[ジャカルタ 2日 ロイター] - インドネシア政府は2日、来年1月1日からニッケル鉱の輸出を全面的に禁止すると発表した。当初の方針より2年前倒しする形で、国内精製の増強を促進する狙いだ。ニッケルを使う電気自動車(EV)電池の製造業育成につなげる意向もあるという。
エネルギー・鉱物資源省のアリヨノ石炭・鉱物局長は、輸出禁止はあらゆる品位のニッケル鉱が対象になり、既存の契約内容にかかわらず輸出業者は一切の積み出し停止を命じられると指摘。「だからこそ今発表して4カ月の移行期間を設ける」と記者団に述べた。
市場では既に輸出禁止が早まるとの観測が浮上していた。実際に発表されると、ロンドン金属取引所(LME)のニッケルの指標価格は一時5.3%高騰してトン当たり1万8850ドルと、ほぼ5年ぶりの高値を付けた。8月30日にも9%上がっていた。
ゴールドマン・サックスは1日付のノートで、インドネシアの輸出禁止によりLMEのニッケル価格は3カ月以内にトン当たり2万ドルに達すると予想している。
インドネシアは世界最大のニッケル鉱生産国で、業界団体によると昨年は世界全体の供給量の26%を占めた。輸出禁止は最大のニッケル鉱消費国である中国に影響を及ぼすとみられる。
中国はステンレス鋼に使うニッケル銑鉄(NPI)生産のためニッケル鉱を輸入していることから、NPIの生産に支障が出てきそうだ。
専門家は、中国企業は不足分の全量ないし一部をフィリピンからの輸入で穴埋めするだろうが、フィリピンのニッケル鉱はインドネシアに比べて品位が落ちるので、全ての需要を満たすことはできないとみている。
インドネシア政府は当初、ニッケル鉱の輸出を2022年1月から禁止すると発表していた。アリヨノ氏は、国内のニッケル資源が限られる中で精製事業の拡大を目指すために実施を早めたと説明した。
ボーキサイトと銅コンセントレートの輸出は予定通り、22年1月に禁止するという。