9月は、経済指標や金融政策などがあり、為替市場にとって忙しい月である。
先週、 オーストラリア準備銀行(RBA)と カナダ銀行(BoC)の金融政策発表があった。そして 欧州中央銀行(ECB)とイングランド銀行(BoE)の発表が今週にある。オーストラリア準備銀行やカナダ銀行のように、欧州中央銀行とイングランド銀行は金利据え置きにすると見られている。しかし、先週米ドルは強い雇用統計を背に上昇したが、米国連邦準備理事会(FRB)の利上げが確実視されている中で、他の中央銀行の金融政策がどのようになるかに投資家は注目している。スイスフランは、米ドルよりパフォーマンスがいい唯一の通貨である。一方、NZドルは最も悪いパフォーマンスであり、次に カナダドル と豪ドルである。米ドルは堅調に上昇基調であると考えられる一方で、株式はさらに下落するとみられている。
米ドル
米ドル経済指標レビュー
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ISM 製造業指数 61.3 vs 57.6 予想
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ISM 製造業雇用指数 58.5vs 56.0 予想
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貿易収支 -$50.1bnvs -$50.3bn 予想
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ADP非農業部門雇用者数増減163k vs 200k 予想
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サービス業 PMI 54.8 vs55.2 予想
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総合 PMI 54.7 vs55 前回
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ISM非製造業景況指数 58.5 vs 56.8 予想
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製造業受注 -0.8%vs -0.6% 予想
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Factory Orders ExTrans 0.2% vs 0.4% 前回
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耐久財受注-1.7% vs -1.7% 予想
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非農業部門雇用者数増減 201k vs190k 予想
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失業率 3.9%vs 3.8% 予想
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平均時給0.4% vs 0.2% 予想
米ドル経済指標予想
- PPI -ガス価格の大きな変化はないが、ドルは強いため価格は下がる可能性がある
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Fed 地区連銀景況報告 Release –経済の継続的な改善を強調するだろう
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CPI - ガス価格が強いがPPIの結果次第か。インフレは加速するだろう
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小売売上高 -強い賃金の上昇を考えると予想を上回る可能性がある。レッドブックで大規模小売店は支出の増加があったと報告されている。
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ミシガン大学消費者信頼感指数 -強い株式と賃金成長により上昇が見込まれる。
米ドルサポートライン/レジスタンスライン
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サポートライン 110.00
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レジスタンスライン 112.00
米ドルにとって9月が良い月だという理由はたくさんある。上図のリストはFRBの9月26日の利上げの見通しである。利上げの予想や、最新の非農業部門の給与の指標は徐々に市場に反映されていくと考えられる。
今週の小売売上高やインフレの指標は強いとみられ、これらの指標は金融引き締めや米ドルの上昇を進めることになるだろう。8月に20万の雇用が創出されただけでなく、賃金も上昇している。毎月の平均時給は先月0.4%上昇し、これは通年でもっとも高い水準である。また、先月の米国株の最高値更新や企業利益の回復で、8月の小売売上高は良い結果が期待できる。
天然ガス や 原油価格が下落したためインフレに大きな変化を求めてはいないし、むしろ小売売上高が重要だ。ロレッタ・メスター総裁、 エリック・S・ローズングレン総裁、 ロバート・カプラン総裁 ら各連銀総裁は政策金利が中立金利になることを望むコメントをしている。米ドルは、現在進行中の貿易摩擦によって恩恵をうけている。カナダとの通商協議は交渉に入って2週間たっても成立していない中、さらにトランプ大統領が日本との貿易問題に焦点を当てることを投資家は心配している。
米ドルは、ユーロや豪ドルなどの主要通貨のパフォーマンスを上回っているが、 貿易の緊張は USD/JPYにとって大きな問題となる。トランプ米大統領が次の貿易戦争のターゲットに日本がなる可能性を示唆した後、ドルはセーフヘブン通貨として上昇した。トランプ氏は赤字削減に焦点を当てており、ウォールストリートジャーナルとの電話インタビューでは、「私がどれくらい払うべきか伝えたら」日本は嬉しくないだろうと述べた。先週末、中国に対し2670億ドルの追加関税を課すと脅した。これらの問題は、株式やUSD / JPYが上昇するのを非常に困難にしている。日本円とのペアでは悪影響を受けるだろうがトランプ大統領がさらなる驚異を今週与え、日中がそれに対し応えるのなら、USD/JPYは下落すると考えれられる。今月の初めに、9月は歴史的に株式の弱い月であり、トランプ大統領の貿易戦争が物事をさらに悪化させる可能性があることは前もって話されていたことだ。
経済指標レビュー
オーストラリア
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RBA 公定歩合 変更なし
