[19日 ロイター] -
<為替> ドルが幅広く上昇した。新型コロナウイルスによる景気鈍化懸念を受け、各国中銀が市場沈静化に向けた政策を打ち出しているにもかかわらずドル需要が高まっている。
主要6通貨に対するドル指数 (=USD)は2.0%高の102.73と、2017年1月以来の水準。今週は約4%上昇している。
ドルは対ユーロで2.15%の大幅高。対スイスフランは1.9%、対円では2.63%それぞれ急伸した。
バノックバーン・グローバル・フォレックスのチーフ市場ストラテジスト、マーク・チャンドラー氏は「ドルの強さは強力なショートカバーによるものだ」とし、「ドルは世界の資金循環の大部分で資金調達に利用されていたが、資金循環が逆転し、調達通貨が買い戻されている」と述べた。
新型コロナ流行で経済への影響が広がる中、欧州中央銀行(ECB)は18日、域内の借り入れコスト押し下げに向け、7500億ユーロ(8200億ドル)の緊急債券買い入れプログラムを開始すると発表した。[nL4N2BB63W]
これについて、チャンドラー氏は「債券市場の支援になったが、ユーロには物足りない」と述べた。
米連邦準備理事会(FRB)は19日、9カ国の中央銀行と新たに通貨スワップ協定を結んだと発表。協定を結んだのはオーストラリア、ブラジル、韓国、メキシコ、シンガポール、スウェーデン、デンマーク、ノルウェー、ニュージーランド(NZ)の中銀。FRBは2007─09年の金融危機時にも、これら中銀と通貨スワップを締結した。[nL4N2BC4FC]
TDセキュリティーズのシニア外為ストラテジスト、マゼン・イッサ氏は「こうしたスワップ協定は今後重要になる。ただ、信頼感という観点では、大きなインパクトを受けているさなかに、対応機能を正常化させるのは非常に難しい」と述べた。
英ポンドは0.72%安。イングランド銀行(英中銀)が政策金利を0.1%に引き下げたほか、債券買い取り枠を拡大することを緊急に決定した。
<債券> 不安定な取引の中、国債利回りがおおむね低下した。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、リスクを最小化しようとする動きが継続している。
終盤の取引で10年債 (US10YT=RR)利回りは1.1256%と、前日終盤から13.2ベーシスポイント(bp)低下。一方、3カ月物財務省短期証券 (US3MT=RR)利回りは2.8bp上昇の0.0483%。2年債と10年債の利回り格差は6bp拡大し、69bpと、2018年以来の水準に拡大した。
アナリストは、こうした動きはトランプ政権や連邦準備理事会(FRB)などがこれまでに示した対応策を見極めながら、償還までの期間が短い債券に資金を移す動きが出ていることを反映していると指摘。
マニュライフ・インベストメント・マネジメントのシニア債券トレーダー、マイケル・ロリツィオ氏は「トランプ政権が示した新型ウイルス対応の景気刺激策が米国債にどのような影響を及ぼすのか見極めようとする動きが出ている」と指摘。「資金は株式から流出したり債券に流れ込んだりして揺れ動いているが、流れはおおむね期間が短い債券に向かっている」と述べた。
アナリストは商いが細っていることで相場の動きが拡大していると指摘。この日は10年債利回りの変動幅は27bpに達した。
連邦準備理事会(FRB)はこの日、9カ国の中央銀行と新たに通貨スワップ協定を結んだと発表。ドル資金の市場への供給を拡充し、新型ウイルス流行による混乱緩和を目指す。[nL4N2BC4FC]
ジェフリーズの短期金融市場エコノミスト、トム・シモンズ氏は、FRBの一連の措置で国債利回りは低下に向かうと予想されるものの、トレーダーの間ではポートフォリオを安全性が高い方向にリポジションする動きが続いていると指摘。「経済指標が向こう数カ月はぞっとするほどひどい状態に陥るのは目に見えている。リスク選好度は当然低くなる」と述べた。
<株式> 反発。新型コロナウイルスによる経済への影響緩和に向け米連邦準備理事会(FRB)などが打ち出している一連の措置が材料視された。
主要3指数ではナスダック総合 (IXIC)がアウトパフォームし、2.3%高で取引を終了。アマゾン・ドット・コム (O:AMZN)、マイクロソフト (O:MSFT)、フェイスブック (O:FB)が上昇を主導した。
株価はこの日上昇したものの、S&P総合500種 (SPX)は取引時間中に最大3.3%下落するなど、不安定な展開は続いている。また、前日にはダウ平均 (DJI)がトランプ大統領就任後の上げをほぼ全て消失しており、株式相場は最近の下げを取り戻す状況には至っていない。
FRBはこの日、9カ国の中央銀行と新たに通貨スワップ協定を結んだと発表。ドル資金の市場への供給を拡充を目指す。FRBは緊急利下げやコマーシャルペーパー(CP)市場への流動性供給など、過去2週間で新型コロナ流行による混乱緩和に向けた一連の措置を講じている。[nL4N2BC4FC]
欧州中央銀行(ECB)も前日、域内の借り入れコスト押し下げに向け、7500億ユーロ(8200億ドル)の緊急債券買い入れプログラムを開始すると発表した。[nL4N2BB63W]
米上院は18日、新型コロナ緊急対策法案を可決。トランプ大統領が署名し、成立した。トランプ政権と議会はさらに1兆ドルを超える規模の景気刺激策も検討しており、市場ではFRBによる支援だけでなく、政府による財政面での支援も注目されているとアナリストは指摘する。[nL4N2BC0ZE]
