■ポエック (TYO:9264)の事業戦略
1. SWOT分析と同社グループの成長戦略
同社グループは、必要な技術や製造権、営業権、生産力、販売網、顧客ベースをM&Aにより獲得して業容を拡大してきた。
その事業戦略に、SWOT分析のフレームワークを当てはめてみる。
SWOT分析で分類する要素は、内部環境の「Strength(強み)」と「Weakness(弱み)」、外部環境の「Opportunity(機会)」と「Threat(脅威)」である。
外部環境の事業機会にチャンスを見つけ、脅威を回避、対処しながら、内部環境の自社の強みを発揮し、弱みを是正して目標を達成する。
内部環境におけるプラス要因(強み)は、技術などの機能を得るための積極的なM&A戦略、ポンプの専門家集団、経験豊富な技術者とノウハウを有すること、中国地方におけるシェア率の高さ、組織的なメンテナンス体制、革新的な環境・防災機器の開発が挙げられる。
マイナス要因(弱み)は、中国地方以外でのプレゼンスが低いこと、グループ企業間の連携が不十分であることが言える。
外部環境における、プラス要因(機会)は、後継者難などから身売り企業の増加、IoTの普及とDXの推進、気候変動問題による河川の氾濫、炭素社会から水素社会への移行、漁獲量の減少と養殖業の発展がある。
マイナス要因(脅威)は、コロナ禍による影響、半導体不足と仕入商品の調達難、原材料高と物流費の上昇、インフレ高騰と金利上昇、予想される世界経済の後退が挙げられる。
2. M&Aによる既存市場の商圏拡大
同社の成長戦略は、既存事業のオーガニック成長にM&Aによる成長を上乗せするというものである。
オーガニック成長では、2019年12月に買収した、関東に拠点を置く協立電機工業(神奈川県茅ヶ崎市)による商圏拡大への寄与が期待される。
同社の強みは、約50年にわたるポンプに関する経験とノウハウを持つ技術者、組織的なメンテナンス体制と中国地方において高いシェア率を有することなどがある。
弱みは、中国地方以外でのプレゼンスが低いことである。
また、これまでグループ各社が個別に目標を掲げるなど、グループ企業間の連携及びシナジーが強くなかった。
そこでグループ企業幹部の交流と情報共有や協業により弱みを是正し、事業機会の創出に乗り出した。
ポンプなどの水処理機器の卸売市場規模は約3,000億円、メンテナンスはその10分の1の約300億円と同社は見ている。
同社グループの環境・エネルギー事業の売上高は3,184百万円程度だ。
市場の地域別割合は、東京を含む関東が約40%、中部が15~20%、関西が15~20%、中国で5%、四国が2~3%、九州が10%程度であると想定している。
市場全体は成熟しているものの、同社グループの強みを生かして中国地方以外の市場開拓を加速する。
中長期的に市場シェアの10%、年商300億円の獲得を目指す。
ストック型の保守メンテナンスをベースに更新需要を獲得する。
同業他社は、従業員が4~5人の小規模な家族経営の企業が多く、同社グループの強みが生かせる余地は大きい。
3. M&Aなどによる新市場の機会獲得
社会や市場の変化などにより、事業機会とリスクが生まれる。
同社グループは自社の経営リソースや強みだけで不十分と認識する場合は、M&Aにより必要とされる機能を得て事業機会を獲得する。
今後における社会や市場に大改革をもたらすテーマとして、「脱炭素及び水素社会への移行」「カーボンニュートラルの実現と気候変動問題」「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」などが挙げられる。
a) 「SEAWALL」を河川用途に拡販
景観配慮型防潮壁「SEAWALL」は当初港湾で採用されたが、今後は河川に設置される需要が増加することが見込まれる。
「SEAWALL」は、高い強度を持った防潮壁用の枠付きアクリル製透明窓である。
防潮壁に透明窓を設けることで津波や高潮の災害時に防潮壁の向こう側の様子を伝えて安全をより確かなものにし、防潮堤の設置により損なわれる地域住民の生活環境の改善に役立つ。
2011年の東日本大震災による津波被害の発生後、防潮堤に求められる必要天端高の見直しがなされた。
豪雨災害は、近年増加傾向にある。
気象庁の観測データによると、1日の降水量が200ミリ以上の大雨を観測した日数は、統計を開始した1901年からの30年間と直近の30年間を比べると約1.6倍に増加したと言う。
2021年8月には九州北部地方で線状降水帯が発生し、24時間降水量が多いところで400ミリを超える大雨となった。
佐賀県嬉野市では、24時間の降水量が555.5ミリと観測史上1位の値を更新した。
佐賀など6県にある計14河川で氾濫が確認された。
「SEAWALL」は、岡山県津山市の河川に設置された実績がある。
現在多くの引き合いが寄せられており、今後は見える防潮壁の河川における設置の増加が見込まれる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