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AU 製造業 PMI 56.7 vs 52 前回
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AU 小売売上高 0.0% vs 0.3% 予想
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AU 経常収支 -$13.5b vs $-11.0b 予想
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AU サービス業PMI 52.2 vs 53.6 前回
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AU GDP (QoQ) 0.9% vs 0.7% 予想
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AU 貿易収支 $1551m vs $1450m 予想
ニュージーランド
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貿易指数 Index (QoQ) 0.6% vs 1.0% 予想
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GDT Auction Prices Fall 0.7%
カナダ
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カナダ銀行 公定歩合 変更なし
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建築許可 -0.1% vs 1.0% 予想
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失業率 6.0% vs 5.9% 予想
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Net Change in 雇用者数 -51.6k vs 5.0k 予想
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フルタイム雇用変更 40.4k vs 35k 予想
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パートタイム雇用変更 -92k vs -30k 予想
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IVEY PMI 61.9 vs 61.8 前回
経済指標予想
オーストラリア
ニュージーランド
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製造業 PMI - 弱い乳製品価格を受けて下落の可能性
カナダ
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特になし
サポートライン/レジスタンスライン
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サポートライン AUD .7000 NZD .6500 CAD 1.3000
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レジスタンスライン AUD .7200 NZD .6600 CAD 1.3250
誰もが求めている大きな疑問は、商品通貨が下落を拡大するかどうかであり、答えは「はい」だと考えられる。豪ドルとNZドルは2年間の最安値をつけ、さらに下落する可能性が高い。オーストラリア準備銀行は地方銀行による住宅ローン金利の引き上げを無視し、中立というより楽観的な見通しを維持した。しかし、トランプ氏が中国に対する追加関税を示唆したため 豪ドル は急落した。オーストラリアの予想を上回る第2四半期のGDP成長率は、豪ドルを救えなかった。それは低迷している中国成長がオーストラリア経済にどのように影響するかを投資家が懸念しているためである。すでに、オーストラリアの小売売上高は停滞しており、サービス部門の活動は低迷している。住宅ローン金利引き上げや、貿易摩擦や、 弱い人民元 の背景の中で、ォーストラリアの見通しは暗く、AUD / USDは70セントを下回る可能性がある。今週の 雇用者数増減のレポートはおそらく豪ドルを助けることはないだろう。
NZドルも 乳製品価格が下落したことにより続落している。弱い貿易収支や失業率は、NZドルを圧迫している。ニュージーランドの指標は下降傾向にあり、今週の製造業 PMIにも現れるだろう。底を固めるまで、 NZD/USDは2〜3%の下落が起こる可能性がある。
カナダドル の見通しは、すべて貿易の問題に左右されるため予測がより困難である。基本的にカナダ経済は好調であるが、確かに労働市場には懸念がある。金曜日に発表された指標により、カナダは先月、中でも最大の州オンタリオ州でパートタイムの雇用が約10年間で最悪の減少であり、5万1000人の雇用を失った。
フルタイムの仕事は増加しているが、このような大きな打撃を受け、経済の過熱など危険はない。しかし、市場は今年に、カナダ銀行の金利引き上げを予想しており、ウィルキンズ副総裁によれば、中央銀行は、利上げのための「段階的アプローチ」を廃止することを議論したことを明かしている。通常、インフレを抑制するにはこの時点で利上げをがあるだろうとしている。中央銀行は明らかに強気で、年末までに金利を引き上げるという考え方を変えていない。
しかし、カナダ銀行は米国との通商協議が進まない状況では、利上げはできないだろう。10月の政策委員会の前に米国との合意が成立すれば、もう利上げを留める理由はない。通商協議のニュースによってUSD/CADが暴落するだけではなく、ペアは1.29に向かう新たな下降トレンドを形成するだろう。合意に至らない場合、USD / CADは大きく下落する可能性がある。
ユーロ経済指標レビュー
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GE 製造業 PMI 55.9 vs 56.1 予想
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EZ 製造業 PMI 54.6 vs 54.6 予想
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EZ PPI 0.4% vs 0.3% 予想
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GE サービス業 PMI 55.0 vs 55.2 予想
