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エネルギー・貴金属:週次レビューと見通し

発行済 2022-05-15 18:08
© Reuters.
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執筆:Barani Krishnan

Investing.com -- 連邦準備制度理事会(FRB)は、過去一世代で最も積極的な利上げを行い、エネルギー価格の上昇に伴うインフレを抑制しようとし、米国の景気減速入りはしないと確信している。

とはいえ、OPECや100ドルを超える原油のせいではなく、米国の一部の石油精製業者が、多くの利益をあげようとしていることから、米国経済の先行き不透明感は強い状況だ。

 Marathon PetroleumやValero Energyなどの石油精製業者は、株主や会社のために利益を追求しているだけで、決して違法なことはしているわけではない。エネルギーのような現在の良好なビジネス・サイクルでは至極当然の企業活動である。

パンデミックの間にいくつかの製油所が閉鎖や縮小に追い込まれ、ガソリン、特にディーゼル・ガソリンの供給がひどく圧迫された。製油所に残った人々は、工場の拡張や休止中の工場の再稼働による消費者の救済に資金を投入することなく、自分たちができること、より正確には望むことだけを行い、この状況を凌いでいる。

ブルームバーグの推計によると、2020年にコロナ禍が発生して石油需要が激減して以来、米国の石油精製能力は日量100万バレル以上(全体の約5%)が停止している。エネルギー・コンサルタント会社のTurner, Mason & Coによると、米国以外では、生産能力が日量213万バレル縮小しているとのことである。結論から言えば 要するに、拡張計画がないため、逼迫感は悪化の一途をたどっているのだ。

ブルームバーグのエネルギー・アナリスト、Javier Blas氏は今週のコメントで、ガソリンが米国の一部の給油所で1ガロン4.50ドルを超えて過去最高となり、ディーゼル・ガソリンも6ドルを超える目を疑うような高値になったことから、「エネルギー・インフレに関して、原油市場は誤った安定感を示している」と書いている。

「燃料価格は原油よりも速く上昇しているため、実体経済は見た目よりもはるかに強い価格ショックに見舞われており、これは金融政策にとって重要である」と同氏は言い、FRBの門前で膨らむ問題に言及した。

もし、あなたが製油所のオーナーなら、原油は1バレル110ドルを少し超える程度で取引されている。高いが、絶望的な水準ではない。もし、あなたが石油王でないなら、悪い知らせだ。(精製後の)石油は1バレル150ドルから275ドルの間で取引されているようなものだ」。

詳細をみていきたい。米国産原油のベンチマークであるWTI(West Texas Intermediate)は、ここ数週間、1バレル95ドルから110ドルの間で推移している。しかし、ニューヨーク港におけるジェット燃料先物は275ドルに相当する価格で取引されている。軽油は175ドル、ガソリンは155ドル前後だ。これらはすべて卸売価格であり、税金や販売マージンは考慮されていない。これに税金やマージンが加われば、消費者はますます目がくらむことになる。

もちろん、昔はこうではなかった。少なくとも35年間は、クラック・スプレッド(原油から燃料製品を「分解」することで得られる利益を指す業界用語)は、1バレル平均10.50ドル前後であった。その後、精製業の黄金時代と呼ばれた2004年から2008年までの間に、スプレッドは30ドルを超えた。先週は55ドル近くまで上昇し、過去最高を記録した。

原油価格と精製油価格の差は、供給不足が深刻化し、需要がコロナ禍前の高水準にほぼ戻っていることに起因している。米国東海岸の軽油備蓄は1990年の水準まで減少している。中国と中東以外では、2019年末から今日にかけて石油蒸留能力が日量190万バレル減少した--これも過去30年で最大の減少である。最後になるが、世界的な--少なくとも欧州の--ディーゼル・ガソリン供給も、欧米のロシア産エネルギー製品への制裁によって縮小させられつつある。

サウジアラビアのAbdulaziz bin Salmanエネルギー相は先週、自身の指揮下にある石油輸出国連合(OPEC+)は米国の精製危機とは無関係であると述べた。

「私は昨年10月に原油価格の高騰局面が来ることを警告した」と同相は言い、米国だけではないと付け加えた。「特に欧州と米国では、ここ数年で多くの製油所が閉鎖されている。世界はあらゆるレベルでエネルギー供給力を使い果たしている。」

そして、危機はさらに悪化する--価格だけでなく、供給面でも。先週、ニューヨークの大富豪で製油所・給油所オーナーのJohn Catsimatidis氏は、東海岸でディーゼル・ガソリンの配給制が実施されると警告した。

