[ドバイ/ロンドン 11日 ロイター] - サウジアラビア・エネルギー省は国営石油会社サウジアラムコに対し、6月の産油量を追加的に日量100万バレル削減するよう指示した。エネルギー省当局者が11日、明らかにした。
石油輸出国機構(OPEC)加盟国とロシアなどの非加盟国で構成する「OPECプラス」の減産合意に上乗せするもので、追加分は世界的な供給の1%に相当する。
当局者によると、追加減産によりサウジの6月産油量は4月の水準より日量480万バレル程度減少。減産合意と自主的な減産の双方を踏まえると、6月のサウジの産油量は日量749万2000バレルと、約20年ぶりの低水準になる。
当局者は「世界的な原油市場を支えるため、サウジは自ら追加減産を実施することで、OPECプラス、およびその他の産油国がこれまでに確約した減産を順守し、自主的に追加減産を行うよう働き掛けたい」と述べた。
トランプ米大統領とサウジアラビアのムハンマド皇太子は8日、電話会談を行い、世界のエネルギー市場安定の重要性で合意した。サウジが対イラン向けに配備するミサイル防衛システム「パトリオット」2基を米国が引き揚げると報じられたが、米政府は原油とは無関係だと述べた。
サウジのアブドルアジズ・エネルギー相はロイターに対し、世界的な供給過剰の解消と原油市場の均衡化を加速するのが目的とし、先手を打ちたいと指摘。また、各国が新型コロナウイルス拡大抑制策の緩和に動き出し、需要回復の兆しが見られるとも述べた。
この日はサウジに続き、クウェートとアラブ首長国連邦(UAE)もOPECプラスの合意に加え6月に追加的な減産を実施すると表明。クウェートは日量8万バレル、UAEは日量10万バレルの追加減産を実施する。
UAEのマズルーイ・エネルギー相は声明で「エネルギー市場に一段の安定を取り戻すためのサウジ主導の取り組みに同調し、UAEは6月に自主的な追加減産を実施する」とした。
こうした動きを受け原油先物は上向き、北海ブレント先物 (LCOc1)は1バレル=31ドル、米WTI先物 (CLc1)は25.12ドルとなっている。
JPモルガンのマネジング・ディレクター、クリスティアン・マレク氏は、トランプ米政権による圧力に加え、自国の財政上の圧迫要因を踏まえると、サウジは一段の減産を実施すると予想。追加減産幅は日量100万─150万バレルになるとした。
その上で、今回の追加減産は「向こう数カ月間の支援に向けた一時的な措置で、トランプ大統領とディール(取引)を行うための政治的な意図があったようにも見える」と指摘。ただ「世界のオイルメジャーのほか、米シェールオイル会社が著しく大きな打撃を受ける中、1年─1年半後にはサウジの市場シェアは拡大する」との見方を示した。
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