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原油:価格の変動要因になりうる多くの材料。注目すべきこと

発行済 2022-03-17 22:38
更新済 2023-07-09 19:31
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3月8日にWTIは123ドル超、ブレント原油は128ドル近くまで上昇した先週の原油市場の急騰後、今週前半、原油価格は大きく値を下げた。WTI、ブレント原油はともに25%以上下落し、1バレル90ドル台半ばから後半台で足元推移している。

WTI 週次チャート

現在の価格でも2021年末の市場相場と比較するとかなり高い水準だが、エネルギー関連コモディティが先週つけた3桁台の最高値からは著しく下がっているのは事実だ。ただし、ブレント原油は再び100ドルの大台に乗り、WTIも上昇基調に向かっているようだ。

もちろん、地政学的リスクから、原油価格が高止まりし、さらに上昇する可能性があることは確かだ。しかし、市場が今後どのように推移するかを理解するためには、価格の下落を引き起こした可能性のあるいくつかの要素を検証することが重要である。

注目すべきことを下記に4つまとめた。

1. 投機の熱狂は薄れたか?

ファンダメンタルズやロシア・ウクライナ戦争による混乱の恐れさえも、原油価格がここまで上昇したことを正当化するのに十分ではなかった。原油価格の上昇に対する恐れやその後実際に価格上昇が始まっても、OPECは特段対応を取らなかった

しかし、原油市場は純粋にファンダメンタルズに基づくものではない。ニューヨーク、ロンドン、香港、シンガポール、ブエノスアイレス、ムンバイでコンピューターの前に座っている投資家の感情にも基づいているのだ。

ロシアとウクライナの紛争による市場の混乱を懸念した価格の上昇は、戦争とそれに対する反応がニュースの中心であったため、まだ合理的であった。また、先行き不透明も価格の上昇を促した。戦争は今もニュースの中心だが、制裁の不透明感が強まるにつれて、時間の経過とともに警戒感は緩んでいるようにみえる。

また価格の下落は、投資家が今月限の取引を終了したためではないかとの意見もある。

2. 大陸欧州はロシア産エネルギーの購入を中止するか

おそらく各国は完全にロシア産エネルギーの輸入を中止することはできないし、やらないだろう。紛争の初期には、欧州がロシアの原油、天然ガス、石炭の輸入を中止するかもしれないという認識があったが、今では欧州諸国はそのようなことはしたくないようにみえる

例えば、ドイツはロシアのエネルギー供給から切り離すことはできないし、そうするつもりもない。欧州は外交努力のために自国の社会的、経済的な幸福を犠牲にするつもりはないのだ。このことが明らかになった今、価格はより理性的な認識を反映し始めている。

3. 他の国はロシア産エネルギーを輸入する意欲があるか

今週、インドがロシアの原油を割安で購入しており、さらに購入する可能性があるという報道がでた。対露制裁の話が出始めた時点で、これは必然的なことだった。

世界には、安価な原油を求める市場があまりにも多く存在する。つまり米国も他の国も、これらの市場がロシアの原油を買うことを阻止することはできないのである。

中国は、ロシアの原油と天然ガスを直接パイプラインで買いたいし、必要としているため、今も輸入し続けている。13億人以上の人口を抱えるインドは、ロシア産原油などのグローバルから原油を最安値で入手する必要があり、また購入先を探している。

ロシアの原油を購入していけないという政治的圧力があるため、売りに出している企業は大幅な値引きをしている。ロシアの原油が安く売られると、原油全般の価格が下落する。

4. 中国のコロナ禍によるロックダウン

中国では上海と深圳でロックダウンが実施され、その影響で原油価格も下落したようだ。CNNによると、中国では現在3700万人が行動制限を受けているという。これらの地域では、必要不可欠な労働者のみが自宅から出ることを許されている。上海では交通量が36%減少しており、これらの封鎖により中国の原油需要が顕著に低下するとの懸念が強まっている

原油価格のボラティリティが上昇する可能性のある材料

とはいえ、市場は依然として極端な変動にさらされており、さまざまな事象によって、今週初めにみられたような価格変動が起こる可能性がある。投資家が市場を見極める上で、さらに留意すべき点がいくつかある。

  • ウクライナとロシアの協議が決裂し、ロシアの軍事行動が活発化すること。

  • 中国のロックダウンに反応し、米国と欧州で新たなコロナ規制が行われる可能性。世界的に渡航やマスクの規制が緩和される中、感染者が増加する可能性を警告する当局もある。

  • 温暖な季節になり、夏のドライブや旅行シーズンに向けて、ガソリンやジェット燃料の需要が増加する。

  • ロシアが十分な量の原油を販売できず、貯蔵量が不足し、ロシアの原油生産量が減少すること(Plattsによると、ロシアの原油生産量は2月に増加したが、依然としてOPEC+の割当量に満たない)。

  • 3月31日に開催されるOPEC+の会合で、現在の段階的な増産方針が覆されること。

  • 米国などによるロシアのエネルギーに対する新たな制裁や追加制裁。

  • イランへの原油制裁を終了させるイラン核合意の解決。

  • 米国などでの高インフレ率の継続。米ドルの価値が下がると、原油は通常ドルで取引されるため、価格が上昇する。しかし、世界経済の減速は原油需要の減少につながり、価格を下落させる。

筆者注:このコラムは通常木曜日に掲載されていますが、今後2ヶ月間は不定期に掲載となります。5月中旬には通常の週刊誌に戻る予定です。

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