しかし、同氏の会社は350のガソリン・スタンドを経営しているが、ガソリンが不足することはなく、非常に高価になるだけだと予想している。「ドライバーはメモリアル・デー(5月30日)に過去最高のガソリン価格を支払うことになるだろう」と言い、この休日の移動は昨年を上回る数字になるだろうと付け加えた。

過去最高の価格が収益を圧迫し、購買の遅れを招くのではないかという憶測とは裏腹に、配達のために米国の道路を往復するトラック運転手や運送業者は、ディーゼル・ガソリンを買いだめするために全力を尽くしているという。

「需要はそう簡単に壊れるものではない」とShellcのCEOであるBen van Beurden氏は先週、投資家に対してこのように語った。

しかし、アナリストの中には、この価格かそれ以上では、燃料需要は破壊されなければならない -そうでなければ、経済が破壊されてしまう、と主張する者もいる。

ニューヨークのエネルギー・ヘッジファンド、Again Capital社のパートナー、John Kilduff氏は、「経済に対する懸念は正当で現実的だ」と述べた。「ディーゼル・ガソリンの値段は、現実の経済を表している。1ガロン6ドル以上では、企業の収益を圧迫しており、ディーゼルの大幅な需要破壊の崖っぷちに立たされるかもしれない」と述べた。

「すでに、道路を走る配達用のアマゾンのトラックは減っており、一方でクレジット・カードの使用は大幅に増加しており、消費者が急速に疲弊していることを示している。すべては、石油長者による価格の吊り上げによるものだ。」

国際エネルギー機関(IEA)は1日、高騰する燃料油価格と経済成長の鈍化により、今年いっぱいから2023年にかけて需要の回復が大幅に抑制されるだろうと警告を発した。

同氏のようなアナリストは、FRBがどこまで利上げに踏み切るかについても懸念している。

FRBはこれまで、3月に25bps(0.25%)、5月に50bps(0.5%)の利上げを決定した。金融市場のトレーダーは、6月の75bps(0.75%)の利上げの可能性を83%に織り込んでいる。FRBのパウエル議長は木曜日に発表したインタビューで、少なくともあと2カ月は50bpsの引き上げを続けたいとの考えを示し、来月の大幅な引き上げを全面的に否定している。

FRBの利上げによって米国経済が軟着陸できるかどうかは、中央銀行がコントロールできない要因にも左右される。インフレの重要な要素である賃金の上昇を抑えるのは簡単ではないという。「いくつかの理由から、今それを達成するのはかなり困難だろう。1つは、失業率が非常に低く、労働市場が非常にタイトであること、そしてインフレ率が非常に高いからだ。」

パンデミックによる混乱で2020年にGDPは3.5%縮小した後、2021年の米国経済は5.7%拡大し、1982年以来最も速いペースで成長した。

しかし、インフレ率は経済と同じか、あるいはそれよりも少し早く成長している。個人消費支出指数は、FRBが注視するインフレ指標であるが、12月までの1年間で5.8%、3月までの12カ月間で6.6%の上昇を記録した。両方とも1980年代以降で最も速い伸びであった。消費者物価指数生産者物価指数も、重要なインフレ指標であるが、4月までの1年間にそれぞれ8.3%と11%上昇した。

FRBの目標インフレ率は年率2%である。パウエル議長は、2022年までに合計7回の利上げ(今年のFOMC会合の日程で許容される最大値)を行う予定であることを示唆した。2023年には、2%のインフレ目標が達成されるまで、さらに利上げが続く可能性があるという。

「私が恐れているのは、FRBがやり過ぎてしまうことだ」とKilduff氏は言う。「コロナ禍関連の景気刺激策はすでに連邦政府によって終了されており、今後数カ月は金融システム内の流動性が大幅に低下することになる。もしFRBが過剰な利上げによって同システムを引き締めれば、経済の動脈全体を切り刻むことになるかもしれない。」

ブルームバーグのBlas氏も、米国経済に訪れるかもしれない景気減速について同意している。

「製油所が利益を上げれば上げるほど、エネルギー・ショックは経済に大きな打撃を与えるだろう。「唯一の解決策は、需要を減らすことだ。しかし、そのためには不況が必要だ」。

原油:週次動向とテクニカル分析による見通し

ロンドンで取引されているブレント原油は、世界的な原油のベンチマークであり、先週金曜日には1バレル3.77ドル(3.5%)上昇し、111.22ドルで取引された。週次では0.7%の下落となった。