1. SWOT分析と同社グループの成長戦略
同社グループは、必要な技術や製造権、営業権、生産力、販売網、顧客ベースをM&Aにより獲得して業容を拡大してきた。
その事業戦略に、SWOT分析のフレームワークを当てはめてみる。
SWOT分析で分類する要素は、内部環境の「Strength(強み)」と「Weakness(弱み)」、外部環境の「Opportunity(機会)」と「Threat(脅威)」である。
外部環境の事業機会にチャンスを見つけ、脅威を回避、対処しながら、内部環境の自社の強みを発揮し、弱みを是正して目標を達成する。
内部環境におけるプラス要因(強み)は、技術などの機能を得るための積極的なM&A戦略、ポンプの専門家集団、経験豊富な技術者とノウハウを有すること、中国地方におけるシェア率の高さ、組織的なメンテナンス体制、革新的な環境・防災機器の開発が挙げられる。
マイナス要因(弱み)は、中国地方以外でのプレゼンスが低いこと、グループ企業間の連携が不十分であることが言える。
外部環境における、プラス要因(機会)は、後継者難などから身売り企業の増加、IoTの普及とDXの推進、気候変動問題による河川の氾濫、炭素社会から水素社会への移行、漁獲量の減少と養殖業の発展がある。
マイナス要因(脅威)は、コロナ禍による影響、半導体不足と仕入商品の調達難、原材料高と物流費の上昇、インフレ高騰と金利上昇、予想される世界経済の後退が挙げられる。
2. M&Aによる既存市場の商圏拡大
同社の成長戦略は、既存事業のオーガニック成長にM&Aによる成長を上乗せするというものである。
オーガニック成長では、2019年12月に買収した、関東に拠点を置く協立電機工業(神奈川県茅ヶ崎市)による商圏拡大への寄与が期待される。
同社の強みは、約50年にわたるポンプに関する経験とノウハウを持つ技術者、組織的なメンテナンス体制と中国地方において高いシェア率を有することなどがある。
弱みは、中国地方以外でのプレゼンスが低いことである。
また、これまでグループ各社が個別に目標を掲げるなど、グループ企業間の連携及びシナジーが強くなかった。
そこでグループ企業幹部の交流と情報共有や協業により弱みを是正し、事業機会の創出に乗り出した。
ポンプなどの水処理機器の卸売市場規模は約3,000億円、メンテナンスはその10分の1の約300億円と同社は見ている。
同社グループの環境・エネルギー事業の売上高は3,184百万円程度だ。
市場の地域別割合は、東京を含む関東が約40%、中部が15~20%、関西が15~20%、中国で5%、四国が2~3%、九州が10%程度であると想定している。
市場全体は成熟しているものの、同社グループの強みを生かして中国地方以外の市場開拓を加速する。
中長期的に市場シェアの10%、年商300億円の獲得を目指す。
ストック型の保守メンテナンスをベースに更新需要を獲得する。
同業他社は、従業員が4~5人の小規模な家族経営の企業が多く、同社グループの強みが生かせる余地は大きい。
3. M&Aなどによる新市場の機会獲得
社会や市場の変化などにより、事業機会とリスクが生まれる。
同社グループは自社の経営リソースや強みだけで不十分と認識する場合は、M&Aにより必要とされる機能を得て事業機会を獲得する。
今後における社会や市場に大改革をもたらすテーマとして、「脱炭素及び水素社会への移行」「カーボンニュートラルの実現と気候変動問題」「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」などが挙げられる。
a) 「SEAWALL」を河川用途に拡販
景観配慮型防潮壁「SEAWALL」は当初港湾で採用されたが、今後は河川に設置される需要が増加することが見込まれる。
「SEAWALL」は、高い強度を持った防潮壁用の枠付きアクリル製透明窓である。
防潮壁に透明窓を設けることで津波や高潮の災害時に防潮壁の向こう側の様子を伝えて安全をより確かなものにし、防潮堤の設置により損なわれる地域住民の生活環境の改善に役立つ。
2011年の東日本大震災による津波被害の発生後、防潮堤に求められる必要天端高の見直しがなされた。
豪雨災害は、近年増加傾向にある。
気象庁の観測データによると、1日の降水量が200ミリ以上の大雨を観測した日数は、統計を開始した1901年からの30年間と直近の30年間を比べると約1.6倍に増加したと言う。
2021年8月には九州北部地方で線状降水帯が発生し、24時間降水量が多いところで400ミリを超える大雨となった。
佐賀県嬉野市では、24時間の降水量が555.5ミリと観測史上1位の値を更新した。
佐賀など6県にある計14河川で氾濫が確認された。
「SEAWALL」は、岡山県津山市の河川に設置された実績がある。
現在多くの引き合いが寄せられており、今後は見える防潮壁の河川における設置の増加が見込まれる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)