■EmendoBioの開発状況
2. アンジェス (TYO:4563)の今後の事業戦略
Emendoでの今後の事業戦略は、自社開発による収益化とOMNIプラットフォーム技術のライセンス供与による収益獲得の2軸で展開する方針である。
自社開発については、ELANE変異によるSCNを対象とした臨床開発を進めるべく、IND(新薬臨床試験開始)申請に向けてFDA(米国食品医薬品局)との協議を行っている段階で、順調に進めば2023年にも臨床試験を開始できる見通しだ。
SCNとは骨髄における顆粒球系細胞の成熟障害により発症する好中球減少症のことで、遺伝子変異により出生後の早期から好中球減少による中耳炎、気道感染症、蜂窩織炎、皮膚感染症を反復し、肺炎や敗血症などその他の疾患に至るケースもある。
100万人に2人の割合で発症する希少疾患で、SCNの約7割はELANE変異によるものとなっている。
現在の治療法は、ST合剤(抗生剤、スルファメトキサゾール・トリメトプリム)による感染予防が一般的で、感染症がコントロールできない場合にはG-CSF※を使用して好中球の誘導を促すことになる。
ただ、G-CSFを高用量で使用した場合、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病へ移行し、造血幹細胞移植が必要となるケースもある。
Emendoでは患者から造血幹細胞を取り出し、OMNIプラットフォームを用いて正常な機能を有するELANEを発現させたうえで患者の体内に戻し、好中球の機能を回復させる根治療法の開発を目指している。
動物実験では正常な遺伝子を傷つけずに、異常な遺伝子のみを正確に区別して破壊し、その結果、造血幹細胞が好中球に分化できるようになったことが確認されている。
※G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子):サイトカインの一種で顆粒球産出の促進、好中球の機能を高める作用がある。
EmendoではまずELANE変異によるSCNでPOCを取得することを最優先課題として取り組んでおり、その後に他のパイプラインの臨床開発も進めていくことにしている。
現在、前臨床試験段階では血液系や眼科系の遺伝性疾患の開発プロジェクトを複数進めている。
一方、OMNIプラットフォームのライセンス供与については、バイオベンチャーからメガファーマまで合計10社程度の引き合いがきており、複数社と交渉を進めている段階にある。
特に、CAR-T療法の開発企業からの関心度が高い。
CAR-T療法は免疫細胞療法の1つで、がん患者のT細胞に標的抗原に対するCAR(Chimeric antigen receptor:キメラ免疫受容体)をコードする遺伝子を導入することで、がん細胞に対する攻撃力を高める治療法だが、先進のゲノム編集技術を用いることで、治療効果の高い新薬を効率的に開発できる可能性があるためだ。
CRISPR/Cas9技術を使った開発も進められているが、既述のとおり「オフターゲット効果」がないOMNIプラットフォーム技術のほうが安全性も高いことから、ライセンス契約が締結される可能性は高いと弊社では見ている。
契約交渉では、特定の開発プロジェクトで同技術を利用したい企業と、複数の開発プロジェクトで包括的に同技術を利用したい企業があるようで、いずれにしてもEmendoでは疾患別に非独占的ライセンス契約を締結する方針で、ペプチドリーム (TYO:4587)のようなビジネスモデルを志向している。
Emendoの人員は2020年の子会社化時点で50名強程度であったが、その後開発体制を強化し現在は100名程度、うち、75名が博士号を持つなど優秀な人材が集結している。
研究開発費は2021年12月期で23億円程度だったが、2023年以降、臨床試験が開始されれば開発費も増加することが予想される。
2023年の事業運営資金については同社が2022年10月に発行した新株予約権の行使により調達する予定だが、その後については米国でIPOを行い、独自で株式市場から調達することも選択肢の1つとして考えている。
米国ではゲノム編集技術を用いた臨床開発段階のバイオベンチャーが複数社上場しており、時価総額は収益化前段階でも数億ドル(数百億円)から数十億ドル(数千億円)規模で評価されている。
国内でゲノム編集技術のバイオベンチャーとしてはモダリス (TYO:4883)が上場しているが、時価総額は100億円程度にしか過ぎない。
開発の進捗状況やパイプライン、ライセンス契約の有無等によって異なるものの、総じて米国のほうが投資家からの期待値の高いことが要因として考えられ、米国市場のほうが効率的に資金調達を行うことが可能とも言える。
まずは臨床試験を開始してからとなるが、Emendoが独自で資金調達できるようになれば、同社の資金負担も大幅に軽減されることになる。
なお、従業員数で同じ規模の企業ということで見れば、Verve Therapeutics、Caribou Biosciences、Graphite Bioが該当する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
