*15:41JST インテリックス Research Memo(11):東証プライム市場の上場維持基準をクリアしていく方針
■今後の見通し
4. プライム市場の上場維持基準適合に向けた取り組み
(1) 上場維持基準の適合に向けた基本方針
2022年4月の東京証券取引所の市場区分見直しにおいて、インテリックス (TYO:8940)はプライム市場に移行した。
ただ、2022年5月期末時点におけるプライム市場の上場維持基準に対する適合状況では、流通株式数、流通株式比率でクリアしたものの、流通株式時価総額が30.03億円と基準の100億円を大きく下回る状況となっており、現時点でもその状況に変わりはない。
同社は上場維持基準を充足するための計画書(2027年5月期までを計画期間と定める)を2021年12月に東証に提出し、2022年8月には同計画が着実に進んでいるとの進捗状況を発表した。
流通株式時価総額100億円に向けた基本方針として、同社は以下の3点を掲げている。
a) 新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書及び中期経営計画に沿った業績向上
「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」及び「中期経営計画」において、同社は省エネ型リノベーション「エコキューブ」の普及拡大と直販プラットフォーム「FLIE」の育成、並びにソリューション事業の着実な成長に取り組むことで安定した事業ポートフォリオを構築し、収益の持続的成長を目指す方針を打ち出した。
定量的な数値目標として、2027年5月期に経常利益32億円、親会社株主に帰属する当期純利益22億円、純資産175億円、ROE13%を設定した。
2021年5月期実績と比較すると、経常利益で1.7倍、親会社株主に帰属する当期純利益と純資産でおおよそ2倍の水準となる。
収益目標が達成されれば、流通株式時価総額で100億円をクリアする可能性も高くなる。
同社の2021年5月期までの過去5期間の平均予想PER9.0倍を前提とすれば、2027年5月期の親会社株主に帰属する当期純利益で換算した流通株式時価総額は103億円となるためだ※。
また、PBR(1株当たり純資産倍率)で見た場合、現状は0.4倍と解散価値を下回る評価となっている。
東証プライム市場の不動産セクター平均が1.2倍、リノベーションマンションの競合で売上高もほぼ同規模水準であるスター・マイカ・ホールディングス (TYO:2975)が1.1倍の水準で評価されていることを考えると評価不足は否めない。
※9.0倍×22億円×52.0%=103億円。
2022年12月時点の東証プライム市場の不動産セクター単純平均PER11倍まで評価されれば126億円となる。
この要因として、リノベーションマンション市場の競争激化によって同社の業績がここ数年伸び悩み、成長期待が剥がれてしまったことにあると弊社では考えている。
逆に言えば、業績が成長軌道に復帰する道筋が確認されれば、PBRも1倍以上に評価される可能性が高まることになる。
2027年5月期に純資産が175億円まで拡大し、PBRで1.1倍程度に評価されれば流通株式時価総額で100億円となる※。
2023年5月期の業績は先行投資負担により減益となるが、2024年5月期以降「エコキューブ」の販売拡大により利益成長の蓋然性が高まってくれば、現在割安に評価されているPBRの水準訂正が進むものと弊社では予想している。
※1.1倍×175億円×52.0%=100億円。
b) コーポレートガバナンスの充実
同社は持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために、コーポレートガバナンスの強化を経営の重要課題として位置付けている。
特に、2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードにおいて、プライム市場に適用される原則を中心に、適用に向けて積極的に取り組むことで企業価値の向上を目指していく。
現在は、2024年5月期を目標にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の開示及びCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)の回答に向けたプロジェクトを推進しているほか、人的資源経営の実践に向けた方針及び取り組みの検討を開始している。
c) IR活動の強化
同社は2023年5月期からスタートした5ヶ年の中期経営計画発表を皮切りに、積極的なIR情報の発信及び中長期的視点での投資家とのコミュニケーションを図ることで、企業価値の向上に取り組んでいる。
特に、「エコキューブ」によって脱炭素化社会に貢献するサステナブル企業であることの認知・理解を促し、中長期的な運用方針を持つ機関投資家や個人投資家などへの訴求を図っていく考えだ。
また、流動性の拡大に向け株主還元策の検討も進めていく。
(2) 上場維持基準の経過措置終了について
2023年1月25日付で東京証券取引所より、上場維持基準に関する経過措置を2025年3月で終了する案が発表された。
2022年4月の市場区分再編によって、東証第1部上場企業のうちプライム市場の上場基準を満たしていない企業でも、経過措置によってプライム市場を選択できるようにしたが、経過措置の期限については未定であった。
今回の発表では、3月期決算会社の場合、2025年3月末を経過措置終了日とし、その後1年以内(改善期間)に上場基準を満たさなかった場合は、2026年4月から監理銘柄・整理銘柄に指定されることになる(原則6ヶ月間で期間中に基準をクリアすれば指定解除、できなければ上場廃止となる)。
ただし、上場維持基準適合計画書において、基準日を超える期限の計画を開示している企業については、計画期限における適合状況を確認するまで監理銘柄指定を継続することになる(計画期限以降、6ヶ月で上場廃止か指定解除)。
また、今回の案が正式に決定し制度化された場合には、救済措置として、プライム市場上場企業で旧市場第一部に上場していた企業については改めてスタンダード市場を選択する機会を設けることにした(審査なし、施行日から6ヶ月間)。
同社の場合、計画書で上場維持基準クリアのための設定期間を2027年5月期としているため、経過措置終了日は2025年5月末となり、2027年11月までに上場維持基準をクリアできなければ上場廃止となるが、制度施行日から6ヶ月内であればスタンダード市場へ移行することも可能となる。
