[ワシントン/アンカラ 16日 ロイター] - トランプ米大統領は16日、ロシアがシリアのアサド政権軍を支援しても「問題はない」との考えを表明、米軍撤収の決定は「戦略的に素晴らしい」と主張した。米軍がシリアからの撤収を開始し、その空白を衝いてトルコとロシアがクルド人居住地域で勢力の拡大を図り、米共和党内からも批判が出ており、そうした批判に反論したかたちだ。
トルコはトランプ大統領がシリアからの米軍撤退を表明した後、テロ組織と見なすクルド人主体の武装勢力に対する攻撃をシリア北東部で開始。米国は過激派組織「イスラム国(IS)」掃討で親米クルド人勢力と協力してきたため、国内では共和党内からもトランプ氏がIS掃討の忠実なパートナーを見捨てたと非難する声が上がっている。
一方、シリア人権監視団(英国本部)によると、シリア政権軍はロシア軍部隊に伴われて、戦略的に重要とされる国境沿いの町・コバニに進軍した。
トランプ氏はホワイトハウスでマッタレッラ伊大統領と会談し、共同記者会見を開いた際、クルド人は「天使ではない」と言及。
その上で、ロシアを後ろ盾とするシリアのアサド政権とトルコは「戦闘でけりをつける」必要があるかもしれないと語った。
「2つの国家が土地を巡り争っていても米国には関係なく、米国の兵士が危険にさらされることはないし、さらされるべきではない」と強調した。
トランプ氏は「トルコとシリアとの国境地帯の状況は、米国にとっては戦略的に素晴らしい」と述べて、米軍撤収決定の正当性を主張。「シリアがロシアの支援を受けても問題はない」とし、「シリアとトルコは徹底的に論争を繰り広げるか、戦闘でけりをつけるかもしれない。それでも米国の兵士が殺されることはない」と続けた。
トランプ大統領は14日、トルコに対する経済制裁を発表すると同時に、トルコのエルドアン大統領と電話会談を行い、攻撃の即時停止を求めていた。
ムニューシン財務長官は16日、経済制裁に関し、トルコのエネルギー、国防両省が対象となっており、他に拡大する可能性があると述べた。
米政府はまた、トルコに攻撃作戦の即時停止を呼び掛けるため、ペンス副大統領とポンペオ国務長官を含む政府高官をトルコに派遣。トランプ氏は、ペンス氏などがエルドアン大統領と「意義のある会談」を持つと予想するとともに、会談がうまくいかなくても、米制裁と関税が「トルコ経済にとって壊滅的なものになる」と警告した。
エルドアン氏の報道官は、トルコ外務省は米制裁への報復措置を準備していると述べた。
一方、米下院は、トランプ大統領によるシリアからの米軍撤収決定に反対する超党派の決議案を354対60の賛成多数で可決した。
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