[北京 18日 ロイター] - 中国国家統計局が18日発表した第1・四半期の国内総生産(GDP)は前年比4.8%増加し、市場予想を上回った。1─2月の中国経済が予想外に好調だった一方、3月以降は新型コロナウイルス感染対策の広範な規制やウクライナ戦争が打撃となり、消費や不動産市場、輸出が落ち込みつつあり、今後数カ月で景気が大幅に減速するリスクを示唆している。
ロイターがまとめたGDP統計のアナリスト予想は4.4%増だった。2021年第4・四半期は4.0%増加していた。
前期比の伸び率は1.3%で、こちらもアナリスト予想の0.6%を上回った。第4・四半期は1.5%に改定された。
ただ、キャピタル・エコノミクスと野村のアナリストは、第1・四半期GDP統計の数値などは経済の減速傾向を過小評価している可能性があるとする。
キャピタル・エコノミクスは第1・四半期のサービス生産指数の伸びがGDP統計のサービス部門の伸びと合致しないと指摘。野村は鉱工業生産といった3月指標の一部が鉱工業部門の活動を示すその他多くの主要指標と一致していないとしている。
また、上海など中国各地でコロナ対策の規制が長引く中、専門家は4月の経済指標はさらに悪化する可能性が高いとみる。
INGの中国担当チーフエコノミスト、アイリス・パン氏は「コロナ対策のロックダウン(都市封鎖)によって生活必需品の供給が遅れているだけでなく、既に労働市場に影響を与えているサービス業や製造業の先行き不透明感も増しているため、ロックダウンの影響がさらに大きくなることは必至だ」と指摘。財政および金融政策による支援はロックダウンでGDPが受けた打撃を完全に相殺するには不十分で、財政支援が遅れる場合には同社のGDP予想をさらに修正する必要が出てくると語った。
また、中原銀行のチーフエコノミスト、Wang Jun氏は、第1・四半期GDPは前四半期から伸びが加速したが、政府が掲げる今年の成長目標の5.5%には程遠いと指摘。3月はサービス消費の低迷が示すように、コロナ規制の景気への打撃が大きかったとの見方を示した。第2・四半期については、より大きな圧力にさらされると予想。景気減速の度合いは、政府がコロナ対策を柔軟に調整するかどうかとマクロ政策を通じて景気支援を拡大するかどうかに左右されると指摘した。
<小売売上高が減少 失業率悪化>
この日発表された3月の小売売上高は前年比3.5%減少と、1─2月の6.7%増から減少に転じ、市場予想の1.6%減よりも大幅な落ち込みとなった。国内のコロナ感染拡大と一部都市のロックダウンが響いた。
3月は通常、工場が旧正月の連休明けに雇用を再開するなど労働市場が堅調な月だが、この日発表された3月の全国調査ベース失業率は5.8%と、20年5月以来の高水準となり、2月の5.5%から悪化した。主要31都市の調査ベース失業率は6.0%と過去最高に達した。
合わせて発表された3月の鉱工業生産は前年比5.0%増と、伸び率は1─2月の7.5%から鈍化したが、ロイターがまとめた市場予想の4.5%は上回った。
第1・四半期の固定資産投資は前年同期比9.3%増。伸びは1─2月の12.2%から鈍化したが、市場予想の8.5%を上回った。
ロイターが算出した3月の住宅販売(金額ベース)は前年比26.17%減と、2020年1─2月以来の大幅減を記録。不動産市場がさらに減速する兆しを示した。
<コロナ規制が打撃に>
ピンポイント・アセット・マネジメント(保銀資産管理)のチーフエコノミスト、張智威氏は、ロックダウンによって4月に景気が一段と減速した可能性が高いと指摘。「政府は経済成長と感染拡大抑制のバランスをどのように取るかというジレンマに直面している。上海のような大都市を封鎖するのは代償が大きい。その代償は今後数カ月でさらに表面化するだろう」と語った。
国家統計局によると、最終消費の第1・四半期GDP伸び率への寄与率は69.4%で、前四半期の85.3%から低下した。純輸出の寄与率は3.7%で、前四半期の26.4%から大幅に低下し、成長をけん引してきた輸出の減速を鮮明にした。
国家統計局の付凌暉報道官は、GDP発表後の会見で、景気下押し圧力の高まりを認めた上で、「経済のファンダメンタルズ安定化に向けてマクロ政策の実行を強化し、今年の目標達成に取り組む」と語った。
また、今年の中国経済は回復トレンドを維持する公算が大きいと発言。新型コロナを封じ込め、消費者物価の上昇を管理することが可能だとの認識も示した。