[27日 ロイター] -
<為替> ドルが下落した。政府・中銀による新型コロナウイルス対策が世界的な市場混乱の抑制につながっている。ドルの週間の下落率は10年超ぶりの大きさとなった。
ドルは3月に入り急騰。株式や債券が急落する中で世界の基軸通貨であるドルの需要が高まった。ただ大規模な財政政策や主要中銀によるドル供給拡充などを受け、ドル高は抑制されている。
米議会下院はこの日、2兆2000億ドル規模の新型コロナウイルス関連経済対策法案を賛成多数で可決した。
ドル指数 (=USD)は0.87%安の98.41。週間では3.90%下落し、2009年3月以来の大きさだった。前週には週間で金融危機以来の大幅な値上がりを記録していた。
コメルツバンクの為替・商品調査部門責任者、ウーリッヒ・ルクトマン氏は「金融市場の緊張が緩和している。中銀の措置が現時点では奏功しており、ドル不足は解消されている」と述べた。
ドルは対円
ユーロ (EUR=)は対ドルで0.83%高の1.1119ドル。
ポンド
<債券> 国債が買われ利回りが低下した。米議会下院で新型コロナウイルス関連経済対策法案が可決されたものの、リスク懸念が払拭されず安全資産に買いが入った。
新型ウイルス関連経済対策法案の規模は2兆2000億ドル。新型ウイルスの感染拡大による景気の急激な落ち込みから個人や企業を守り、医療機関に必要な物資を供給するもので、トランプ大統領の署名を経て成立する。
ただ米国の新型ウイルス感染者数は8万4946人と、中国を抜いて世界最悪となり、感染による死者数も1259人に増加。ニューヨークやニューオーリンズなどの都市の押し寄せる患者に病院が対応できなくなるとの懸念も出ている。
アクション・エコノミクスのアナリストは「米国の感染者数が中国を抜いたことで、この日は朝からリスク回避の傾向が強かった。3日続伸した米株価もこの日は下げている」と述べた。
終盤の取引で10年債 (US10YT=RR)利回りは12.9ベーシスポイント(bp)低下の0.675%。週初からは約26bp低下した。
30年債 (US30YT=RR)利回りは14.2bp低下の1.252%。
短期債利回りは長期債ほどは低下せず、2年債 (US2YT=RR)利回りは3.3bp低下の0.240%。
流動性が高い1カ月物財務省短期証券 (US1MT=RR)と3カ月物財務省短期証券 (US3MT=RR)の利回りは今週、2015年以来初めてマイナス圏に落ち込み、過去最低水準を更新。この日はともにプラス圏を回復したが、過去最低水準をわずかに3bp弱上回る水準となっている。
ステート・ストリート・グローバルマーケッツのシニアグローバルマーケットストラテジスト、マービン・ロー氏は「市場には基調的にリスク懸念が存在しているため、国債に買いが入る地合いとなっている」と述べた。
商務省が朝方発表した2月の個人消費支出は前月比0.2%増。市場予想と一致し、緩やかな伸びとなったものの、新型ウイルスの感染拡大により、向こう数カ月間で急減するとみられている。
この日は、連邦準備理事会(FRB)の5000億ドルのターム物レポオペに入札はなかった。入札がゼロになるのは昨年の開始以来初めて。市場関係者は、短期金融市場で流動性を巡る状況が改善していることが示されたとしている。
<株式> 反落。米国内の新型コロナウイルス感染者数が増加し、米経済見通しを巡る不透明感が強まる中、3日続伸していたダウ工業株30種 (DJI)は週末を前に900ドル超安で取引を終了した。
米疾病対策センター(CDC)によると、26日夕時点で米国内の新型コロナ感染者数は8万5000人を突破。死者も1200人を超えた。感染者数は中国、イタリアを超え世界最多となった。
ナスダックIRインテリジェンスのシニアアナリスト、マスード・ギャウシー氏は、新型コロナ流行による経済的影響について「全容はまだ分からない」とし、「ウイルス感染拡大制御と経済活動再開のバランスが政策担当者の注目点だろう」と述べた。
米議会下院が2兆2000億ドル規模の新型コロナ関連経済対策法案を賛成多数で可決したものの、株価押し上げには至らなかった。トランプ大統領は引け後に署名し、法案は成立した。
経済対策への期待や、米連邦準備理事会(FRB)が打ち出した一連の対応を受け、S&P500 (SPX)は今週10.2%上昇し、2009年以来の好成績となった。ダウは前日までの3日間に21%急伸し、3営業日での上昇としては1931年以来の水準となった。
しかし、アリー・インベストの首席投資ストラテジスト、リンジー・ベル氏は「週末の動向が来週の市場の動きの鍵を握る」とし、「週末にニューヨーク州などで新型コロナ感染が加速し、病院の収容能力が限界に迫れば、来週の市場は荒れ模様となるだろう」と述べた。
この日発表された指標では、3月の米ミシガン大学消費者信頼感指数・確報値が89.1と、2016年10月以来の低水準に沈んだ。新型コロナの世界的大流行が景気見通しを悪化させていることが示された。
