【先週の概況】■ドル強含み、米中通商合意への期待残る先週のドル・円は強含み。
米雇用情勢の改善を好感してリスク選好的なドル買いが先行した。
「米中の第1段階の通商合意の署名は12月にずれ込む可能性がある」との報道を嫌気してドル売り・円買いが一時活発となったが、中国商務省の報道官は11月7日、「米国と中国は通商協議の第1段階の合意の一環として、双方が発動した追加関税を段階的に撤廃することで合意した」と発表したことを受けてドル買い・円売りが加速し、ドル・円は一時109円49銭まで買われた。
8日のニューヨーク外為市場でドル・円は、一時109円42銭から109円08銭まで下落した。
トランプ米大統領が「関税撤廃に関してはまだ何も合意していない」と言及したため、輸入関税撤廃による景気回復への期待はやや後退し、リスク回避のドル売り・円買いが観測された。
しかしながら、トランプ大統領は「中国との通商協定の調印は米国で計画している」、「中国は通商合意の成立を私が望んでいる以上に望んでいる、現状に満足」との見方も伝えており、通商協議継続への期待は失われていないことから、リスク回避のドル売りは一巡し、ドル・円は109円24銭でこの週の取引を終えた。
ドル・円の取引レンジ:108円18銭−109円49銭。
【今週の見通し】■伸び悩みか、引き続き米中通商協議の進展を注視へ今週のドル・円は伸び悩みか。
雇用情勢の改善などで米国の利下げ打ち止め観測が浮上している。
米中通商協議のさらなる進展への期待もあるが、米中首脳による署名実現までは予断を許さない状況が続く見通し。
米国の10月消費者物価コア指数(CPI)と10月小売売上高は有力な売買材料となりそうだ。
米連邦準備制度理事会(FRB)は10月29-30日に開催した連邦公開市場委員会(FOMC)で景気拡大に向け「適切に行動する」との従来の文言を声明文から削除。
市場には利下げの打ち止めの思惑が広がるなか、コアCPIは底堅い内容が見込まれる。
また、小売売上高も前回実績を上回ると予想されており、市場予想と一致すればリスク選好的なドル買いが入りやすい地合いとなろう。
米中通商協議に関しては、両国がこれまで相互に発動した輸入関税を段階的に撤回する方向で調整が進められる見通し。
両国首脳は12月に会談を行なう可能性があり、その場で「第1段階」の合意について双方が署名すると予想されている。
ただ、これまでの交渉過程を振り返ると、米中首脳会談で合意事項について双方が署名する保証はないとの見方も出ており、リスク選好の円売りが大きく広がる可能性は低いとみられる。
ドル・円は心理的な節目の110円を目前に利益確定を狙った売り圧力がやや強まるとの声が聞かれており、109円台後半で伸び悩む展開もあり得る。
【米・10月消費者物価コア指数(CPI)】(13日発表予定)13日発表の10月消費者物価コア指数(コアCPI)は前年比+2.4%と上昇率は、9月の+2.4%と同水準となる見通し。
市場予想と一致すれば、早期追加利下げ観測は後退するとみられる。
【米・10月小売売上高】(15日発表予定)15日発表の10月小売売上高は前月比+0.1%と、9月の同-0.3%から改善する見通し。
景気をけん引する個人消費はまずまず順調であることが確認された場合は、長期金利の上昇を促し、ドル買い材料になるとみられる。
予想レンジ:107円50銭−110円50銭