日本エム・ディ・エム<7600>(東証プライム)は人工関節製品など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。23年3月期は営業・経常増益予想としている。第1四半期は為替の円安や日本国内における償還価格改訂などで減益だったが、コロナ禍の影響が和らいで症例数が回復基調である。下期の構成比が高い季節特性もあり、通期ベースで収益拡大基調を期待したい。株価は年初来安値圏で軟調展開だが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。
■整形外科分野の医療機器メーカー、米国子会社製品が主力
人工関節製品、骨接合材料、脊椎固定器具など整形外科分野を主力とする医療機器メーカーである。米国子会社オーソデベロップメント(ODEV)社製品を主力として、商社機能と開発主導型メーカー機能を融合した独自のビジネスモデルを展開している。
22年3月期の売上構成比(収益認識会計基準適用に伴う売上控除前ベース)は、日本が65%(人工関節25%、骨接合材料21%、脊椎固定器具16%、人工骨・その他2%)、米国が37%(人工関節37%、脊椎固定器具0%)だった。自社製品比率は80.5%(21年3月期は79.9%)だった。営業利益構成比(調整前)は日本が69%、米国が31%だった。
収益面の特性として、医療機器償還価格の影響や為替変動の影響を受けるほか、整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があるため、業績も下期の構成比が高い特性があるとしている。
なお22年1月に筆頭株主が異動した。日本特殊陶業が保有する株式を三井化学に譲渡(手続として売り出しによる譲渡)し、三井化学が筆頭株主となった。日本特殊陶業との資本業務提携を解消し、新たに三井化学と資本業務提携した。
■新中期経営計画「MODE2023」
中期経営計画MODE2023では、目標値に24年3月期売上高220億円(日本90億円、米国・オーストラリア132億円)、営業利益35億円、経常利益34億円、親会社株主帰属当期純利益23億円、ROE(自己資本利益率)10.0%、ROIC(投下資本利益率)9.0%を掲げている。想定為替レートは1ドル=108円である。また10年後の目指す姿として、日本内資企業で売上高首位、世界整形外科市場で15位以内を目指すとしている。
中期重点施策として海外ビジネスの拡大、開発・調達力の強化、人材・組織の専門性強化、デジタル化を推進する。そして利益の伴った持続的な成長を実現するとしている。
海外ビジネスの拡大は、米国では販売体制強化と人工関節分野新製品導入による2桁成長を目指す。中国では合弁会社設立によるODEV社製品の輸入販売拡大と中国現地生産品の製造・販売開始を目指す。オーストラリアではODEV社製人工関節製品の販売を開始し、症例実績積み上げを推進する。
開発・調達力の強化は、ODEV社との日米共同開発による適応症例拡大に向けたインプラント開発、および新素材インプラントや手術支援システムなど外部調達によるビジネス拡大を目指す。
21年3月にはODEV社が中国WASTONと、中国現地生産品の製造・販売を目的とした合弁会社を設立した。21年5月にはODEV社が米国THINK社と共同で、米ODEV社の人工関節製品を用いた人工関節全置換手術を、THINK社の手術支援ロボットシステムを用いて行うことができるようにした。
22年7月には、米ODEV社製造の人工股関節新製品「Promontoryヒップシステム」の日本における薬事承認を取得、米ODEV社製造の脊椎ケージ「Vusion Ti3D ARCケージ」の日本における薬事承認を取得した。
■SDGsへの取り組み強化
またSDGsへの取り組みも推進している。22年3月にはTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)への賛同を表明するとともに、同提言に賛同する企業や金融機関からなるTCFDコンソーシアムに参画した。