個別銘柄では、ボーイング (N:BA)が10%急落。デルタ航空 (N:DAL)、アメリカン航空 (O:AAL)、ユナイテッド航空 (O:UAL)も軒並み6─11%安となった。
ムニューシン米財務長官が、新型コロナに対処する経済対策法案について、航空業界の救済でないと改めて表明し、ボーイングは政府支援を要請していないと強調したことが材料視された。
原油相場の下げに伴い、エネルギー株 (SPNY)は6.9%安。セクター別では最大の下げを記録した。
銀行株<.SPXBK>も4.6%安。米債利回りの低下に追随した。
ニューヨーク証券取引所では、値下がり銘柄数が値上がり銘柄数を3.17対1の比率で上回った。ナスダックでも2.98対1で値下がり銘柄数が多かった。
米取引所の合算出来高は134億株。リフィニティブのデータによると、3月5日以来の低水準だった。
<金先物> 換金売りなどに押され、反落した。中心限月4月物の清算値は前日比26.20 ドル(1.59%)安の1オンス=1625.00ドル。金相場は今週9.5%上伸した。新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとした世界的なリセッション(景気後退)懸念を背景に米株式相場はこの日再び急落。金は損失補填(ほてん)の売りが優勢となった。金相場は今週1割近く上昇したこともあり、週末を控えて利益確定の売りやポジション調整の売りも出やすかった。株式などの信用取引のマージンコール(追い証)に充てるために金が売りに出され、金相場を圧迫したとの見方もあった。
米議会下院は27日、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた2兆ドル(約220兆円)規模に上る経済対策案を可決したが、相場の反応は今のところ限定的。金塊現物相場は午後2時現在、12.595ドル安の1623.800ドル。
<米原油先物> 新型コロナウイルス問題による需要減観測が広がる中、続落した。米国産標準油種WTIの中心限月5月物の清算値は前日比1.09ドル(4.8%)安の1バレル=21.51ドルとなった。6月物は0.56ドル安の25.15ドルだった。
国際エネルギー機関(IEA)のビロル事務局長は26日、新型コロナの感染拡大により30億人が外出制限の影響を受けているため、世界の石油需要が日量約2000万バレル(20%)減少する可能性があると警告した。ビロル氏は石油輸出国機構(OPEC)盟主のサウジアラビアに市場安定化に向けた支援を呼び掛けているが、サウジがロシアに対抗した増産方針を転換するかは不透明な情勢だ。
20カ国・地域(G20)首脳は26日発表した声明で、新型コロナによる世界経済の悪化に対応するため、5兆ドル(約550兆円)以上の資金を投じると表明。しかし、各国で経済活動が停滞する中、石油需要の改善につながるとの見方は乏しい。 一方、米石油サービス会社ベーカー・ヒューズが27日公表した同日まで1週間の国内石油掘削リグ稼働数は前週比40基減の624基となった。ただ、需要の大幅な落ち込みへの警戒感は根強く、相場の支援材料にはならなかった。
ドル/円 NY終値 107.89/107.92
始値 108.61
高値 108.89
安値 107.77
ユーロ/ドル NY終値 1.1140/1.1144
始値 1.1014 (EUR=)
高値 1.1146
安値 1.0954
米東部時間
30年債(指標銘柄) 17時05分 118*26.00 1.2442% (US30YT=RR)
前営業日終値 114*24.00 1.3950%
10年債(指標銘柄) 17時05分 107*27.50 0.6762% (US10YT=RR)
前営業日終値 106*18.00 0.8080%
5年債(指標銘柄) 17時05分 100*15.75 0.4005% (US5YT=RR)
前営業日終値 100*03.50 0.4780%
2年債(指標銘柄) 17時05分 100*08.13 0.2477% (US2YT=RR)
前営業日終値 100*06.50 0.2730%
終値 前日比 %
ダウ工業株30種 21636.78 -915.39 -4.06 (DJI)
前営業日終値 22552.17
ナスダック総合 7502.38 -295.16 -3.79 (IXIC)
前営業日終値 7797.54
S&P総合500種 2541.47 -88.60 -3.37 (SPX)
前営業日終値 2630.07
COMEX金 4月限 1625.0 ‐26.2
前営業日終値 1651.2
COMEX銀 5月限 1453.4 ‐14.2
前営業日終値 1467.6
北海ブレント 5月限 24.93 ‐1.41 (LCOc1)<0#LCO:>
前営業日終値 26.34
米WTI先物 5月限 21.51 ‐1.09 (CLc1)<0#CL:>
前営業日終値 22.60
CRB商品指数 123.8843 ‐2.4623 (TRCCRB)
前営業日終値 126.3466
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