[11日 ロイター] - <為替> ドルが対ユーロで前日に付けた4カ月ぶり高値から下落。中国の新型コロナウイルス懸念を受けた安全資産買いが一服し、リスク選好が改善した。
経済指標から米経済見通しがユーロ圏より堅調との見方が強まる中、新型肺炎を巡る経済的影響への懸念から、このところドル買いが進んでいた。また、為替市場全体のボラティリティーが低い状態が続き、ユーロやスイスフランなど利回りの低い通貨を借りて、ドルなどの高金利通貨を買うキャリートレードの動きにつながったこともドル高の背景。
ユーロ (EUR=)は一時、昨年10月1日以来となる1.0892ドルまで下落。その後は1.0923ドルで推移した。
この日発表の昨年12月の雇用動態調査(JOLTS)は、求人件数(季節調整済み)が642万3000件と、2017年12月以来の低水準となった。レイオフ・解雇件数は増加し、このところの雇用増の加速が持続可能でない公算が大きいことが示された。
<債券> 連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が議会証言で米経済には耐性があり、現行の政策金利は適切との考えを示したことを受け、国債利回りが上昇した。
パウエル議長は下院金融サービス委員会で行った証言で、2019年下半期は「昨夏に強まった世界的な向かい風に対し経済は耐性を示した」との見解を表明。現在の見通しの「大幅な再評価」が必要にならない限り、金利を調整する必要はないと述べた。ただ「中国で混乱を引き起こし、世界経済に波及する恐れのある新型コロナウイルスの動向をFRBは緊密に注視している」と警戒感を示した。
終盤の取引で10年債 (US10YT=RR)利回りは3.8ベーシスポイント(bp)上昇の1.585%。2月5日以来、初めての上昇となる。2年債 (US2YT=RR)利回りは3.6bp上昇の1.413%、30年債 (US30YT=RR)利回りは3.1bp上昇の2.052%となっている。
新型ウイルスの感染拡大による経済的な影響への懸念から安全資産に対する需要が増大し、米国債はこのところ短期債から長期債に至るまで利回りが低下。週末の間に新型コロナウイルス感染による中国本土の死者数が2002─03年に大流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)の世界全体の死者数を上回ったと伝わったことで、前日の取引ではリスク選好度が大きく低下し、一部長短金利差は逆転していた。
この日の取引でも3カ月物財務省短期証券 (US3MT=RR)と10年債との利回り格差はマイナス0.98bpと、逆転した状態が続いている。
財務省がこの日に実施した380億ドルの3年債入札は堅調な需要を集めた。12日には270億ドルの10年債入札、13日には190億ドルの30年債入札が実施予定。
<株式> S&P総合500種 (SPX)とナスダック総合 (IXIC)が前日に続き最高値を更新して取引を終えた。中国当局者が新型コロナウイルスの流行について、4月ごろに終息する可能性があるとの見解を示したことが背景。
ただ、米連邦取引委員会(FTC)が、大手IT(情報技術)企業に対し、規制当局に報告していない小規模な合併・買収(M&A)に関する情報の提供を命じたことを受け、ダウ工業株30種 (DJI)は横ばいで終了。S&Pとナスダックも上げ幅を縮小した。
FTCから情報を求められたマイクロソフト (O:MSFT)が大きく下げ、主要株価3指数を圧迫した。アルファベット (O:GOOGL)、アマゾン・ドット・コム (O:AMZN)、アップル (O:AAPL)、フェイスブック (O:FB)も同じく、情報提供を要請された。
この日は、パウエルFRB議長の半期に一度の議会証言も、市場の注目材料。議長は経済見通しについて前向きな見方を改めて示した上で、新型コロナウイルスの感染拡大などのリスクを注視していると述べた。 専門家は「議長はコロナウイルスに言及し、正当化されればFRBが行動するきっかけになり得ることを認めた」とし、同時にリスクには現実味があることを示すと指摘した。
