欧州中央銀行(ECB)理事会が開催される時、大抵の場合ユーロは下落する。しかし、6日のECB理事会では上昇する可能性がある。その理由としては、ECBのマリオ・ドラギ総裁やその他の理事会メンバーが、既に市場に織り込まれている悲観的なシナリオを否定しようとするからである。
4日の独10年国債利回りは史上最低のマイナス0.22%となった。また、ポルトガルとギリシャの10年国債利回りも同様に最低水準となった。インフレ率の市場予想としてECBが特に注目する5年先5年物フォワードレートは、史上最低の1.25%付近まで下落した。
直近数週間、ユーロはドルに対して2年ぶりの安値圏で値動きしている。また、第1四半期における経済指標は特にドイツで予想を上回る結果を示すものの、一時的なものと考えられる。
6日の理事会での利下げは予想されていないが、米中貿易摩擦の影響を緩和するために手を打たなくてはならない。
考えられる金融緩和策は2つある。1つは利上げ時期を先延ばしにすることである(ノルデア銀行のチーフアナリストであるJan von Gerich氏によると少なくとも2020年の3月まで)。2つ目は9月に予定されている貸出条件付き長期資金供給オペ(TLTRO)の条件を事前に発表することである。
TLTRO第2弾では、銀行の融資額に応じた金利を設定することで、銀行に企業などの実体経済に対して融資を行うインセンティブを与えた。ABNアムロのNick Kounis氏によると、同様の仕組みで、TLTRO第3弾ではマイナス0.4%の中銀預金金利と同水準で、ECBから借り入れを行うことが出来るとのこと。モルガンスタンレーのアナリストは「信用緩和ととらえることもできる」と述べた。
しかし、ECBが寛大な処置を取ることを望んでいるか否かは明らかではない。前回のECB会合の説明によると、TLTROが金融緩和策として実行されるのか、それとも単に流動性カバレッジ比率を満たすことに腐心している銀行を支援するものなのかについて、ECB内で合意に達していない様子であった。また、マイナス金利による金融セクターに対する副作用の検討もまだ終わっていない。
ECBは今後2年間の経済成長とインフレ率予想を再検討することで、金融緩和を正当化することが出来るだろう。しかし、3月に2019年の成長見通しを1.7%から1.1%に下方修正しており、再び大きな下方修正を行うことは物議を醸すことが予想される。
いかなる場合にも金融緩和策には反対意見が考えられる。ドイツ連邦銀行のイェンス・ヴァイトマン総裁は金融政策を変更する理由はないと発言した。ユーロ圏の第1四半期GDPは、予想を上回り0.4%減となった。
「ECBは市場が予想しているほどハト派的な姿勢を見せない可能性がある」とラボバンクのJane Foley氏は述べた。
「このことは短期的にはユーロを上昇させる可能性がある。一方で、マイナスの影響としては、中長期的なユーロの見通しを曇らせ、2020年以降のユーロ/米ドル上昇の足かせとなるかもしれない」