しかし、ロイターの調査によると、一連の支援策にもかかわらず、米国が今年リセッション(景気後退)に陥る確率は中央値で80%とみられている。
この日は原油先物相場が一時35%上昇し、投資家心理が上向いた。[nL4N2BC55Z]
また、スレートストーン・ウェルスの首席投資ストラテジストのロバート・パブリク氏は「現時点で株のバリューを見極めることは難しく、アクティブ投資家は安値拾いの買いの好機と見なしている可能性がある」と述べた。
個別銘柄では自動車大手フォード・モーター (N:F)が0.7%安。新型コロナの事業への影響を踏まえ、既存の信用枠から150億ドル超を引き出すと発表した。
朝方発表された14日終了週の新規失業保険申請件数は28万1000件と予想以上に増加し、2017年9月以来の高水準となった。新型コロナ感染拡大で企業によるレイオフ・解雇が増加していることが示唆された。[nL4N2BC4FH]
ニューヨーク証券取引所では、値上がり銘柄数が値下がり銘柄数を2.64対1の比率で上回った。ナスダックでも3.21対1で値上がり銘柄数が多かった。
米取引所の合算出来高は170億8000万株。直近20営業日の平均は150億株。
<金先物> 主要中央銀行による積極的な経済対策の発表をきっかけに投資家のリスク回避姿勢が幾分和らいで換金売りが後退し、小反発した。中心限月4月物の清算値は前日比1.40 ドル(0.09%)高の1オンス=1479.30ドル。
米ジョンズ・ホプキンス大学システム科学工学センター(CSSE)の集計によると、19日までに世界の新型コロナウイルスの感染者数は累計22万人を突破、死者数は9000人を超えた。感染拡大の終息時期が見通せず、金融市場の混乱が続く中、米連邦準備制度理事会(FRB)は18日、短期資金の運用手段に使われるMMF(マネー・マーケット・ファンド)市場の安定化を目指した緊急制度の再開を発表。また、欧州中央銀行(ECB)が新たに7500億ユーロ(約89兆円)規模の資産購入計画を決めたほか、 英イングランド銀行(中央銀行)も政策金利を過去最低水準に引き下げた。これら積極的な経済対策の発表が相次いだことを受け、19日は損失補填(ほてん)を目的とした換金売りの流れが一服。ただ、外国為替市場では資金需要の増大を背景にドル買いが加速しており、ドル建て商品としての割高感から金塊相場の上値は重かった。金塊現物相場は午後1時44分現在、2.950ドル安の1474.495ドル。
<米原油先物> 安値拾いの買いなどが入り、4営業日ぶりに反発した。米国産標準油種WTIの中心 限月4月物の清算値は前日比4.85ドル(23.81%)高の1バレル=25.22ド ル。5月物は5.08ドル高の1バレル=25.91ドルだった。
新型コロナウイルス流行で世界的に経済活動が落ち込み石油需要が細るとの懸念や、石油輸出国機構(OPEC)など主要産油国による協調減産体制が崩壊しサウジアラビアやロシアなどが価格戦争の動きを強めていることを背景に、前日の原油相場は24%超下落し、約18年ぶりの安値を付けていた。
19日はその反動から安値拾いの買いが先行。トランプ米政権がサウジに産油量の削減を求めることを検討していると報道や、米株相場が大幅反発に転じたことも株と並んでリスク資産とされる原油買いを後押しした。ただ、新型コロナの大流行で世界経済がリセッション(景気後退)に突入すると観測も広がる中で、この日の反発は一時的との見方もある。
ドル/円 NY終値 110.69/110.73
始値 109.47
高値 110.94
安値 109.44
ユーロ/ドル NY終値 1.0690/1.0693
始値 1.0781 (EUR=)
高値 1.0839
安値 1.0656
米東部時間
30年債(指標銘柄) 17時05分 105*00.50 1.7829% (US30YT=RR)
前営業日終値 102*13.50 1.8940%
10年債(指標銘柄) 17時05分 103*06.00 1.1585% (US10YT=RR)
前営業日終値 102*08.00 1.2580%
5年債(指標銘柄) 17時05分 102*00.50 0.7095% (US5YT=RR)
前営業日終値 101*16.00 0.8150%
2年債(指標銘柄) 17時05分 101*09.25 0.4587% (US2YT=RR)
前営業日終値 101*04.88 0.5300%
終値 前日比 %
ダウ工業株30種 20087.19 +188.27 +0.95 (DJI)
前営業日終値 19898.92
ナスダック総合 7150.58 +160.73 +2.30 (IXIC)
前営業日終値 6989.84
S&P総合500種 2409.39 +11.29 +0.47 (SPX)
前営業日終値 2398.10
COMEX金 4月限 ─ ─
前営業日終値 ─
COMEX銀 5月限 ─ ─
前営業日終値 ─
北海ブレント 5月限 28.47 +3.59 (LCOc1)
前営業日終値 24.88
米WTI先物 4月限 ─ ─ (CLc1)
前営業日終値 ─
CRB商品指数 127.6348 +7.2922 (TRCCRB)
前営業日終値 120.3426
*COMEX金、COMEX銀、米WTI先物の値はデータ不具合のため表示していません。 OLJPBUS Reuters Japan Online Report Business News 20200319T221015+0000