[東京 29日 ロイター] - 政府は29日、「未来投資会議」でポスト5Gと呼ばれる次々世代通信技術で日本企業の競争力を確保する方策を議論した。次世代の5G(第5世代通信技術)では中国勢が世界の先端を走っており、巻き返しのため政府として国家プロジェクトを立ち上げる方針を示した。地銀・バス会社の再編や高齢者向け自動車運転技術の開発などと共に、来夏に取りまとめる成長戦略に盛り込む方針だ。
<自動車・産業機械メーカーとも連携、最先端半導体技術の国内確保目指す>
安倍晋三首相は同会議で「ポスト5G技術による通信システムは、自動運転などでわが国の競争力の核となる技術だ」として、「わが国の技術を結集した国家プロジェクトの検討を梶山弘志経済産業相らに指示した」ことを明らかにした。
会議後会見した西村康稔経済再生相は、ポスト5G技術の開発では、国内の半導体メーカーに加え、日本勢が競争力を持つ自動車や産業機械などの完成品メーカーとも協力していくと述べた。
通信技術に不可欠な最先端半導体は「国内に製造技術がなく、セキュリティー面で脆弱な状態」と指摘。日本と友好的な海外諸国の半導体メーカーとの協業も視野に、「国内での最先端半導体製造技術の確保を目指す」と強調した。
現在、スマートフォンなど携帯電話用の半導体や、通信基地局の世界市場は、米クアルコム (O:QCOM)やサムスン電子 (KS:005930)、華為技術(ファーウェイ)[HWT.UL]やエリクソン (ST:ERICb)などの海外メーカーが席巻しており、日本メーカーは基地局市場でNEC (T:6701)、富士通 (T:6702)がそれぞれ1%未満のシェアにとどまっている状態。微細な加工を駆使する最先端半導体の製造では台湾積体電路製造(TSMC) (TW:2330)やインテル (O:INTC)など台湾、米国のメーカーが先行しており、日本には技術がない状態だ。
しかし、半導体製造装置メーカーは日本に優位性が残されており、政府としては5Gの先の通信技術に日本勢が挽回できる余地があるとみている。5Gがもっぱら通信データの大容量化技術であるのに対して、ポスト5Gは多数同時接続やタイムラグの最小化などが特徴となるという。
今回の未来投資会議ではこのほか、1)高齢運転者向け事故対策、2)地銀・バス会社の再編を容易にするための独禁法改正、3)中小企業の生産性向上策──も議論した。
事故対策では、高齢者の自動車事故は若年層と比べて運転操作のミスが多いとの調査結果を踏まえ、衝突被害を軽減するブレーキ技術の開発などを議論。安倍首相は限定免許の導入も視野に、これら安全技術を搭載した自動車の開発の加速を目指す意向を示した。
地銀・バス会社の再編をめぐっては、人口減少による需要減が見込まれる場合、これら業態に関して共同経営(カルテル)を認める方向で独占禁止法の改訂を議論した。
中小企業に関しては、規模が小さくても設備投資や研究開発に積極的で利益率が高い企業ほど価格設定力も高いとの調査結果を踏まえ、生産性向上策を検討する。
*内容を追加しました。
(竹本能文)