市場を出し抜く株式投資は、そうそう簡単ではない。投資家心理に付き物の早合点や読み違い、焦り、嫉み、驕り、諦め、不安、過度の期待、過度の悲観などが躓きの石となって、パフォーマンスに大きな違いが生じることになる。最悪の場合は、相場都都逸が自虐風に嘆くような「売れば二上がり、買や三下がり、切ってしまえば本調子」となることも跡を絶たない。
足元の師走相場も、12月中旬以降はこの綱引きが激しい。FRB(米連邦準備制度理事会)が、15日にインフレ抑制策を決定したが、株価は、高安はもちろん、中心銘柄もグロース株とバリュー株とが日替わりメニューで変わり、長期金利、為替相場もチグハグに動き不安定化している。英国、欧州、米国で新規感染者が急増中の新型コロナウイルスの「オミクロン型」にしても、パンデミック(世界的な大流行)を起こした「デルタ株」より数十倍感染力が強いとする情報と、重症化リスクはそれほど高くないとの情報とが飛び交いそのたびに株価は上へ下へと一喜一憂した。腰の据わった中長期投資家よりも短期投資家の先物取引を絡めた仕掛け的な売買が軸となっているから、値動きもまるで高速エレベータである。
その2021年相場も残り4営業日、29日からは年替わりで実質的に2022年相場入りとなる。きょう27日のクリスマス休暇明けで市場に戻ってくる海外投資家次第で「終わり良ければすべて良し」となるか「竜頭蛇尾」と諦めなくてはならないか決まるはずで、新年相場の方向性も見えてくるはずだ。クリスマス休暇前の23日の米国市場で、S&P500種株価指数は、2週間ぶりに史上最高値を更新したのだから、東京市場にもその何分の1でもおこぼれにあずかれることを期待したくなる。もちろん過度な期待は、「期待で買って現実で売る」となることにもなり、またまた市場に振り回され勝ちになることは十分に留意する必要はある。
そこで参考にしたいのが、岸田文雄首相の発言である。首相は、12月23日に「オミクロン型」の感染拡大を前に「危機の時は拙速、やり過ぎの方がましであるという考え方で取り組んでいる」とアピールして感染対策の強化策を発動した。新年相場が危機かどうかは兎も角、同発言を投資アドバイスと受け取ると浮上するのは、カレンダー投資、いわゆるイベント・ドリブンである。新年早々に予定されているイベントやスケジュールを先取り、先読みして関連株を待ち伏せ買いする投資手法である。もちろん先読みが外れるフライング・リスクもあるが、まだ1月相場の運試しと割り切り、徐々に軌道修正すれば挽回は可能で、リスクを上回るリーターンが期待できそうだ。
注目したいのは、3つのイベントである。第一は、東証が1月11日に市場区分再編の各市場の上場銘柄を公表するが、この関連株である。次は、「オミクロン型」の感染拡大に対して前倒しされる3回目のワクチン接種「ブースター接種」の関連株となる。最後は、1月末から本格化する3月期決算会社の第3四半期(3Q)決算発表で業績の上方修正が予想される好業績銘柄で、すでに今期業績を2回以上も上方修正した銘柄は、その可能性が高い。フライング・リスクを警戒しつつ、厳しく銘柄スクリーニングするのが、残り4営業日の仕事納め、年末年始の正月休み中の宿題になる。(情報提供:日本インタビュ新聞社・株式投資情報編集部)