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オミクロン株の出現を受けて、グローバルの金融市場には下押し圧力がかかる展開;これまでの変異株よりも突然変異数が多いとの分析
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S&P500種指数はサンクスギビング・デー後では最大の下落を記録
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原油価格は12%下落し、1バレル70ドルを下回る状況
オミクロン株と名付けられた新たなコロナウイルスの変異株が出現し、このトピックが今後1週間は市場センチメントを席巻するとみており、サンクスギビング・デーである木曜日に発表された 新規失業保険申請件数は市場予想よりも良好な結果を示すなど、先週発表された米国の経済指標への注目度が下がる結果となった。ただし、南アフリカで最初に検出されたオミクロン株の詳細は、依然として不透明であり、先週金曜日に世界保健機関(WHO)は当該変異株を「懸念される変異株」に指定し、他の変異株よりも脅威であるとの見解を示している。
金融市場では金曜日にパニック売りが発生し、安全資産への逃避がみられた。株式、金、米ドルはいずれも下落した一方、米国債には投資資金が流入した。
米国、欧州の市場指数はいずれも急落して先週の取引を終了
S&P500種指数は金曜日に2.77%低下し、過去9ヶ月間で最も大きな下落幅となった。また、この下落はサンクスギビング・デー明けの短縮取引日に起きたことは特筆に値する。カウンター・トレードがほとんどなかったことを勘案すると、半日で如何に大きな値動きがあったかを示す展開となった。
1941年にフランクリン・ルーズベルト大統領が11月の第2木曜日から最終木曜日にサンクスギビング・デーをずらして以降、サンクスギビング・デー明けの取引日の中では今回最もS&P500種指数は下落したことになる。
最も下落圧力を受けたのは、景気感応度の強い株式指数だ。米国株式指数最古の大型ブルー・チップ企業で構成されるダウ平均株価は、905ポイント、または2.5%下落した。これは2020年10月以来の大きな下げ幅だ。
ダウ平均株価は若干ながらヘッズ・アンド・ショルダーズ・パターンを示しており、これはより大きな同パターンの一部になるかもしれない。
ラッセル2000指数は開放経済に依存している米国内企業によって構成されているが、3.7%下落し、多くの株式指数をアンダーパフォームした。
ハイテク企業の構成割合が大きいNASDAQ 100指数は景気低迷時でも堅調に推移することが多いが、2.13%下落し、多くの株式指数をアウトパフォームした。
NASDAQ 100指数は上向きのヘッズ・アンド・ショルダーズ・パターンを形成しているようにみえる。これはダウ平均株価同様、より大きな同パターンの一部である可能性がある。ただし、より大きなヘッズ・アンド・ショルダーズ・パターンはもしかしたら、同パターンのヘッドである点には注意が必要だ。
反転パターンが消えた場合には、市場は当初の軌道とは反対方向に動く可能性があり、新たな高値の形成をトレーダーに促すことになる。しかし、当初のベア・パターンが市場の弱含みを示唆することから、このようなテクニカル要因による反転は短命であることが多い。このような動向がより大きなヘッズ・アンド・ショルダーズ・パターンの形成の背景にあるのとみることもできる。
ストックス欧州600指数は3.7%下落し、汎欧州の株式指数としては2020年6月以来の大きな下落となり、市場ボラティリティは過去10ヶ月間で最も高い水準を記録した。
先週金曜日において最も買いを集めた資産は米国債だ。ベンチマークである米国10年債利回りは、コロナ禍の感染第一波となった2020年3月以来の大きな下落となった。
米国10年債利回りはトッピング・アウトを形成する可能性があり、米国債の買いが続くことを意味している。このトレンドが続いた場合、米国債利回りは2021年につけた最低値を試す展開もありうる。
