[東京 16日 ロイター] - 菅義偉新内閣が16日に発足した。菅新首相は官房長官として支えた安倍晋三内閣の政策を踏襲する方針を表明、財務相や外相など主要閣僚を再任した。布陣に目新しさがないとの見方も出る中、規制改革やデジタル庁の新設、地方経済の活性化など独自色もにじませた。
<「まさしく継承内閣」>
菅氏は7年8カ月の歴代最長政権となった第2次安倍政権からバトンを引き継ぐ。同日夜に初めて開いた会見では、「安倍晋三政権の取り組みを継承して前に進めることが私の使命だ」と改めて表明した。新型コロナウイルス対策を最優先で進めるとし、国民全員にワクチンを確保することなど、安倍前首相が退任前にまとめた政策に取り組む考えを示した。
自身の後任となる官房長官には、かつて官房副長官を務めた加藤勝信厚生労働相を充てた。麻生太郎副総理兼財務相、西村康稔経済再生・経済財政担当相、梶山弘志経済産業相、茂木敏充外相ら主要閣僚を軒並み再任させ、河野太郎防衛相を行政改革・規制改革担当相に、武田良太国家公安委員長を総務相に横滑りさせた。安倍首相の実弟の岸信夫元外務副大臣を防衛相に起用した。
東京を拠点に日本の政治や経済を長く見てきた運用会社ウィズダムツリー・ジャパンのイェスパー・コールCEO(最高経営責任者)は、「まさしく(安倍政権の)継承内閣」と指摘。「実行性はあるが、刺激は感じられない」と話す。
<目玉は規制改革、政権のど真ん中>
一方、菅新首相は官房長官時代に取り組んだ縦割り行政の改革を進め、各省庁から人材を集めてデジタル庁を設置することなど独自の政策に取り組むことも訴えている。携帯電話料金の値下げや地方経済の活性化などにも注力する考えだ。
とくに目玉として強調しているのが、河野氏の行革担当相起用。河野氏はソーシャルメディアを使った発信力があり、世論調査でも首相にふさわしい人物として常に上位に入る。6月には防衛相として地上配備型迎撃ミサイル「イージス・アショア」の配備停止を決定して存在感を示した。
菅首相は就任会見で「規制改革を政権のど真ん中に置き、河野担当相とともに取り組む」と語った。
しかし、識者や野党からは懐疑的な声も聞かれる。立命館大学政策科学研究科の上久保誠人教授は、新内閣の布陣に目新しさは少ない」と指摘。「行革担当相は(第一次安倍内閣などで務めた)渡辺喜美氏を除いて大きな成果が少ない。財務省など改革が必要な巨大官庁の担当大臣はいずれも留任だ」と話す。
立憲民主党の枝野幸男代表は、「安倍晋三亜流政権、安倍亜流内閣と申し上げざるを得ない」と記者団に語った。
<「解散はいつあっても」>
菅氏は午後に行われた衆議院の首相指名選挙で、投票総数462票のうち314票を獲得した。立憲民主党の枝野幸男代表は134票だった。参議院では240票のうち菅氏が142票、枝野氏が78票だった。
自民党総裁選でいち早く菅氏支持に回った二階俊博幹事長はNHKの取材に対し、「責任を持って新首相を盛り上げていきたい」と発言。解散は首相の専権事項とした上で、「党はいつあっても対応できるよう準備を整えている」と述べた。
菅首相は会見で解散について、いま国民が求めているのは新型ウイルスの収束だとしたうえで、「1年以内には解散・総選挙がある。時間の制約も視野に入れて考えたい」と述べた。
同盟国の米国トランプ政権は声明を出し、「自由で開かれたインド・太平洋構想」を一緒に進めることを楽しみにしていると祝意を送った。