[東京 5日 ロイター] - 日経平均が急騰し、約1カ月ぶりに2万1000円台を回復した。海外の政治的緊張が緩和したことで、投資家心理が好転、底入れの動きとなっている。ただ、ここからは戻り売りが出やすくなるため、上値を追うためには、依然として薄い売買ボリュームの増加が欠かせないとみられている。
香港政府トップの林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が4日、数カ月にわたる抗議活動の発端となった「逃亡犯条例」改正案の撤回を表明。一方、英議会下院は4日、欧州連合(EU)からの合意なき離脱を阻止するための離脱延期法案を賛成多数で可決した。
5日の東京株式市場では「これで不安心理が後退する。対中関係が改善すれば、さらにマインドは良くなるだろう」(岡地証券・投資情報室長の森裕恭氏)という見方を背景に、日経平均は寄り付きから大幅上昇して始まった。
そこに中国商務省が、米中両政府が10月初旬にワシントンで通商協議を開催することで合意したと発表し、リスクオンが加速。日経平均は一気に500円を超える上昇となり、日経平均も8月2日以来となる2万1000円に乗せた。
市場では「売り材料が一気に霧散した格好。そのためショートカバーが活発化し、売り物が引っ込む中を株価は駆け上がった。こうなるとムードは一変し、買いが買いを呼ぶ好循環になる」(国内証券)との声が出た。
ただ、ここから8月に急落する前の2万1000円台後半まで戻すには、市場エネルギーの回復度合いがカギとなるとみる関係者が多い。
キャピタル・パートナーズ証券・チーフマーケットアナリストの倉持宏朗氏は「今日のところはショートカバーが中心」とした上で「時価より上値は売り物が厚くなってくるとみられるため、さらに上昇するにはマーケットのボリュームアップが不可欠になる。むしろ、ここからが戻りの正念場だ」と指摘する。
東証1部売買代金は前週30日に13日ぶりに2兆円を上回った。しかし、翌営業日の9月2日は1兆3299億円と今年最低。その後も薄商いは続き、5日前場は1兆1810億9000万円と2兆円ペースを上回っているが、一時日経平均が500円高となった割には盛り上がりは乏しい。
需給面でみると、日経平均は4月に高値を形成しているため、6か月の信用取引の期日を意識すると、ここから戻り売りがかさむ可能性がある。「信用取引の手じまい売りがかさんだ場合、それらを消化するためには、外国人投資家が回帰するなど市場エネルギーが盛り上がる必要がある」と大和証券・チーフテクニカルアナリストの木野内栄治氏はみている。
もっとも、「景気後退懸念が後退すれば、リスク回避の動きもなくなり、海外勢を中心に日本株にも資金が向かう」(別の国内証券)と楽観論も出始めている。木野内氏も景気が上向く兆候がみえてくれば、企業業績の不安を解消させ、株価のリバウンドに弾みがつくとの見方を示している。
(水野文也 編集:佐々木美和)