中国が上海でのロックダウンを間もなく緩和し始めるかもしれないとの報道を受け、ブレント原油は上昇した。

しかし、欧州連合(EU)がロシア産原油の輸入禁止に関する合意を得るのが引き続き遅れていること、特にロシアからの供給がなければエネルギー危機に陥ることを恐れるハンガリーの抵抗を受けて、ブレント原油の上値は重かった。

ニューヨーク市場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)は、4.03ドル(3.8%)上昇の110.16ドルで取引を終えた。週次では0.7%の上昇となった。

WTIは、米国の石油精製能力の逼迫が明らかになったことで上昇し、燃料価格は今週、ディーゼル・ガソリンが1ガロン6ドル以上、ガソリンが4ドル50セント以上の史上最高値を記録している。

ブレントとWTIの乖離は、「2つのオイルの物語」だとKilduff氏は言う。

「ハンガリーを中心とした欧州のロシア産原油の禁輸措置の保留が、ブレント原油の上昇を制限している一方、WTIは、米国の燃料価格を過去最高値に押し上げた燃料の精製逼迫による強気のバリエーションで推移している」と付け加えた。

WTIのテクニカルな見通しについて、skcharting.comのチーフ・テクニカル・ストラテジスト、Sunil Kumar Dixit氏は、「週次で110ドル超で取引を終えたのは、原油の強気筋が116ドルから121ドルの間で次のレッグを上げるためのポジショニングをとっていることを示している」と述べている。

「これまでのところ、98ドルがハード・フロアーであることが証明されており、104ドルから106ドルが勢いを保っている」と同氏はみている。「ボラティリティに起因する106ドルから104ドルの穏やかなコンソリデーションは、より多くの買い手を引き付けるだろうし、104ドル以下の弱さは、101ドルから99ドルに向けて原油を押し上げるだろう。」

また、98ドルを決定的に下回ると、強気の勢いが無効になると付け加えた。「18~20ドルの調整を引き起こし、WTIは中期的に88ドルと75ドルにさらされる可能性もある。」

金:週次動向とテクニカル分析による見通し

「輝くものの全てが金だというわけではない」という言葉がある。しかし、金そのものも、最近ほとんど光り輝いていない。

金曜日のセッションで、金はニューヨークのComexで一時的に重要な1,800ドルのレベルを割り込み、4月中旬に始まった売りを加速させた。

しかし、1700ドル台でサポートされた後、そのレベルを回復したものの、週初めの下落分を取り戻すには十分ではなく、4月8日に終わった週からおよそ165ドル(8%)の値下がりとなり、4週続落となっている。

金曜日の金の下落は、ここ数日と同様、20年来の高値を更新したドルの上昇を理由としたものだった。ドル・インデックスは、米国通貨と他の主要6通貨を比較するものだが、その日のうちに105.05のピークをつけた後、104.5のセッション安値まで後退した。

そのため、金は下落分を一部取り戻したが、この変化はドルの方向性にほとんど影響を与えなかった。アナリストは、米連邦準備制度理事会(FRB)が次の米利上げでどれだけタカ派的になるかという憶測から、今後数日で20年ぶりの高値を付けると予想していた。

オンライン取引プラットフォームOANDAでアジア太平洋市場の調査を担当するJeffrey Halley氏は、「突然のドル売りだけが、金の弱気なテクニック見通しを変える可能性がある」と述べている。

{{コメックスの金先物6月限}}は、14.30ドル(0.78%)安の1オンス=1810.30ドルで取引を終えた。この日の安値は1797.45ドルで、1月30日以来の底値となった。6月限は週次で4%下落した。

金曜日の安値からの反発にもかかわらず、skcharting.comのDixit氏によると、金は、1836ドルから1885ドルまでの一連のレジスタンスをクリアできない場合、1700ドルの領域に再び入る可能性があるという。

同氏は、金のスポット価格を分析に使用している。「現在のトレンドが弱気に転じているため、これらのレジスタンス領域を試す売りが出る可能性が非常に高い」と述べた。

「金が短期的に弱気に転じているため、弱気の圧力は1800ドル、そして1780ドルから1760ドルを試すだろう。このレンジを上回る決定的な終値は、1880ドルまで回復を伸ばすことができるだろうが、失敗すると、弱気圧力が金を1800ドル - 1780ドルまで押し下げ、今後1週間で1760ドルまで下落を拡大させるかもしれない。」

しかし、もし金が1848ドルを突破して維持されれば、その回復は1885ドルや1900ドルまで伸びる可能性がある、と付け加えた。

免責事項:Barani Krishnanは、自身が執筆しているコモディティおよび証券のポジションを保有していない。

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