[ワシントン 30日 ロイター] - 米商務省が30日発表した8月の個人消費支出(PCE)は前月より0.4%増えた。市場予想の0.2%増を上回った。7月は0.2%減っていた。
インフレ圧力が8月も高まっていたことが示され、連邦準備理事会(FRB)が積極的な利上げを継続する根拠になる可能性がある。賃金の伸びが鈍化する中、物価上昇に対応するために消費者が貯蓄を取り崩していることも判明。FRBの積極的な金融引き締めと相まって、米経済が来年に景気後退(リセッション)に向かう可能性が高まっている。
BMOキャピタル・マーケッツ(トロント)のシニア・エコノミスト、サル・グアティエリ氏は「来年上半期に予想される緩やかな景気後退に向け、痛みは一段と増大する」とし、「最終的にはインフレ低下につながるが、そうなるまでにFRBはあと数回の利上げを行う必要がある」と述べた。
支出が増えたのは、一般家庭の光熱費が料金上昇の影響を受けたことも一因。
8月のサービス支出は0.8%増加。7月は0.1%増えていた。ガソリン価格が下がり、旅行や外食に使える資金が増えたことでサービス支出が押し上げられた。一方、娯楽サービスへの支出は減少し、消費者が裁量支出を控えていることが示された。
8月のモノへの支出は0.5%減。7月は0.7%減っていた。ガソリン価格下落に伴い、ガソリンスタンドでの支出が減少。家具や耐久消費財のほか、娯楽関連商品への支出も減少し、裁量支出が手控えられていることがここでも示された。ただ、自動車への支出は全般的に増加した。
8月のPCE価格指数は0.3%上昇。7月は0.1%低下していた。
8月の前年同月比は6.2%上昇し、伸び率は7月の6.4%から縮小した。
変動の大きい食品とエネルギーを除いたコアPCE価格指数は8月に前月比0.6%上昇。7月は横ばいだった。
8月の前年同月比は4.9%上昇し、7月は4.7%上がっていた。
FRBは物価の指標として、PCE価格指数に注目している。
インフレ調整後の個人消費支出は8月に前月比0.1%増。7月は0.1%減だった。
個人所得は8月に0.3%増で、伸び率は7月と同じだった。
賃金は0.3%増。7月は0.8%増だった。
8月の貯蓄率は3.5%。7月は当初発表の5.0%から3.5%に下方修正された。貯蓄率は2021年3月に26.3%に上昇。現在は07─09年の景気後退時と同程度の水準に戻っている。
JPモルガンのエコノミスト、ダニエル・シルバー氏は「消費者は新型コロナウイルス感染拡大初期に積み上げた貯蓄を消費に回している」と指摘。ムーディーズ・アナリティックスのシニアエコノミスト、スコット・ホイト氏は、「金利上昇で新規借り入れコストが上昇し、ローンで購入されることが多い高額商品への支出が鈍化する」との見方を示した。