年半前の高値から0.3%離れている。
金曜日、S&P 500やダウ平均、ナスダック総合指数、ラッセル 2000などの米国の主要指数は、今年最大の週間上げ幅を上回り取引を終えた。今回の上昇は、米国経済の好況感、ハト派に傾いたFRB、米中首脳会談による貿易戦争の進展などの様々な要因によって引き起こされた。
先週はブラックフライデーとサイバーマンデーでの強い消費支出を受け、株価は高値をつけた。強い消費支出は米国のGDPを引き上げるだろう。週半ばに、パウエルFRB議長は政策金利が中立水準に近付きつつあることを述べた。この発言は、10月に同氏が政策金利は中立水準までは長い道のりだと述べたことと乖離している。
株式市場は好調であるが、弱気市場の兆候はいまだ残っている
金曜日、S&P 500は0.81%高であった。特に、保守的な公益事業セクターは1.48%高であった。金曜日に 原油価格が一時的に50ドルを下回り、エネルギー企業への下押し圧力となったため、エネルギーセクターは0.18%安であった。
週次ではS&P 500は4.85%上昇し、2011年以来で最大の週間上げ幅を記録した。ヘルスケアセクターは週次で6.95%高で、素材セクターは2.44%高であった。テクニカル的には、他の株価指標と同様にS&P500は、高値水準まで上昇して終値を迎えた。しかし、今週は50日移動平均線が200日移動平均線を下回りデットクロスが形成される恐れがあった。
しかし、2016年上旬を底値とした上昇トレンドラインを下回っている。このことは、株価がいまだ上昇局面に入っていないことを示している。また、100日移動平均線は10月中旬の持ち合いの高値を超えることを拒まれており、S&P500に下押し圧力を加え2640を下回る可能性を高めている。
先週金曜日のダウ平均は200ポイント上昇し、0.79%高となった。週次では、5.23%高で今週もっとも上昇した。テクニカル的には、ダウ平均は長期上昇トレンドラインを上回ったが、200日移動平均線と50日移動平均線は100移動平均線を下回っている。また今回の株価は、24400を下回ることによってヘッドアンドショルダーを形成しようとしている
金曜日のナスダック総合指数は0.79%高で、週次では5.64%高であった。テクニカル的には、先週のナスダックは下降トレンドの上でデッドクロスを形成しているが、ディセンディングチャネルの上限を上抜けしており、2016年の2月を底値とする上昇トレンドラインをテストしようとしている。
今週、マイクロソフト(NASDAQ:MSFT)は7.6%高で、金曜日に110.89ドルで取引を終えた。これは2015年以来で最大の上げ幅である。さらに、今週のマイクロソフトは時価総額が8512.2億ドルを超え、一時世界最大の時価総額を記録した。マイクロソフトはダウやSPX、ナスダックに上場しており、これらの指標の上昇に寄与した。
ラッセル 2000はたったの0.47%高であった。小型の国内企業は、米中貿易戦争の進展からほとんど恩恵を受けられなかった。
米国10年債の利回りは一時3%を下回った。テクニカル的には、ダブルトップを形成しており、100日移動平均線を下回ったものの、200日移動平均線を割っていない。
海外からの米国債への需要の増加は、米ドルへの需要の増加を招く可能性がある。金曜日、ドルは0.51%上昇し、11月12日の終値から合計0.3%上昇している。ドルは2017年6月の水準まで戻ってきた。
ユーロ圏でのインフレの弱含みを懸念し、ユーロはストックス欧州600指数と共に下落した。
今週、原油価格は小幅高で取引を終えた。しかし、月次では2008年10月以来最大の下落であった。
要点:ファンダメンタルズ的には見通しは明るいものの、テクニカル的には全く異なっており、市場が未だに弱気であることを示している。
ファンダメンタル的には、ドナルド・トランプ米大統領と習近平国家主席が、追加関税を90日間猶予することで同意したが、未だにリスクは健在である。例え、3ヶ月の休戦が株価を引き上げて以前の上昇トレンドに戻ったとしても、交渉が終わっていないことを忘れてはならない。
同様に、利上げも重要な問題である。FRB議長がハト派に傾いたことは、さらなる利上げの休止を示唆しているが、マクロ問題を分けて考え、それぞれの問題がどれだけ投資家にとって脅威となるかを分析することは不可能である。
株式は今後90日間で現在の持ち合い相場のレンジで取引されると考えられる。おそらく、90日後により良い答えを確認できるであろう。