パウエルFRB議長が10-11日に行う議会証言、カナダ中央銀行(BOC)が10日午後11時に行う政策金利発表は大きなイベントリスクだ。両者とも市場に重要な手がかりをもたらすだろう。
直近の米ドルの上げ相場の正当性を確かめるべく、パウエル議長議会証言に市場の目が向いている。6月米雇用統計は堅調な結果となったが、これを受けFRBはハト派姿勢を弱めるだろうか?金利据え置きはあり得るだろうか?
FRBは6月FOMCにおいて、追加緩和の実行有無は今後の経済指標によるとの意向を示した。
以降に発表された米経済指標は雇用を除いて軟調な結果となった。
失業率上昇、平均時給上昇率鈍化、消費者信頼感指数低下、製造業PMIやサービス業PMI低下など。
一方で米中通商会議再開への合意がなされたことから、積極的な利下げは必要ないとの見解もある。
6月FOMCにおける前向きな論調や経過時間を考慮すると、議会証言ではここ数か月でFRBが利下げ姿勢を強めた根拠について十分な説明がなされるだろう。
議会証言が主に経済減速リスクを懸念するものだった場合、ドル円は107.50円以下まで下落、ユーロドルは1.13ドル台へ上昇するだろう。またスイスフランとNZドルの上げ相場が予想される。
議会証言が楽観的なものだった場合、米ドルはさらに上昇するだろう。FOMC議事要旨はよりハト派的になるだろうがドル安の大きな材料にはならないと考えられる。
BOCが最終的にハト派にシフトするかどうかにも注目が集まる。BOCは5月時点で、経済減速は一時的なものであるとの見解を示していた。上半期カナダ経済はやや伸び悩んだが、不況への入り口だと判断するには早計だろう。
3月のカナダ個人消費額は大幅増となったが4月カナダ小売売上高は伸び悩んだ。また5月のカナダ労働市場は好調で時給上昇率も悪題したが6月雇用者数は予想を大幅に下回りマイナスとなった。
これらは経済減速の暫定的な兆候であるため、BOCがハト派に転換する場合はより決定的な材料を必要とするだろう。
BOCが最近の軟調な経済指標はあくまで一時的なものであるとの見方を続ける場合、米ドル/カナダドルは1.5年ぶりの安値まで下落するだろう。一方で金融政策がリスクを懸念する内容となった場合、同ペアは上昇を始めると予想される。
下表はカナダ経済概観。