22年6月には国際連合が提唱する「国連グローバル・コンパクト(UNGC)」に署名し、参加企業として登録された。併せて、UNGCに署名している日本企業などで構成される「グローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン」に加入した。
■23年3月期1Q減益だが、通期営業・経常増益予想据え置き
23年3月期の連結業績予想は、売上高が22年3月期比14.6%増の220億円、営業利益が5.2%増の28億円、経常利益が4.2%増の27億円、親会社株主帰属当期純利益が特別利益の一巡で13.4%減の18億50百万円としている。想定為替レートは1米ドル=128円00銭(22年3月期実績は1米ドル=112円88銭)で、為替感応度(1円の変動による営業利益への影響額)は18百万円としている。配当予想は1円増配の13円(期末一括)としている。連続増配予想である。
医療機器類の分野別売上高の計画(収益認識会計基準適用に伴う売上控除前ベースで、日本国内は6.4%増の132億円、米国は28.7%増の91億円、売上控除は3億円)は、人工関節分野が合計19.0%増の140億円(日本が3.8%増の49億円、米国が29.2%増の91億円)、骨接合材料分野(日本)が8.6%増の44億69百万円、脊椎固定器具分野が合計9.8%増の34億59百万円(日本が10.7%増の34億59百万円、米国が0百万円)、人工骨・その他分野(日本)が17.0%減の3億72百万円としている。自社製品比率の計画は81.6%(22年3月期は80.5%)としている。
第1四半期は、売上高が前年同期比10.8%増の50億27百万円、営業利益が10.1%減の4億98百万円、経常利益が10.7%減の4億83百万円、そして親会社株主帰属四半期純利益が7.4%減の3億36百万円だった。増収ながら減益だった。
セグメント別(調整前)に見ると、日本国内は売上高が7.7%増の29億33百万円で営業利益が22.6%減の2億55百万円、そして米国は売上高が12.3%増の29億49百万円で営業利益が14.6%減の2億06百万円だった。
売上面は、日本国内ではコロナ禍の影響が和らぎ、症例数が回復基調となった。米国では症例単価下落の影響によりUSドルベースの外部顧客への売上高は1.6%減収だったが、為替の円安により円換算後では大幅増収だった。利益面は、為替の円安や日本国内における償還価格改訂の影響などで売上原価率が1.4ポイント上昇し、円安に伴う米国での費用の増加で販管費比率が0.9ポイント上昇した。
医療機器類の分野別売上高は、人工関節分野が合計11.5%増の32億22百万円(日本国内が4.8%増の11億34百万円、米国が15.5%増の20億87百万円)、骨接合材料分野(日本国内)が10.7%増の9億60百万円、脊椎固定器具分野が合計10.2%増の8億27百万円(日本国内が10.5%増の8億20百万円、米国が18.0%減の6百万円)、その他(日本国内)が4.7%減の87百万円だった。
通期予想は据え置いた。為替の円安影響、日本国内における償還価格引き下げ、米国販売増加に伴う支払手数料の増加、事業活動回復に伴う販管費の増加、減価償却費の増加などが利益押し下げ要因となるが、コロナ禍の影響が和らいで日本国内および米国での症例数が増加し、さらに自社製品比率の上昇や医療工具コストの削減なども寄与して増収、営業・経常増益予想としている。
第1四半期が減益となり、通期予想に対する進捗率も売上高が22.9%、営業利益が17.8%、経常利益が17.9%、親会社株主帰属当期純利益が18.2%とやや低水準の形だが、整形外科医療機器の販売は下期が繁忙期となる傾向があり、業績も下期の構成比が高い季節特性がある。通期ベースで収益拡大基調を期待したい。
■株価は売られ過ぎ感
株価は年初来安値圏で軟調展開だが売られ過ぎ感を強めている。調整一巡して出直りを期待したい。9月13日の終値は1289円、今期予想連結PER(会社予想の連結EPS70円12銭で算出)は約18倍、今期予想配当利回り(会社予想の13円で算出)は約1.0%、前期実績連結PBR(前期実績の連結BPS810円59銭で算出)は約1.6倍、時価総額は約341億円である。(日本インタビュ新聞社アナリスト水田雅展)