ドル指数は先週金曜日に1.05%下落し、週次のリターンは-0.72%となった。皮肉なことに、欧州中央銀行(ECB)も他の中央銀行同様に金融緩和の引き締めを検討しているにも関わらず ユーロは 1%上昇した。
安全資産とされる日本円は米ドルに対して1.77%上昇した。
テクニカルな立場からみると、米ドルは1.13近辺で一時的にはサポートを受けることとなり、これはヘッズ・アンド・ショルダーズ・パターンの首元あたりである。
もう一つの安全資産とされるスイス・フランは米ドル対比1.25%上昇した。
金も安全資産として考えられているが、米ドル対比でみると弱含み、0.40%低下した。これは金融市場のボラティリティの大きさからみたら小幅な下落ではあるが、貴金属は歴史的に安全資産として確たる地位を有していたことを考えると、特筆に値する。
注意:金は当初1.34%上昇したが、その後下落へと転じた。投資家は貴金属よりも米国債やその他ソブリン債のほうが安全な資金の逃避先として選んだものとみている。
テクニカル分析の観点からみると、金は上昇トレンド・ラインによるサポートを受けている。上昇チャネルの底付近にあることを勘案すると今後は11月16日につけた1.879.50ドルのピークを試す展開になるかもしれない。
ビットコインも先週金曜日は8.6%下落した。 当下落によって2番底は延長され、新たな下降トレンドを形成している。
原油においては「ブラック・フライデー」となり、コモディティ価格は急落した。新たなコロナウイルスの変異株の発見により、渡航制限やロックダウンが再び課されるとの懸念から、原油は1バレル10ドル、または12%低下した。
WTIは10.22ドル低い68.17ドルと13.04%低下して取引を終了した。これは10月30日以降つけていた上昇トレンドを下回る水準だ。今年の3月からの支持線となっている65ドルでサポートされる可能性がある。もしこの支持線を下回る場合には、より大きな売り圧力が起きるとみている。
この支持線で原油価格が反発した場合であっても、3月から形成されているヘッズ・アンド・ショルダーズ・パターンのトップとなる可能性がある。
今週の経済イベント
時間はいずれも米国東部時間を記載
月曜日
10:00: 米国 – 中古住宅販売成約指数: 前回の-2.3%から1.0%まで上昇すると予想
15:05: 米国 – FOMCメンバーのパウエル議長の声明
20:00: 中国 – 製造業PMI指数: 前回の49.2から49.6への上昇を予想
火曜日
3:55: ドイツ – 失業の変化:前回の39000から25000に改善を予想
5:00: ユーロ圏 – CPI: 前年同期比4.1%から4.4%への上昇を予想
8:30: カナダ – GDP: 前月比0.4%から0.1%を予想
10:00: 米国 – 消費者信頼感指数: 前回の113.81から110.9への悪化を予想
19:30: オーストラリア – GDP: 前回の0.7%から第3四半期は-2.7%への悪化を予想
20:45: 中国 – Caixin 製造業PMI: 前回の50.6から50.5への低下を予想
水曜日
4:30: 英国 – 製造業PMI: 前回の58.2から58.1への低下を予想
8:15: 米国 – ADP非農業部門雇用者数: 前回の571,000人から525,000人への低下を予想
9:00: 英国 – イングランド銀行ベイリー総裁の声明
10:00: 米国 – ISM 製造業PMI: 前回の60.8から61.0への上昇を予想
10:30: 米国 – 原油在庫:前回の 1.017百万バレルから-0.481百万バレルへの低下を予想
19:30: オーストラリア – 小売売上高: 前月比1.3%から4.9%への上昇を予想
木曜日
8:30: 米国 – 新規失業保険申請件数: 前回の199,000人から250,000人への増加を予想
金曜日
4:30: 英国 – サービス業PMI: 前回の58.6と横ばいを予想
8:30: 米国 – 非農業部門雇用者数: 10月の531,000人から11月は550,000人を予想
8:30: 米国 – 失業率: 前回の4.6%から4.5%への改善を予想
10:00: 米国 – ISM 非製造業PMI: 前回の66.7から65.0への低下を予想