どちらを選択するかは、今後1年程度の業績状況や株価動向を睨みながら判断していくものと思われる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
4. プライム市場の上場維持基準適合に向けた取り組み
(1) 上場維持基準の適合に向けた基本方針
2022年4月の東京証券取引所の市場区分見直しにおいて、インテリックス (TYO:8940)はプライム市場に移行した。
ただ、2022年5月期末時点におけるプライム市場の上場維持基準に対する適合状況では、流通株式数、流通株式比率でクリアしたものの、流通株式時価総額が30.03億円と基準の100億円を大きく下回る状況となっており、現時点でもその状況に変わりはない。
同社は上場維持基準を充足するための計画書(2027年5月期までを計画期間と定める)を2021年12月に東証に提出し、2022年8月には同計画が着実に進んでいるとの進捗状況を発表した。
流通株式時価総額100億円に向けた基本方針として、同社は以下の3点を掲げている。
a) 新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書及び中期経営計画に沿った業績向上
「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」及び「中期経営計画」において、同社は省エネ型リノベーション「エコキューブ」の普及拡大と直販プラットフォーム「FLIE」の育成、並びにソリューション事業の着実な成長に取り組むことで安定した事業ポートフォリオを構築し、収益の持続的成長を目指す方針を打ち出した。
定量的な数値目標として、2027年5月期に経常利益32億円、親会社株主に帰属する当期純利益22億円、純資産175億円、ROE13%を設定した。
2021年5月期実績と比較すると、経常利益で1.7倍、親会社株主に帰属する当期純利益と純資産でおおよそ2倍の水準となる。
収益目標が達成されれば、流通株式時価総額で100億円をクリアする可能性も高くなる。
同社の2021年5月期までの過去5期間の平均予想PER9.0倍を前提とすれば、2027年5月期の親会社株主に帰属する当期純利益で換算した流通株式時価総額は103億円となるためだ※。
また、PBR(1株当たり純資産倍率)で見た場合、現状は0.4倍と解散価値を下回る評価となっている。
東証プライム市場の不動産セクター平均が1.2倍、リノベーションマンションの競合で売上高もほぼ同規模水準であるスター・マイカ・ホールディングス (TYO:2975)が1.1倍の水準で評価されていることを考えると評価不足は否めない。
※9.0倍×22億円×52.0%=103億円。
2022年12月時点の東証プライム市場の不動産セクター単純平均PER11倍まで評価されれば126億円となる。
この要因として、リノベーションマンション市場の競争激化によって同社の業績がここ数年伸び悩み、成長期待が剥がれてしまったことにあると弊社では考えている。
逆に言えば、業績が成長軌道に復帰する道筋が確認されれば、PBRも1倍以上に評価される可能性が高まることになる。
2027年5月期に純資産が175億円まで拡大し、PBRで1.1倍程度に評価されれば流通株式時価総額で100億円となる※。
2023年5月期の業績は先行投資負担により減益となるが、2024年5月期以降「エコキューブ」の販売拡大により利益成長の蓋然性が高まってくれば、現在割安に評価されているPBRの水準訂正が進むものと弊社では予想している。
※1.1倍×175億円×52.0%=100億円。
b) コーポレートガバナンスの充実
同社は持続的な成長と中長期的な企業価値向上のために、コーポレートガバナンスの強化を経営の重要課題として位置付けている。
特に、2021年6月に改訂されたコーポレートガバナンス・コードにおいて、プライム市場に適用される原則を中心に、適用に向けて積極的に取り組むことで企業価値の向上を目指していく。
現在は、2024年5月期を目標にTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)の開示及びCDP(カーボン・ディスクロージャー・プロジェクト)の回答に向けたプロジェクトを推進しているほか、人的資源経営の実践に向けた方針及び取り組みの検討を開始している。
c) IR活動の強化
同社は2023年5月期からスタートした5ヶ年の中期経営計画発表を皮切りに、積極的なIR情報の発信及び中長期的視点での投資家とのコミュニケーションを図ることで、企業価値の向上に取り組んでいる。
特に、「エコキューブ」によって脱炭素化社会に貢献するサステナブル企業であることの認知・理解を促し、中長期的な運用方針を持つ機関投資家や個人投資家などへの訴求を図っていく考えだ。
また、流動性の拡大に向け株主還元策の検討も進めていく。
(2) 上場維持基準の経過措置終了について
2023年1月25日付で東京証券取引所より、上場維持基準に関する経過措置を2025年3月で終了する案が発表された。
2022年4月の市場区分再編によって、東証第1部上場企業のうちプライム市場の上場基準を満たしていない企業でも、経過措置によってプライム市場を選択できるようにしたが、経過措置の期限については未定であった。
今回の発表では、3月期決算会社の場合、2025年3月末を経過措置終了日とし、その後1年以内(改善期間)に上場基準を満たさなかった場合は、2026年4月から監理銘柄・整理銘柄に指定されることになる(原則6ヶ月間で期間中に基準をクリアすれば指定解除、できなければ上場廃止となる)。
ただし、上場維持基準適合計画書において、基準日を超える期限の計画を開示している企業については、計画期限における適合状況を確認するまで監理銘柄指定を継続することになる(計画期限以降、6ヶ月で上場廃止か指定解除)。
また、今回の案が正式に決定し制度化された場合には、救済措置として、プライム市場上場企業で旧市場第一部に上場していた企業については改めてスタンダード市場を選択する機会を設けることにした(審査なし、施行日から6ヶ月間)。
同社の場合、計画書で上場維持基準クリアのための設定期間を2027年5月期としているため、経過措置終了日は2025年5月末となり、2027年11月までに上場維持基準をクリアできなければ上場廃止となるが、制度施行日から6ヶ月内であればスタンダード市場へ移行することも可能となる。
どちらを選択するかは、今後1年程度の業績状況や株価動向を睨みながら判断していくものと思われる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)