[ブリュッセル 19日 ロイター] - 英政府は19日、欧州連合(EU)離脱案の見直しに向けた文書を提出したが、EU内では英政府が来月17─18日のEU首脳会議に過度な期待をかけているのではないかとの懸念が浮上している。
EUは、ジョンソン英首相が交渉に時間のかかる技術的な詳細の決定を後回しにして、来月のEU首脳会議で広範な政治的合意を求めるシナリオを警戒。首相の提案を拒否すれば、EUが合意なき離脱の責任を負わされるとの懸念が浮上している。
このため、EUは技術的な詳細が重要との立場を示しており、具体的な交渉を欧州委員会に委ねている。欧州委が交渉を踏まえて来月のEU首脳会議に勧告を出す方針だが、交渉には時間がかかる。
あるEUの外交官はロイターに「(詳細を巡る)交渉は首脳会議で行うものではないと以前から主張している」とし「ジョンソン首相が首脳会議で紙切れ一枚を掲げて解決できる問題ではない」と述べた。
英政府は、離脱協定案からアイルランド国境問題の解決策「バックストップ(安全網)」を削除する必要があると主張しているが、バックストップの代替案を巡る構想は、現時点でEU側の支持が得られていない。
英政府は19日、大まかな構想をまとめた「極秘の技術的詳細」をEUと共有していると表明したが、EU側は正式な法律文書の提出を求めている。
EU議長国を務めるフィンランドのリンネ首相は18日、新たな離脱協定案の詳細をまとめた法律文書を9月末までに提出するよう英政府に要請。
フランスの外交筋は「時間がなくなりつつある」とし「10月中旬の首脳会議で直接交渉することはないだろう」と述べた。
別のEU外交筋は「欧州委員会が交渉を主導する。欧州委がアイルランドの国境問題などに対応できる技術的な専門知識を持っているからだ。欧州委が合意をまとめ、首脳会議で承認もしくは否決する。首脳会議で問題を解決することはない」と述べた。
こうした詳細と手続きを重視するEUの立場は、英政府の姿勢とは対照的だ。英政府当局者は「リスクを取り、指導力を発揮し、将来のチャンスをつかむべきだ」と発言。EUの外交官は、来月の首脳会議が決裂するのではないかと予想している。