2. アンジェス (TYO:4563)の今後の事業戦略
Emendoでの今後の事業戦略は、自社開発による収益化とOMNIプラットフォーム技術のライセンス供与による収益獲得の2軸で展開する方針である。
自社開発については、ELANE変異によるSCNを対象とした臨床開発を進めるべく、IND(新薬臨床試験開始)申請に向けてFDA(米国食品医薬品局)との協議を行っている段階で、順調に進めば2023年にも臨床試験を開始できる見通しだ。
SCNとは骨髄における顆粒球系細胞の成熟障害により発症する好中球減少症のことで、遺伝子変異により出生後の早期から好中球減少による中耳炎、気道感染症、蜂窩織炎、皮膚感染症を反復し、肺炎や敗血症などその他の疾患に至るケースもある。
100万人に2人の割合で発症する希少疾患で、SCNの約7割はELANE変異によるものとなっている。
現在の治療法は、ST合剤(抗生剤、スルファメトキサゾール・トリメトプリム)による感染予防が一般的で、感染症がコントロールできない場合にはG-CSF※を使用して好中球の誘導を促すことになる。
ただ、G-CSFを高用量で使用した場合、骨髄異形成症候群や急性骨髄性白血病へ移行し、造血幹細胞移植が必要となるケースもある。
Emendoでは患者から造血幹細胞を取り出し、OMNIプラットフォームを用いて正常な機能を有するELANEを発現させたうえで患者の体内に戻し、好中球の機能を回復させる根治療法の開発を目指している。
動物実験では正常な遺伝子を傷つけずに、異常な遺伝子のみを正確に区別して破壊し、その結果、造血幹細胞が好中球に分化できるようになったことが確認されている。
※G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子):サイトカインの一種で顆粒球産出の促進、好中球の機能を高める作用がある。
EmendoではまずELANE変異によるSCNでPOCを取得することを最優先課題として取り組んでおり、その後に他のパイプラインの臨床開発も進めていくことにしている。
現在、前臨床試験段階では血液系や眼科系の遺伝性疾患の開発プロジェクトを複数進めている。
一方、OMNIプラットフォームのライセンス供与については、バイオベンチャーからメガファーマまで合計10社程度の引き合いがきており、複数社と交渉を進めている段階にある。
特に、CAR-T療法の開発企業からの関心度が高い。
CAR-T療法は免疫細胞療法の1つで、がん患者のT細胞に標的抗原に対するCAR(Chimeric antigen receptor:キメラ免疫受容体)をコードする遺伝子を導入することで、がん細胞に対する攻撃力を高める治療法だが、先進のゲノム編集技術を用いることで、治療効果の高い新薬を効率的に開発できる可能性があるためだ。
CRISPR/Cas9技術を使った開発も進められているが、既述のとおり「オフターゲット効果」がないOMNIプラットフォーム技術のほうが安全性も高いことから、ライセンス契約が締結される可能性は高いと弊社では見ている。
契約交渉では、特定の開発プロジェクトで同技術を利用したい企業と、複数の開発プロジェクトで包括的に同技術を利用したい企業があるようで、いずれにしてもEmendoでは疾患別に非独占的ライセンス契約を締結する方針で、ペプチドリーム (TYO:4587)のようなビジネスモデルを志向している。
Emendoの人員は2020年の子会社化時点で50名強程度であったが、その後開発体制を強化し現在は100名程度、うち、75名が博士号を持つなど優秀な人材が集結している。
研究開発費は2021年12月期で23億円程度だったが、2023年以降、臨床試験が開始されれば開発費も増加することが予想される。
2023年の事業運営資金については同社が2022年10月に発行した新株予約権の行使により調達する予定だが、その後については米国でIPOを行い、独自で株式市場から調達することも選択肢の1つとして考えている。
米国ではゲノム編集技術を用いた臨床開発段階のバイオベンチャーが複数社上場しており、時価総額は収益化前段階でも数億ドル(数百億円)から数十億ドル(数千億円)規模で評価されている。
国内でゲノム編集技術のバイオベンチャーとしてはモダリス (TYO:4883)が上場しているが、時価総額は100億円程度にしか過ぎない。
開発の進捗状況やパイプライン、ライセンス契約の有無等によって異なるものの、総じて米国のほうが投資家からの期待値の高いことが要因として考えられ、米国市場のほうが効率的に資金調達を行うことが可能とも言える。
まずは臨床試験を開始してからとなるが、Emendoが独自で資金調達できるようになれば、同社の資金負担も大幅に軽減されることになる。
なお、従業員数で同じ規模の企業ということで見れば、Verve Therapeutics、Caribou Biosciences、Graphite Bioが該当する。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)