S&Pの主要11セクターでは、通信サービス (SPLRCL)、主要消費財 (SPLRCS)、情報技術 (SPLRCT)を除く全てが上昇。不動産セクターが最大の上昇率を記録した。
通信大手TモバイルUS (O:TMUS)は11.8%急伸。米連邦地裁が、ソフトバンクグループ (T:9984)傘下の同業スプリント (N:S)との合併を認める判断を示したことが背景。 スプリントは77.5%の大幅高となった。一方、ベライゾン・コミュニケーションズ (N:VZ)は2.6%下落した。
SBAコミュニケーションズ (O:SBAC)、アメリカン・タワー (N:AMT)、クラウン・キャッスル・インターナショナル (N:CCI)など電波塔運営株は4─7%高。Tモバイルとスプリントの合併により、電波塔の需要が高まるとの期待感が広がった。
今年の利益見通しが予想を大幅に下回ったスポーツ用品のアンダーアーマー (N:UA)は16.7%急落した。
<金先物> 5営業日ぶりに反落。4月物の清算値は前日比9.40ドル(0.60%)安の1オンス=1570.10ドルとなった。
新型肺炎に対する市場の警戒感が和らぐ中、史上最高値を更新する米株式相場を眺め、安全資産としての金は売りに押された。前日まで4日続伸となったことで利益確定の売りも出やすかったもようだ。
週後半にかけて発表される米消費者物価指数(CPI)や米小売売上高などの重要指標の発表を控えて様子見ムードも広がり、値動きは限定的だった。
<米原油先物> 新型肺炎の拡大に伴うエネルギー需要減退懸念を受けた売りが一巡し、3営業日ぶりに反発。米国産標準油種WTIの中心限月3月物の清算値は前日清算値比0.37ドル(0.75%)高の1バレル=49.94ドル。4月物の清算値は0.39ドル高の5 0.17ドルだった。
3月物清算値は前日に50ドルを下回り、1年1カ月ぶりの安値を更新した。11日はこの後を受け買い戻され、相場は一時50.69ドルまで上昇。取引終盤に利益確定の売りに押されて再び50ドルを割り込んだが、プラス圏は維持した。
ドル/円 NY終値 109.77/109.80
始値 109.85
高値 109.96
安値 109.74
ユーロ/ドル NY終値 1.0914/1.0918
始値 1.0911 (EUR=)
高値 1.0924
安値 1.0892
米東部時間
30年債(指標銘柄) 17時05分 106*27.50 2.0652% (US30YT=RR)
前営業日終値 107*28.00 2.0210%
10年債(指標銘柄) 17時03分 101*10.50 1.6023% (US10YT=RR)
前営業日終値 101*26.50 1.5470%
5年債(指標銘柄) 17時05分 99*24.75 1.4224% (US5YT=RR)
前営業日終値 100*01.25 1.3670%
2年債(指標銘柄) 17時04分 99*28.88 1.4255% (US2YT=RR)
前営業日終値 99*31.88 1.3770%
終値 前日比 %
ダウ工業株30種 29276.34 -0.48 0.00 (DJI)
前営業日終値 29276.82
ナスダック総合 9638.94 +10.55 +0.11 (IXIC)
前営業日終値 9628.39
S&P総合500種 3357.75 +5.66 +0.17 (SPX)
前営業日終値 3352.09
COMEX金 4月限 1570.1 ‐9.4
前営業日終値 1579.5
COMEX銀 3月限 1759.7 ‐18.8
前営業日終値 1778.5
北海ブレント 4月限 54.01 +0.74 (LCOc1)<0#LCO:>
前営業日終値 53.27
米WTI先物 3月限 49.94 +0.37 (CLc1)<0#CL:>
前営業日終値 49.57
CRB商品指数 169.6148 +0.7401 (TRCCRB)
前営業日終値 168.8747
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