- 2007年ぶりに米国3ヶ月債と10年債で逆イールド発生
- 悲観的なFRBは金利を据え置き、経済見通しを下方修正
- インフレ圧力の減退による小型株のアンダーパフォーム、市場がピークを迎えた可能性
- 金価格はリスクオフを示し、マーケットにとって懸念となっている
ハト派的なFOMC以降、様々なサプライズがひっきりなしにやってきている。それらはマーケットにとって下押し圧力となっており、今週も続くと考えられる。
21日のFOMCではFRBは米国の経済見通しやインフレ予想を下方修正し、2019年の利上げ回数予想は0回となった。22日、米10年国債利回りは3ヶ月債を下回り、景気後退を示す逆イールドとなった。そして米国株式市場は大きく下落し、先週の取引を終えた。
1月以降で最悪の株式市場の下落
22日のS&P 500は1.9%安。2.48%安となった1月3日以降で最大の下落幅となっている。ディフェンシブセクターである公益事業は0.72%高であるが、他のすべてのセクターは下落となっている。
低金利による影響を受ける金融セクターは2.76%安。一方、エネルギーセクターは原油安の影響で2.7%安。週次では、同指数は12月の底値以降回復が続いていたが、0.77%安となっている。
金融セクターは4.84%安でアンダーパフォームしている。長期化する米中貿易協議によって素材セクターは1.93%安。 ヘルスケアセクターは、1.49%安で3番目にアンダーパフォームしている。長期化する貿易協議や2017年中旬ぶりのドル高によって資本財セクターは1.41%安。
テクニカル的には、S&P 500は依然上昇トレンドである。日足チャートでは、50日移動平均線が200日移動平均線に近づいており、ゴールデンクロスを形成しつつある。一方RSIはダブルトップを形成する可能性がある。週足チャートでは、先週にシューティングスター(上髭)を形成している。また、RSIは、2018年以降で巨大なヘッドアンドショルダートップを形成しつつあり、下降チャネル下で上放れする可能性を示している。
22日のダウ平均株価は1.77%安で、2.85%安となった1月3日以降で最大の下落幅となっている。S&Pと同様に、ダウ平均は値を下げて今週の取引を終えた。
注目すべきは、貿易摩擦や金融業界の業績が落ち込む中で、ダウ平均はS&Pをアウトパフォームしていることである。金融銘柄はダウ平均の18.24%を占めており、13.7%のS&Pを上回っている。低インフレの見通しは大企業にとっては追い風となる一方で、輸出に不利なドル高は逆風である。
22日のナスダック総合指数は2.5%安で、2.99%安となった12月21日以降で最大の下落幅である。週次では、同指数はアウトパフォームしており、0.6%のみの下落であった。テクニカル的には、同指数はS&Pのパターンと同様、ゴールデンクロスを形成しつつある。一方、RSIのモメンタムもピークを迎え、シューティングスターを形成している。同様にRSIは、2018年1月以降で巨大なヘッドアンドショルダーを形成しつつある可能性がある。
22日のラッセル2000は3.61%安で、4.46%安となった12月3日以来で最大の下落幅となった。同指数は明らかにアンダーパフォームしており、ナスダックを約1.5%下回っている。週次でもアンダーパフォームしており、3.07%安となっている。
テクニカル的には、22日の下落の後のラッセル2000は不安定な値動きをし、3月8日の安値の水準を下回り、50日移動平均線も割り込んだ。そして、MACDの短期の移動平均線は抵抗ラインで跳ね返されており、RSIはモメンタムが減退していることを示している。
投資家は投機的な銘柄を最初に売却するので、通常マーケットが最高値を迎えた時は小型株の下落が最初に起こる。
逆イールド発生、不況となるのか?
11月初めに米10年国債利回りはダブルトップを形成している可能性が見られた時に、我々は利回りの下落を警告していた。また、利回りが2016年6月以降の上昇トレンドラインを下回り、さらに50日移動平均線が200日移動平均線を下回りデッドクロスを形成した時、我々は大幅な利回りの下落が起こる可能性について述べていた。
株式市場が急騰していた時でさえ、我々は米2年国債と10年国債の利回りの差が急速に縮まっていることを度々指摘していた。これにより、我々は株式市場の上昇に用心深い姿勢を取っていた。
22日の10年国債利回りは2.437まで下落し、3か月国債利回りの2.462を下回った。逆イールドは信頼性の高い不況を示す指標である。前回では2007年に逆イールドは発生し、マーケットの下落や不況が後に続いた。
その他のリスクオフの指標は金である。金は現在3週続伸となっている。
しかし、投資家が注意を払うべきは、ドルが2週続伸となっている中で金も上昇していることである。明らかに金の上昇の要因は弱いドルではなく、安全資産であることだ。
この仮説は利回りの下落や逆イールドの発生と整合がとれる。
テクニカル的には、金は2016年5月ぶりに100日移動平均線を上回る可能性があり、2013年中旬からの巨大なヘッドアンドショルダーボトムを形成するかもしれない。問題はこのヘッドアンドショルダーが左右対称になるか否かである。つまり、右側の肩を形成できるかどうかが問題なのだ。
このパターンは必ずしも左右対称でなくてはならないわけではないが、1400ドルを超える前に金価格は下落するかもしれない。
ドルは強く反発しており、200週移動平均線がサポートラインとなっている。さらに50週移動平均線が200日移動平均線を上回りゴールデンクロスを形成しつつあり、上昇トレンドは今後も続くだろう。
ドルの上昇はハト派的なFRBとは一致しておらず、ドルの強気相場が確定していないことを示している可能性がある。ドル高は安全資産としての地位によってもたらされた、もしくは米国債への需要によって引き起こされたと考えられる。
原油価格は経済低迷の見通しによって下落している。テクニカル的には、原油は上昇トレンド下にあり、200日移動平均線によって下支えされている。