[北京 19日 ロイター] - 中国人民銀行(中央銀行)の馬駿・金融政策委員は、17日に人民銀が公表した金利改革について、新たなローンプライムレート(貸出基礎金利、LPR)が中期貸出ファシリティー(MLF)の金利に連動することを明らかにした。中国国営メディアが19日に報じた。
人民銀は17日、企業の借り入れコスト押し下げや景気支援に向けた金利改革を公表し、今月からLPRの算出メカニズムを改善するとした。
アナリストは人民銀が借り入れコスト押し下げに向け、期間1年のMLF金利を現在の3.3%から引き下げる可能性があると指摘する。また、新たなLPR金利は現行水準よりも引き下げられるとみている。ただ、企業の借り入れコストがどれだけ低下するかについては見方が分かれている。
国営ラジオ(電子版)によると、馬金融政策委員は「この改革は、銀行が融資金利をLPRに連動させることを明確に義務付けており、LPRはMLF金利に連動することになる。この結果、比較的円滑な波及メカニズムが構築される」と説明。
「将来的に政策金利が低下した場合は融資金利も低下し、企業の資金調達コスト低下につながる」とした。
国内銀行は、公開市場操作金利を基に新たなLPRを算出し呈示。全国銀行間資金調達センターが8月20日から毎月20日にLPRの参照レートを公表する。
中国、香港株式市場では、企業の借り入れコスト軽減につながるとの見方が広がり、株価は上昇。しかしアナリストの間では、銀行は中小の民間企業向けの融資金利を引き続き高めに設定する可能性があり、今回の措置で実際に貸出金利が低下するとは限らないとの見方も一部にある。
ゴールドマン・サックスはリポートで「新制度自体は、貸出金利の低下を保証するものではない」と指摘する一方、「ただ、景気減速、貿易戦争リスクの高まり、指導部が金利低下を強く希望しているという現在の状況を考えると、実際の貸出金利が下がると予想する」とした。
オーストラリア・ニュージーランド・バンキング・グループは、今回の改革は、貸出金利の45ベーシスポイント(bp)押し下げに相当すると指摘。ソシエテ・ジェネラルは、LPRが10─25bp低下する可能性があるとみている。
銀行は今後、新規融資の変動融資金利を設定する際に人民銀が定める貸出基準金利ではなく、LPRを指標として利用する。
市場は、あす20日に初めて発表される参照レートに注目するとみられる。
CITIC証券の債券調査責任者、ミン・ミン氏は、20日発表の参照レートは、MLF金利との差が縮まるよう、低めに設定されると予想する。1年物LPRは、現在3.3%のMLFを101bp上回っている。
アナリストの中には、人民銀行が借り入れコスト軽減に向け、MLF1年物金利を引き下げる可能性があるとみている向きもいる。26日には、1490億元(211億5000万ドル)のMLFが満期を迎える。
OCBC銀行のエコノミスト、トミー・シー氏は、MLF金利が今後数カ月の間に低下する可能性があると指摘した。ただ、人民銀行は今回の措置に対する反応を見極めようとすると予想されることから、8月に下がることはないとみている。
<市場原理に沿った改革>
人民銀は2013年に銀行が優良企業向け融資に適用するプライムレート(最優遇貸出金利)の公表を開始。ただ、LPRは市場の需給にほとんど反応しておらず、現在の1年物は4.31%。人民銀が定める貸し出しの基準金利は期間1年が4.35%となっている。
馬氏はLPR改革は市場金利の変動をよりよく反映し、企業の資金調達コスト低下を促すことになると述べた。
人民銀行によると、市中銀行は新規の貸出金利を、LPR参照レートにスプレッドを上乗せした水準として設定する。
既存融資の条件は従来通り。
7月末時点の人民元建て融資残高は147兆元(208億7000万ドル)。野村のアナリストは、28兆元の長期住宅ローンが、新制度の対象外になると指摘した。
OCBC銀行のシー氏は、今回の措置は、金利自由化に向けて「半歩」前進だと指摘。
「現在の自由化は、貸出金利だけが対象で預金金利は手付かずだ。長期的に、預金金利設定も緩和する必要があるだろう」と述べた。
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