トランプ米大統領が制裁関税を他国に拡大するとともに、米中貿易戦争はますます激化している。今週も株式市場にとっては厳しい一週間となりそうだ。
中国は必要となれば米国に対しレアアース輸出を制限する用意があるという。5月31日にブルームバーグが報じた。
一方トランプ米大統領は、不法移民問題を受けメキシコ製品すべてに5%の制裁関税を課す計画を発表した。
加えて、6月2日までにインドを一般特恵関税制度(GSP)適用対象国から除外するとの大統領布告を出した。
これらの悪材料によってさらに株式に下げ圧力が働きそうだ。
S&P 500は5月6.5%以上下落したが、これは2010年以来最大の下落幅となった。
市場がこのようなマクロ的課題に焦点を当てる一方で、以下の3銘柄は企業固有の動向によって値動きすることが予想される。
1. セールスフォース・ドットコム
顧客関係管理ソリューションを中心としたソフトウェアやクラウドサービスを扱うBtoB大手のセールスフォース・ドットコム(NYSE:CRM)は6月4日大引け後に第1四半期(2-4月期)決算報告を行う。
予想EPSは0.61ドル、予想売上高は35億6000万ドル。
セールスフォースの過去6か月株価チャートは、米中貿易戦争や世界的な技術領域支出を縮小させうる不確実性による下げ圧力を受けている市場全体の縮図といえる。
5月31日は151.41ドルで終値を迎え、株価は年初来半減以下に下落している。
これらの逆風がありながらも同社の事業は成熟しつつあり、さらにクラウドコンピューティング市場は今まさに成長段階にある。
3月、同社は予想値を下回る売上高予想を発表した。2-4月期予想売上高は22%増の36億7000~8000ドル。なおこれは2010年以来最少の増加幅となる。
2. CVSヘルス
5月初旬に収益予想を上方修正した米ドラッグチェーン大手のCVSヘルス(NYSE:CVS)は6月4日にインベスター・デーを開催する。
良好な収益予想や第1四半期決算報告にもかかわらず、株価が今年20%以上下落していることもあり市場心理の回復には至っていない。
米国薬価制度の変遷や同業のウォルグリーン・ブーツ・アライアンス(NASDAQ:WBA)との競争の中、5月31日は52.37ドルで終値を迎えた。
4月、 モルガン・スタンレーのRicky Goldwasserアナリストは、CVS経営層が「株価の不確実性を軽減する」必要があると記した。
昨年11月にエトナ(NYSE:AET)を買収し同株はヘルスケア業界最大規模銘柄となったが、690億ドルという巨額の買収額には今もなお懸念も示されている。
事業のサービス面を向上させる一方で、この買収は実店舗運営を強化する策となっている。
またこれはアマゾン(NASDAQ:AMZN)のヘルスケア市場参入に応じる形で取られた戦略だ。
3. ビヨンドミート
植物由来の人工肉を製造するビヨンドミート(NASDAQ:BYND)は6月6日大引け後に第1四半期(2019年1-3月期)の決算報告を行う。これは同社が5月2日に新規上場して以来初めての決算報告である。
上場以来人気を集めている同株は31日104.12ドルで終値を迎えた。
公募価格は1株25ドルだったが、初値は46ドルとなった。
同社の植物由来製品が有する大きなマーケットポテンシャルに期待が寄せられ、株価は予想の4倍上昇している。
同社は代替肉の見た目や味にこだわる消費者をターゲットにしている。同社の人工肉は味、香り、食感、そして見た目に至るまで本物の肉に近い。
代替肉市場は年間8億7800万ドル成長している。ビヨンドミートのようなや未上場のインポッシブル・フーズといったスタートアップ企業にも門戸が大きく開かれている。
市場シェアを拡大すべく、ビヨンドミートは植物由来の牛肉、豚肉、鶏肉の代替肉を開発してきた。
予期せぬ急騰が背景にあることで、決算報告が少しでも予想を下回れば株価は大きく影響を受けるだろう。
予想EPSは0.16ドル、予想売上高は3150万ドルとなっている。