火曜日はダウ平均株価が800ポイント近く下落し、これは約2ヶ月で最大の下落であった。そのため、投資家は株式市場に最悪のケースを想定していた。ドル/円は下落したものの、 ユーロやポンドなどの他の通貨は影響を受ずに火曜日の取引を終えた。
水曜日ではジョージ・H・W・ブッシュ元米大統領の死去を追悼し、米国市場は閉場していたが、通貨と株式先物は通常通り取引されていた。ダウ先物が100ポイント以上回復していることを考えると、ドル/円は113を超え、ドルインデックスも上昇するだろう。投資家はいまだにドル高から利益を得ることを期待している。強い製造業景気指数と、楽観的な見通しのベージュブックが、この期待を後押ししている。
FRBによると、大半の地域で経済は好調であり、適切なペースで成長している。実際、物価や雇用、賃金は向上している。投資家は金曜日に公開される非農業部門雇用者数によってドルが回復することを望んでいるだろう。木曜日にADP雇用統計やチャレンジャー人員削減数、失業保険申請件数、ISM非製造業景況指数などの雇用指数が公開され、労働市場の実態を掴むことができる。
木曜日の経済指標の大半が好調であったとしても、ドルの回復には今一歩及ばない。米国10年国債利回りの下落は、物価上昇圧力の低下や世界経済成長率、ハト派に傾きつつあるFRBへの懸念を表している。
これらはFRBが無視することのできない問題である。木曜日に米国株式市場が再開する時、米国債利回りは米ドルの回復を妨げる下押し圧力になるだろう。また、株式市場の急落と市場のボラティリティによって、企業は雇用に対してより保守的になるだろう。企業は最近の株式市場の下落が深刻化し長期的な調整局面に突入することを懸念している。
他方で、火曜日に英国政府が議会投票で敗北したことや、水曜日の予想を下回る英国サービス業PMIによって、英ポンドは19ヶ月ぶりの低水準となった。しかし、トレーダーは英国EU離脱協定案が議会を通過することを予想しているため安定して推移していた。
BKアセットマネジメントのBoris Schlossbergによれば、現時点では英国EU離脱協定案が議会の通過する保証はないという。ハードブレグジットになれば、全ての英国の企業活動が停滞し、英国経済は早くて2019年はじめにも景気後退に突入するだろう。
英国サービス業PMIは予想の52.5を下回る50.4であり、50を下回って景気後退が加速するまであと僅かである。これは15ヶ月でもっとも低い値であり、2016年6月以来最悪の企業景況感である。今回の調査を取りまとめている IHS Markit社のChris Williamsonチーフビジネスエコノミストは 以下のように述べている。
ブレグジットへの懸念が高まり、サービス業の成長は急激に鈍化しているので、11月の経済成長は横ばいである。その調査では、サービス業、製造業、建築業を対象にしており、その結果は経済成長が鈍化していることを示している。2016年7月を除いて、今年の11月は2013年2月以来で最悪の景気となるだろう。今回の調査結果は第4四半期の0.1%のGDP成長率と一致している。このGDP成長は10月の景気拡大によるものであるが、現在その勢いは失われ、あらゆるリスクが明確にダウンサイドへ傾いている
カナダ銀行(中央銀行)の金融政策発表を受け、米ドル/カナダドルは2017年6月以来最大の水準まで上昇した。政策金利を1.75%据え置くことは既定路線であったが、人々の不意を突いたのは、インフレなき経済成長の余地がまだあるかもしれないという発言である。同行が利上げを実施した10月の金融政策発表は、2019年のさらなる引き締めを示唆していたが、第4四半期の経済成長の鈍化により撤回された。
原油価格の下落は、貿易やインフレ、経済成長に影響を与えるため、同行にとって重要な問題である。水曜日に同行はエネルギーセクターが想定よりも著しく原油安の影響を受けていることを認めた。米ドル/カナダドルは、6月の最高値である1.3385を超えていないが、1.35まで上昇することが予想されている。
水曜日、最も下落した通貨はオーストラリアドルであり、弱いGDP成長を受けて0.9%の下落であった。最新のレポートによると、第3四半期のオーストラリアの経済成長率は0.3%であり、前年比では2.8%減少している。これは2.5年間で最低水準である。第4四半期は サービス業が向上し、より高い成長率が見込まれているが、水曜日に公開される小売売上高と貿易収支に注目しなくてはならない。
小売売上高が予想を下回った場合、雇用者数やPSIが増加しないと考えられる。その場合、豪ドル/米ドルは72セントでテストされるだろう。また一方で、それらの経済指標が改善されていれば、豪ドルは73セント以上に回復するだろう。72セントを下回らない限り、上昇トレンドは維持されるだろう。一方、ニュージーランドドルは、求人広告や住宅価格、物価が先月より悪化しているので、下落しつつある。今後24から28時間後にさらに下落する可能性がある。
ドルに対してユーロは変化なかった。先週1.13を下回ったが、イタリアとEU間は互いに歩み寄る姿勢が見え、経済指標は堅調なので、この通貨ペアは1.13を上回って持ち合い相場を続けている。現在狭いレンジで取引されており、間もなく大きく動くことが予想される。