2019年に入り順調な上昇を見せていた原油であったが、そのペースを維持することがますます困難になっている。
昨年のクリスマス以来の原油価格の上昇は、サウジアラビアの減産も加担し、2019年に入ってからも上昇を妨げるものは何もなかった。
さらに現在では、米国のベネズエラ産原油の制裁による供給減を、今年中盤までに供給を埋め合わせることは難しいと考えられる。
しかし、WTI原油過去1月最高の19%の上昇の後で、急激に上昇勢いはなくなってきている。
製油所の停止、生産過多の懸念
最近の主要製油所の相次ぐ停止によって、WIT原油のオクラホマ州のクッシング在庫を増加させている。
また、1バレル50ドル以上になるとDUC(ダック井戸)を仕上げまで完了する価値があり、米国による原油の生産過多の可能性が浮上する。
そして、世界経済低迷の懸念によってブレント原油は62ドル以上を維持することは難しくなっている。
ノースカロライナ州ダーラムのICAPエナジー社のスコット・シェルトン氏は11日、原油価格の現在の持ち合いで推移している相場は、「様々なノイズ(要因)の中で、おかしなことではない」と語る。
シェルトン氏は、55ドル以上に続伸できなかった背景の上で、WTI原油にかかっているバイアス(現在が上昇基調か、下降基調か)は低いと述べる。
原油価格を支えるには不十分なファンダメンタル
WTI原油は先週では5%安となり、年初来で最大の週次下落幅となった。
フィリップス66社 (NYSE:PSX)の原油蒸留ユニット(CDU)があるイリノイ州ウッドリバー製油所の火災によって、日量処理能力33万バレルの原油精製作業が停止した。
さらにフィリップ66社は、オクラホマ州ポンカ・シティにある日量7万6000バレルの製油所の停止を発表した。これらの要因によって、クッシング在庫が増加している。
米国エネルギー情報局(EIA)によると、クッシング在庫は 2月1日までの週に4260万バレル増加し、2018年1月初旬以来の最高水準になっているという。
ロイターのデータによると、今後クッシング在庫量が増えることによってWTI原油価格の下げ圧力となっている。ブレント原油との価格差は、2ヶ月最大となっており、9.52ドルとなっている。
さらにWTI原油への懸念となるのは、金曜日に発表される石油採掘リグ稼働数である。先週では7基増加し、その前週では15基増加していた。
パーフェクト・ストーム
シェルトン氏は、現在の原油相場を以下のように述べている。
これらは、WTI原油の悪材料のパーフェクト・ストームだ。... 在庫量の増加の懸念は第2四半期の原油市場の見通しを悪化させている
WTI原油はクリスマス・イブの下落の42.36ドルからまだ25%の回復である。
WTI原油はいまだに51~54ドルのレンジで収まっており、11月の最高値である55.75ドルの高値を超えられずにいる。
Investing.comの日次のテクニカルサマリーでは「売り推奨」となっており、一番下のサポートラインは1バレル50ドルを僅かに下回る49.95ドルとなっている。
ブレント原油では、「買い推奨」となっており、サポートラインは60ドルを僅かに下回る59.38ドルとなっている。
先週ユーロ圏19カ国における経済成長率の予測を下方修正が発表され、ブレント原油の見通しは悪化している。
貿易協議を前に不安定な値動き
ベネズエラの政情混乱や、米中の貿易戦争の膠着状態は、原油価格への悪材料となっている。
トランプ米大統領は、月末までに中国の習近平国家主席との会談を行わないと述べ、両国の合意はさらに遠のいてしまった。
3月1日の期限までに合意に至らない場合、トランプ米大統領は2000億ドル相当の中国製品に対して10%から25%に貿易関税を引き上げる。中国は世界最大の原油輸入国であり、中国の経済状態は、原油市場にとって大切である。
Energy Management社のDominick Chirichella氏は以下のように述べている。
「世界経済低迷や、貿易協議の最終局面でどのような成果が現れるかなどによって、市場は未だに不明瞭である」
「原油市場は多くの不明瞭な要因なために中期的なポジションを取ることが避けられ、短期的に原油価格は乱高下するだろう」