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GE 総合PMI 55.6 vs 55.7 予想
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EZ サービス業 PMI 54.4 vs 54.4 予想
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EZ 総合PMI 54.5 vs 54.4 予想
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EZ 小売売上高 -0.2% vs -0.25 予想
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GE 製造業新規受注 -0.9% vs 1.8% 予想
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GE 総合 PMI 51.5 vs 50.0 前回値
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GE 貿易収支 16.5b vs 19.5b 予想
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GE 経常収支 15.3b vs 20.0b 予想
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GE 鉱工業生産 -1.1% vs 0.2% 予想
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EZ GDP 0.4% vs 0.4% 予想
ユーロ経済指標予想
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ECB 金融政策発表 – 大きな変化はないと見込まれている。すぐの利上げの計画ないと考えられる。
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GE ZEW サーベイ「 - 最近の貿易摩擦や弱いドイツの指標を受けて、減少する可能性。
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EZ 鉱工業生産 - ドイツの弱いIPやフランスの強いIPの上で、減少する可能性。
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GE CPI -予想することは難しいが、これにより市場に影響を与える可能性がある。
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EZ 貿易収支 - ドイツの弱い貿易収支は、フランスの強い貿易収支によって打ち消されるだろう。
ユーロサポートライン/レジスタンスライン
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サポートライン 1.1500
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レジスタンスライン 1.1700
今週は、 イングランド銀行(BoE) と欧州中央銀行(ECB)による2回の金融政策会議がある。欧州中央銀行の方がより、市場に影響を与えるだろう。先週、リスク回避の動きやドイツの弱い指標を受けて、EUR/USD は2週間の最安値付近で終えた。イタリアの利回りはこの1週間毎日下落したので、来週に政策委員会があるECBにとってイタリアは問題にならず、政策変更はないだろう。
欧州中央銀行(ECB)は7月の政策委員会で来年後半まで金利を引き上げるつもりはないと明らかにした。 ドラギECB総裁は、低インフレを懸念しており、物価上昇圧力の大幅な不足を踏まえ、インフレに対する勝利というには早すぎるという見方は変わらない。米国の経済指標が改善され、米連邦準備理事会(FRB)は今月下旬に金利を引き上げようとしているが、ECBから中立的な声明が出ればユーロ/米ドル(EUR / USD)を1.14まで押し上げる可能性がある。
ポンド経済指標レビュー
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{{ecl-204|製造業|PMI}} 52.8 vs 53.9 予想
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BRC Sales Like for Like (YoY) 0.2% vs 0.5% 前回
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建設業 PMI 52.9 vs 54.9 予想
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サービス業 PMI 54.3 vs 53.9 予想
ポンド経済指標予想
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イングランド銀行公定歩合発表 - 予想は据え置き
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労働報告 - サービスと建設で強い雇用があったが、製造業は弱い
ポンドサポートライン/レジスタンスライン
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サポートライン 1.2800
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レジスタンスライン 1.3050
イングランド銀行による 金融政策発表よりも、イギリスの指標や、EU離脱(ブレクジット)の交渉は英ポンドに大きな影響を与える可能性がある。先月に金利を引き上げたが、今回イングランド銀行は利上げの姿勢はとっていない。EUがよりいい条件でのEU離脱(ブレクジット)を求めている中で、交渉は上手くいっている。しかし、未だに交渉は終わっておらず、最近の多くの貿易交渉を見てきた我々は、この交渉もすぐに失敗に終わるということもあり得るということを忘れてはいけない。この合意が正式に発表されるまで、イングランド銀行は再び金利を引き上げるつもりはないと考えられる。
先月 小売売上高、インフレ、労働市場の改善が見られたが、製造業、サービス業、建設業セクターの活動は減速した。
来年半ばまでイングランド銀行によるさらなる利上げを市場は価格に織り込んでいない。これを念頭に置くと、ポンドのトレーダーはイングランド銀行のように我慢強くないが、ショーターを怖がらせるようなニュースがあれば動くだろう。 貿易、工業生産高 、労働市場は今週に発表が予定されており、雇用の指標は特にポンドに影響を与えるだろう。