2016年はVR元年
VR(仮想現実)、AR(拡張現実)が世界を変える技術として注目されている。
VRとはVirtual Reality(バーチャル・リアリティ)の略で、仮想現実と訳される。
実際にはそこに存在していないが、HMD(ヘッドマウントディスプレイ)などを用いてユーザーの視覚などに訴えることで、あたかもそこに存在しているかのように認知させる技術だ。
2016年はVR元年といわれている。
HMDは1990年代から存在していたが、それまでは視野角が狭かったり、画面の解像度が悪かった。
最近では視野角が広がり、解像度も高く、加速度計などが小型化によってHMDに実装できるようになって、リアリティが向上。
またソフトの面でもイーフロンティアが提携しているChaos Groupの「V-Ray」など、最先端の開発が進んできた。
これによりVR元年としての期待が高まった。
さらに市場を拡大させるとして注目されているのが、10月発売の「PlayStation(プレイステーション)VR(PS VR)」の登場である。
PSVRは6月に予約が開始され、予約開始とほぼ同時に完売となると、さらに翌月の2次予約でも品切れ続出となる人気ぶりである。
また、米インテルは最近、独自のヘッドマウントデバイスProject Alloyを発表。
Project Alloy(プロジェクト・アロイ)は外部のコンピュータと接続する必要がなく、ケーブルや無線の制約を気にせず仮想空間を歩けるスタンドアロン型のヘッドマウント端末だ。
インテルはProject AlloyのハードウェアとAPIを2017年にオープンプラットフォーム化し、サードパーティーがProject Alloy準拠のVR/ARヘッドセットを販売できるようにする計画という。
応用分野が広がり市場拡大
VRはいまのところゲームがメインユーザーだが、インテルのオープンプラットフォーム化によって参入障壁が下がり、市場拡大に伴って様々な分野での開発が進み、さらなる普及が見込まれる。
注目されている分野では、VRでの職業トレーニングや医療分野がある。
職業トレーニングでは航空機の操縦や建設機械、プラント施設等の操作といった専門技術習得用シミュレータとしての活用、宇宙産業では宇宙ステーションでの長期ミッションも時間を気にせずに体験できる。
医療分野では既に患者の認知行動療法にVRが利用されているが、その他、手足を失った人の幻肢痛の治療に使われるほか、医療ツーリズムでは、旅行客がその地を訪れたような体験ができる。
ARの活用業域も拡大中
一方でVRの発展で出遅れ感があったAR=Augmented Reality(オーグメンテッドリアリティ、拡張現実の意)だったが、「ポケモンGO」によって世界的な社会現象をもたらすことになった。
ポケモンGOは位置登録情報を利用したゲームであり、世界がゲームフィールドとなる。
当然、ゲームを行うには外に出る必要があり、さらに色々と歩き回る必要がある。
家に閉じこもっていたゲーマー達は外に出ることにより、健康的になるほか、消費にも好影響を与えている。
また、自閉症の子どもが自ら外に出て話せるようになったほか、小児科病院ではベッドで寝たきりだった子どもたちが病院中を歩き回っているようである。
さらに、人を集めやすくなったことから、地方創生にも一役買っている。
地方の自治体が観光客集めで活用したり、被災地では観光復興の推進を目的にポケモンGOが使われることになった。
ARはスマホやタブレット、スマートグラスなど、HMDに限定されないデバイスで利用されるため、VRよりも広範な領域で発展すると見られている。
自動車では高級車のカーナビのほか、パーキングアシストなどで活用されているし、消費関連としては、購入したい表品を実際の大きさで表し、家具等の配置した状況なども体感できる。
スマートグラスでは実際のモノを見つつ、レンズに指示を映すことで、本社にいたまま地方にある工場への指示・指導にも活用されるため作業ミス防止にも役立つだろう。
生産性向上に寄与するVR AR
VR/AR関連技術は、今後のさらなる広がりが大いに期待される分野である。
1つの例として、現在、味覚や嗅覚のような化学刺激の模擬デバイスの研究も進んでいるようだ。
技術発展によって用途が広がることで、これまで考えもしなかったような業態からの参入や生産技術の向上など、様々なイノベーションとともに生産性をあげていくこととなるだろう。
実際、VR/ARの市場規模は2016年現在で約50億ドル(5100億円)。
2020年に500億ドル(5・1兆円)、2025年には800億ドル(8・1兆円)とも考えられている。
すでに注目される銘柄が多数見受けられるテーマだが、これからもますます市場を賑わしていくことになろう。
(村瀬智一/フィスコ情報配信部長)
※本稿は実業之日本社より刊行されているムック「Jマネー FISCO 株・企業報 2016年秋冬号」の記事からの抜粋(一部修正)です。
当該書籍には本テーマに関連する、フィスコが選ぶ注目銘柄14社が紹介されています。